不同意わいせつと、姿態をとらせて製造罪と性的姿態撮影罪は観念的競合(札幌地裁r6.8.1)
強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪とは併合罪でしたよね。
性的姿態撮影罪がご飯粒の糊みたいに作用するんですかね。
札幌地方裁判所令和6年8月1日刑事第3部判決強制わいせつ、不同意性交等、北海道青少年健全育成条例違反、不同意わいせつ、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【文献番号】25620828
札幌地方裁判所令和6年(わ)第52号、令和6年(わ)第119号、令和6年(わ)第233号
令和6年8月1日刑事第3部判決
(犯罪事実)
被告人は、
第4 正当な理由がないのに、別の知人の息子であるD(当時6歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和6年1月4日午前8時34分頃から同日午前8時42分頃までの間、別紙記載1の居室において、Dに対し、被告人がDの露出された陰茎を直接指で触る姿態をとらせ、これを被告人が使用する撮影機能付きスマートフォンで動画撮影した上、その動画データ1点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録させて保存し、もってわいせつな行為をし、Dの性的姿態等を撮影するとともに、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第5 自己の性的好奇心を満たす目的で、同月22日、前記被告人方において、児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した動画データ39点及び画像データ104点を記録した、児童ポルノであるスマートフォン1台を所持した。
(法令の適用)
罰条
判示第4の所為
不同意わいせつの点 刑法176条3項、1項(令和5年法律第66号附則3条前段により拘禁刑とあるのは懲役刑として適用)
性的姿態等撮影の点 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号、1号イ(同法附則2条により拘禁刑とあるのは懲役刑として適用)
児童ポルノ製造の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号
科刑上一罪の処理
判示第4の各罪 刑法54条1項前段、10条(1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから、1罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)
刑種の選択
令和6年8月 日
札幌地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官 ■■■■ 裁判官 ■■■■ 裁判官 ■■■■
控訴するなら、公訴棄却の主張。
訴因の単一性を欠くという主張はこうなる。不利益主張ではないという主張まで入れておく。
最決h21以降の高裁判決がこぞって
①行為の重なり合いの程度
②「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
③「両行為の性質等」
④一事不再理効の及ぶ範囲
を理由にして併合罪としているので、①~④を主張して、高裁判決を紹介していけば説得力がでるだろう。
訴訟手続の法令違反~強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造罪(7条3項)は併合罪だから、1個の行為として起訴した公訴事実は単一性を欠き、訴因不特定により、公訴棄却とすべきであった。 11
1 原判決は、3項製造罪と強制わいせつ罪(176条後段)を観念的競合とした。 11
2 わいせつ行為と製造行為の重なり合い 11
3 陰部露出させる行為は強制わいせつ罪(176条後段)の実行行為である「わいせつ行為」であり、他方、提供目的製造罪の実行行為ではないから、両罪は完全に重ならないこと(法令適用の誤り) 13
4 検察官の意見(書)も誤っていること 18
最高裁判例解説刑事篇平成29年度162頁 平成28年(あ)第1731号児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件平成29年11月29日 向井香津子 19
5 一個の行為(54条1項)とは 23
(1)重なり合いの度合いについて、判例は完全一致を求めている。 23
大法廷s49.5.29**5 23
最高裁判例解説刑事篇昭和49年度77頁 昭和46年(あ)第1590号業務上過失傷害、道路交通法違反被告事件昭和49年5月29日 高木典雄 25
(2)行為の個数の評価対象は、構成要件に該当する事実ではなく、生の事実である 28
最高裁判例解説刑事篇昭和49年度107頁 昭和47年(あ)第1896号道路交通法違反、業務上過失致死被告事件昭和49年5月29日 本吉邦夫 28
(3)小括 30
6 最決h21.10.21の罪数判断(児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪とは併合罪)は、強制わいせつ罪にも及ぶ 31
最高裁判例解説刑事篇平成21年度496頁 平成19年(あ)第619号 33
菅原暁 最新・判例解説(第3回)児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせる罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例[最高裁判所第一小法廷平成21.10.21決定] 捜査研究720号78頁 33
7 併合罪とする高裁判例が理由とする点を弁護人の主張として集約しておく 35
(1)行為の重なり合いが乏しいこと 35
(2) 通常随伴しないこと 39
(3) 行為の性質が異なるから2個の行為である 40
(4) 一事不再理効が広がりすぎる。 43
8 裁判官研究会の論稿は併合罪。 43
東京高裁h22.12.7*7(横浜地裁h22.7.30*8) 47
福岡高裁h26,10.15*9(福岡地裁h26.6.2*10 共犯:福岡地裁h26.5.12*11 48
9 併合罪とした高裁判例(判例違反) 48
①東京高裁H22.12.7*34(横浜地裁h22.7.30*35) 67
②福岡高裁h26.10.15*36(福岡地裁h26.6.2*37) 68
③大阪高裁h28.10.27(提供目的製造罪) 68
④最高裁大法廷h29.11.29 70
11 「併合罪であるから、1個の行為として記載した公訴事実は、単一性を欠いて訴因不特定により、無効である。公訴棄却になる」という主張は不利益主張ではないこと 76
(1) 公訴の適法性の要素である、「訴因の単一性」の判断には、罪数処理を判断する必要があること 76
(2) 文献 79
①刑事控訴審の理論と実務第2版 P103 79
②大コンメンタール刑訴法3版P24(担当原田國男) 80
③佐藤文哉・最高裁判所判例解説 刑事篇(昭和53年度) 304頁 82
(3)判例では、併合罪主張も主張として被告人に実質的に有利になる場合には不利益主張とはならない。 83
①不利益主張とは 83
② 本件でも併合罪主張による結果は被告人の利益であること 84
③ 被告人控訴事件について併合罪であることを前提理由として、破棄した最高裁判例 85
④ 併合罪主張を不利益主張としない高裁判例 91
⑤不利益主張となった事例は主張として被告人に有利になっていない 92
(4) 児童ポルノ関係で併合罪の主張が不利益主張だとされたことはないこと 95
最高裁判所判例解説刑事篇平成21年度201頁 平成20年(あ)第1703号児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,わいせつ図画販売目的所持,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件平成21年7月7日 鹿野伸二 95
最高裁判所判例刑事篇平成21年度463頁 平成19年(あ)第619号児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件平成21年10月21日 三浦透 96
(5) 原判決も不利益主張としていない。 98
(6) 訴因が単一性を欠く場合、差し戻して検察官に釈明させる必要があるという判例 99
12 まとめ 99
6 最決h21.10.21の罪数判断(児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪とは併合罪)は、強制わいせつ罪にも及ぶ
最決h21.10.21は、児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪の関係とを併合罪とした判例である。最決h21.10.21*1
所論は,上記両罪は併合罪の関係にあるから,児童ポルノ法違反の事実については,平成20年法律第71号による改正前の少年法37条によれば,上記家庭裁判所支部は管轄を有しない旨主張する。
そこで,検討するに,児童福祉法34条1項6号違反の罪は,児童に淫行をさせる行為をしたことを構成要件とするものであり,他方,児童ポルノ法7条3項の罪は,児童に同法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造したことを構成要件とするものである。本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,
一部重なる点はあるものの,
両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,
両行為の性質等にかんがみると,
それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照),両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。
・・・・・・・
判例タイムズ1326号134頁 最高裁判所第1小法廷 平成19年(あ)第619号 児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件 平成21年10月21日
匿名解説
4 刑法54条1項前段の観念的競合の要件である「一個の行為」に関しては,最大判昭49.5.29刑集28巻4号114頁,判タ309号234頁が,「一個の行為とは,法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価をうける場合をいう」としているが,具体的な当てはめについては,必ずしも容易でなかった面もあったように思われる。数個の罪名に触れる行為が完全に重なっていれば,これを「一個の行為」と解すベきことについては異論はないであろうし,行為の重なり合いが「一個の行為」性の判断において重要な要素であることも間違いないと思われる。しかし,上記大法廷判決に関しても,行為の重なり合いは「一個の行為」であるための必須の要件とは解されていなかったと指摘されていたのであり(本吉邦夫・昭49最判解説(刑)113頁,金築誠志・昭58最判解説(刑)322頁等参照),同判例における酒酔い運転と業務上過失致死のように,継続犯とその一時点で成立する他の罪については,行為に重なり合いがあるともいえるものの,「一個の行為」ではないとされるのが通常である。また,最一小判昭58.9.29刑集37巻7号1110頁,判タ509号88頁においては,覚せい剤取締法上の輸入罪と関税法上の無許可輸入罪について,それぞれの実行行為は重ならないと考えられるのに,「一個の行為」であることを認めている(同様の関係は,戸別訪問の罪とその機会に行われた各種違法選挙運動の罪が観念的競合とされていることについても存在するとの指摘もある。)。
本件で問題となった3項製造罪については,「姿態をとらせ」の要件の意義をどう理解するかによって,同罪と児童淫行罪等との行為の重なり合いの判断も異なってくる可能性もあるが,本決定は,「被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの」としており,行為の重なり合いがあること自体は認めている(本決定が「姿態をとらせ」を構成要件として規定された行為ととらえていることは明らかである。)。その上で,
「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
「両行為の性質等」
を挙げて,結論として両罪は併合罪であるとの判断をしており,「一個の行為」であるかの判断における考慮要素として,興味深い判示であるように思われる。実際に生じ得る事例を考えてみても,前記最三小決平成18年によれば複製行為についても3項製造罪を構成し得ることになるから,児童淫行罪等と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠けることがあり,一事不再理効の及ぶ範囲等を考えても,併合罪説の方が妥当な結論を導くことができるように思われる。
・・・・・・・・・
最高裁判例解説刑事篇平成21年度496頁 平成19年(あ)第619号菅原暁 最新・判例解説(第3回)児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせる罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例[最高裁判所第一小法廷平成21.10.21決定] 捜査研究720号78頁
・・・・同最決の解説も考慮すると、同最決は観念的競合となる要素として
行為の重なり合いの程度
「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
「両行為の性質等」
一事不再理効の及ぶ範囲を挙げており、これは観念的競合の判例(最判s49)の解釈であるから、その判旨は、類推なんかではなく、当然に強制わいせつ罪(176条後段)との関係にも及ぶ。
後述するように
①行為の重なり合いの程度
②「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
③「両行為の性質等」
④一事不再理効の及ぶ範囲
の各点は、強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪とを併合罪とする高裁判決の理由付けに頻出しており、実際にも最決h21.10.21が観念的競合か併合罪かの重要な要素となっている。