青少年条例の児童ポルノ要求行為の場合と同様、要求行為が発覚するのは、撮影・送信してしまってからになるので、要求されただけで被害申告されることはないので、常に撮影させた不同意わいせつ罪を伴うことになります。
牽連犯というより、観念的競合か吸収関係だと思います。撮影送信させるのを強要罪とした高裁判例では、全部併合罪とされていました。
なお、撮影させる行為をわいせつ行為を評価するのは、奥村説です
強要被告事件
広島高裁岡山支部H22.12.15*1(岡山地裁H22.8.13)
東京高裁H27.12.22*2(新潟地裁高田支部H27.8.25)
では独自の見解とされましたが、
大阪高裁r03.7.14*3(京都地裁R3.2.3*4)
大阪高裁r04.1.20*5 京都地裁r03.7.28*6
札幌高裁r5.1.19*7(札幌地裁R04.9.14*8 )
で採用されました。
刑法第百八十二条
3 十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案
【逐条説明】
注3)遠隔型の処罰規定については、対面型の処罰規定とは異なり、加重処罰規定を設けることとしていないところ、これは、次の理由による。
すなわち、本条第3項の要求行為の対象は、前記4のとおり、現在の実務において強制いせつ罪の成立を認めた裁判例を踏まえて規定しており、要求行為の対象となる行為が実現した場合には、強制わいせつ罪が成立すると考えられる。
その上で、要求行為からその対象となる行為が実現するまで、すなわち、強制わいせつ罪が成立するに至るまでの過程において、一般的・類型的に同罪に至る危険性が高まり、加重処罰の対象とするに足りる新たな当罰性を有する行為があり得るかについては、
〇行為者からの要求を直ちに承諾して、そのまま要求された行為に及ぶ場合も、相当程度あり得ることを踏まえると、要求行為後の行為について、加重処罰の対象とするに足りるものを明確に捕捉することは困難である
と考えられる。
そのため、遠隔型の処罰規定については、加重処罰規定を設けることとはしていない
・・・
本条第3項の罪に当たる行為が行われた後に、強制わいせつ罪に当たる行為が行われ
た場合、
〇本条第3項の罪は、性的自由・性的自己決定権を保護法益とする強制わいせつ罪の予備罪としてではなく、16歳未満の者が性被害に遭う危険性のない状態、すなわち、性被害に遭わない環境にある状態という性的保護状態を保護法益とする趣旨で設けるものである
ことから、本条第3項の罪と強制わいせつ罪の両罪が成立するものと考えられる。
その上で、社会的見解上の行為が一個と評価される場合には、観念的競合となる一方、一個の行為と評価されない場合には、本条第3項の罪と強制わいせつ罪は、罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという関係があることから、具体的に行為者がそのような関係において両罪を実行したのであれば、牽連犯になると考えられる。
四国中央の教諭逮捕 少年に性的暴行容疑
2024.01.27 愛媛新聞
交流サイト(SNS)で知り合った少年に自身の性的画像を送信させ、わいせつな行為をしたなどとして松山西署は26日、不同意性交等や映像送信要求などの疑いで四国中央市の市立小学校教諭A容疑者(30)を逮捕した。署と市教育委員会は、勤務先の学校名を明らかにしていない。
容疑は2023年10月24日、県内の少年が16歳未満と知りながら、わいせつな画像を撮影、送信させて自身の携帯電話に保存し、同月29日には県内のホテルで性的暴行を加えた疑い。
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映像送信要求:中学生に映像要求 運動部指導者逮捕 容疑で熊本東署 /熊本
2024.01.24 毎日新聞社
熊本東署は22日、指導していた熊本市の公立中の運動部に所属する生徒に、スマートフォンを通じ自慰行為を見せるよう要求したとして、映像送信要求などの疑いで、容疑者(28)を逮捕した。
逮捕容疑は、2023年9月3日午後7~8時ごろ、被害者が16歳未満で5歳以上年齢が離れていることを知りながら、交流サイト(SNS)を通じてわいせつな動画を送信して閲覧させ、それを用いてビデオ通話アプリを使い、自慰行為を見せるよう要求したとしている。
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男子中学生への不同意わいせつ容疑で逮捕
2024.01.16 中日新聞
【埼玉県】秩父署は15日、不同意わいせつと映像送信要求などの疑いで、容疑者(20)を逮捕したと発表した。署によると、「間違いない」と容疑を認めている。
逮捕容疑では、昨年9月3日、県内に住む知人の10代の男子中学生に性的な部位の画像を撮影させ、自身に送らせたとされる。署によると、容疑者は昨年の春、秩父郡市の地域行事で中学生と知り合い、連絡先を交換。中学生の携帯に画像を要求するメッセージを送ったという。
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性的映像送信要求 容疑で30歳再逮捕=宮城
2023.12.13 読売新聞
泉署は12日、容疑者(30)を不同意わいせつと性的映像送信要求、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の容疑で再逮捕した。性的な画像や動画を送るよう求める「性的映像送信要求罪」は7月の刑法改正で新設された。同署によると、同容疑での逮捕は県内初。
発表によると、容疑者は9月10日午後11時30分頃、県内に住む10歳代の少女に性的な映像を撮影させ、その映像を送るよう要求し、スマートフォンに送信させて保存した疑い。同署は認否を明らかにしていない。