児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

不同意性交罪と不同意わいせつ罪の包括一罪(新潟地裁r6.3.14)

不同意性交罪と不同意わいせつ罪の包括一罪(新潟地裁r6.3.14)
判示第2の「手に持ったスマートフォンを使用し、その陰部付近に陰茎が押し当てられ、その膣内に手指を挿入して性交等がされている間の同人の姿態などを動画撮影し」というのもわいせつ行為そのものだから、第1の不同意わいせつ罪とは1個のわいせつ行為だから、第1+第2で包括一罪ですよね。処断刑期が5年以上に落ちる。

 不同意わいせつ罪との関係については、わざわざ2条3項を設けてある。児童ポルノ製造罪と強制わいせつ罪との関係について判例が混乱しているからだろう。

(性的姿態等撮影)
第二条 
3 前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない

逐条説明
5 第3項
本項は、性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、当該撮影行為が強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪にも該当する場合について、性的姿態等撮影罪の
成立により強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪の成否が影響を受けるものではないことにつき疑義が生じないようにするため、刑法第176条第1項及び第179条第1項の適用を妨げない旨の確認規定を設けるものである(注4)

(注4)罪数関係については、個別の事案ごとに、具体的な事実関係も踏まえて判断される
べき事柄であるが、一般論としては、性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、当該撮影行為が強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪にも該当する場合、
○ 性的姿態等撮影罪は、性的な姿態を他の機会に他人に見られるかどうかという意味での被害者の性的自由・性的自己決定権を保護法益として設けるものであり、また、侵害の態様も性的な姿態の影像を記録して固定化するというものであることからすると、性的な行為を行うかどうかの自由が問題となる強制わいせつ罪・監護者わいせつ罪との法益侵害の同一性があるとはいえない
ことから、強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪と性的姿態等撮影罪の両罪が成立するものと考えられる。
その上で、社会的見解上の行為が一個であれば、観念的競合(一個でなければ併合罪)となる。

lexDB
【文献番号】25620275

新潟地方裁判所令和5年(わ)第342号
令和6年3月14日刑事部判決
       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 令和5年10月6日午後10時22分頃から同日午後10時32分頃までの間、新潟市α区β×××番地×b株式会社c駅先駐車場から同区γ×丁目×番×号先路上までを走行中のタクシー内において、別紙秘匿目録記載1のA(当時■歳)に対し、同人が大量のアルコール飲料を飲んだ影響により同意しない意思を形成することが困難な状態にあることに乗じて、その唇に接吻し、着衣の上からその胸を手でなで回し、ズボンの中に手を差し入れて、その陰部付近を触るなどし、さらに、同日午後11時20分頃から同日午後11時35分頃までの間、同区γ△丁目△番△△号d店駐車場から同目録記載2先路上までの間を走行中のタクシー内において、同人に対し、同人が前記状態にあることに乗じて、着衣に手を差し入れて、その胸部付近を触り、ズボンの中に手を差入れて、その陰部付近を触るなどのわいせつな行為をし、同日午後11時47分頃から同月7日午前0時6分頃までの間、同目録記載3のA方において、同人に対し、同人が前記状態にあることに乗じて、その陰部付近に陰茎を押し当てるなどのわいせつな行為をした上、その膣内に手指を挿入して性交等をし、
第2 同月6日午後11時47分頃から同月7日午前0時6分頃までの間、前記A方において、Aに対し、同人が前記状態にあることに乗じて、手に持ったスマートフォンを使用し、その陰部付近に陰茎が押し当てられ、その膣内に手指を挿入して性交等がされている間の同人の姿態などを動画撮影し
たものである。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条 判示第1の所為につき
包括して刑法177条1項(176条1項3号)(令和5年法律第66号附則3条により有期拘禁刑とあるのを有期懲役として適用)
判示第2の所為につき
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項2号(刑法176条1項3号)(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律附則2条により拘禁刑とあるのを懲役として適用)
刑種の選択 判示第2の罪について
懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
(量刑の理由)
 本件は、幹部警察官である被告人が、女性警察官が泥酔状態にあることに乗じて不同意性交等をした事案である。
(求刑 懲役7年)
令和6年3月19日
新潟地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 小林謙介 裁判官 岡田真生 裁判官 池田弘