児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「16歳未満であることを知りながら去年8月ごろ、この少女にわいせつな行為をさせました。そしてその映像をSNSのメッセージ機能を利用して自分の携帯電話に送信させた」という不同意わいせつの被疑事実

 判例では、「送信させる」はわいせつ行為とされません。
 裁判例では、自慰行為させるが伴う場合に送信行為がわいせつと評価されることが多いようです。

阪高裁r03.7.14*1(京都地裁R3.2.3*2)判決速報
 2 なお,前記(3)は,Aに対し,前記ダイレクトメッセージ機能を使用して,その陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させたという強制わいせつの事実(令和2年8月27日付け起訴状記載の公訴事実第1)と,同要求をし,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させた上,その画像データ2点を被告人のスマートフォンに送信させて前記サーバコンピュータ内に記憶・蔵置させたという児童ポルノ製造の事実(同公訴事実第2。原審第3回公判期日において令和3年1月18日付け訴因変更請求書のとおり訴因変更許可決定)として別個の訴因で起訴され,検察官は併合罪の関係にあると主張したが,原判決が観念的競合の関係にあると判断したものである。

阪高裁r04.1.20*3 京都地裁r03.7.28*4
 (3) 所論は,原判示第1の強制わいせつ罪につき,被害者に撮影させ,記録させ,送信させて,被告人が受信するまでしていれば,わいせつな行為と評価される余地はあるが,撮影させた行為だけではわいせつな行為に当たらないし,被告人の性的意図を考慮すると強制わいせつ未遂罪にとどまると主張する。
 しかし,被告人が被害者を脅迫して,要求どおり裸の写真を撮影させた行為が強制わいせつの既遂に当たることは,上記のとおり明らかである。被害者の意思に反して乳房等を露出する姿態をとらせ,これを撮影させるだけで十分な法益侵害性が認められるから,現実に画像データを送信させる行為は,強制わいせつ罪の成立を認める上で不可欠の要素とはいえない。異なる評価をいう所論は採用できない。

 札幌高裁r5.1.19*5(札幌地裁R04.9.14*6 )
 強制わいせつ罪(176条後段)の事案で、「撮影させた」までが強制わいせつ罪(176条後段)で起訴され、撮影させた点までをわいせつ行為とした。

 これまでの高裁判例は、「撮影させ」がわいせつ行為として起訴され、1審が「撮影させ」をわいせつ行為と認定して、控訴審でもそれが確認されたものである。その際、強要罪判例が参考にされている。

強要被告事件
広島高裁岡山支部H22.12.15*7(岡山地裁H22.8.13)
東京高裁H27.12.22*8(新潟地裁高田支部H27.8.25)
すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。
弁護人は,①被害者(女子児童)の裸の写真を撮る場合,わいせつな意図で行われるのが通常であるから,格別に性的意図が記されていなくても,その要件に欠けるところはない,②原判決は,量刑の理由の部分で性的意図を認定している,③被害者をして撮影させた乳房,性器等の画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させる行為もわいせつな行為に当たる,などと主張する。
しかしながら,①については,本件起訴状に記載された罪名及び罰条の記載が強制わいせつ罪を示すものでないことに加え,公訴事実に性的意図を示す記載もないことからすれば,本件において,強制わいせつ罪に該当する事実が起訴されていないのは明らかであるところ,原審においても,その限りで事実を認定しているのであるから,その認定に係る事実は,性的意図を含むものとはいえない。
また,②については,量刑の理由は,犯罪事実の認定ではなく,弁護人の主張は失当である。
そして,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。
以上のとおり,原判決が認定した事実は,強制わいせつ罪の成立要件を欠くものである上,わいせつな行為に当たらず強要行為に該当するとみるほかない行為をも含む事実で構成されており,強制わいせつ罪に包摂されて別途強要罪が成立しないというような関係にはないから,法条競合により強要罪は成立しないとの弁護人の主張は失当である。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a775e368046ad7e1b54b66d8d570d06abac63839
県内在住の少女が16歳未満であることを知りながら去年8月ごろ、この少女にわいせつな行為をさせました。そしてその映像をSNSのメッセージ機能を利用して自分の携帯電話に送信させた疑いが持たれています。