児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

1歳・2歳への強制わいせつ罪(176条後段)(福井地裁r3.7.2)

 デジカメの登場で立件されるようになったんですけど、1歳2歳になると、保護法益からの説明がちょっと難しいですよね。強制わいせつ罪(176条後段)の法文は充たすものの、1歳だと羞恥心感じないでしょうし、こういう行為するかしないかという性的自己決定権も観念できないでしょ。
 

 没収は生成物件(3号)ですよね
 https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/06/19/000000

判例番号】 L07650684

       強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 福井地方裁判所判決/令和3年(わ)第38号、令和3年(わ)第55号
【判決日付】 令和3年7月2日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 被告人を懲役2年4月に処する。
 福井地方検察庁で保管中のスマートフォン1台を没収する。

       理   由

 【罪となるべき事実】
 被告人は,
第1 B(当時1歳)が13歳未満の者であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,令和2年1月30日午後1時47分頃から同日午後2時6分頃までの間,福井県内の保育園において,同人の紙おむつ等をずらし,その陰部を指で触るなどし,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした。
第2 前記第1の日時頃,前記保育園において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第1のとおりその陰部を露出させた姿態及び被告人がBの陰部を触る行為に係る姿態をとらせ,これを被告人が使用するスマートフォンで動画撮影し,その動画データ4点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録させて保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ性欲を興奮させ又は刺激するもの及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
第3 B(当時2歳)が13歳未満の者であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,同年3月23日午後2時35分頃,前記保育園において,同人に対し,その口に自己の陰茎を押し当てるなどし,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした。
第4 前記第3の日時頃,前記保育園において,Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第3のとおり同人が口で被告人の陰茎を触る行為に係る姿態をとらせ,これを被告人が使用するスマートフォンで動画撮影し,その動画データ1点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
第5 C(当時5歳)が13歳未満の者であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,同年10月16日午後1時56分頃,前記保育園において,同人に対し,その下着等をずらして同人の陰部を直接手指で触るなどし,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした。
第6 前記第5の日時頃,前記保育園において,Cが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第5のとおりその陰部を露出させた姿態及び被告人がCの陰部を触る行為に係る姿態をとらせ,これを被告人が使用するスマートフォンで動画撮影し,その動画データ1点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録させて保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ性欲を興奮させ又は刺激するもの及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
 【証拠の標目】
(記載省略)
 【法令の適用】
1 被告人の各行為は次の各刑罰法規に当たる。
   第1,第3及び第5の各行為 それぞれ刑法176条後段
   第2及び第6の各行為    それぞれ児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2条3項2号,3号
   第4の行為         児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2条3項2号
2 第2,第4及び第6の各罪について,いずれも定められた刑のうち懲役刑を選択する。
3 以上は刑法45条前段の併合罪であるから刑法47条本文,10条により,犯情の最も重い第3の罪の刑に法定の加重をする。
4 その刑期の範囲内で,主文のとおり刑を定める。
5 福井地方検察庁で保管中のスマートフォン1台は,第2,第4及び第6の各児童ポルノ製造の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,刑法19条1項2号,2項本文を適用してこれを没収する。
 【量刑の理由】
 被告人は,保育士という幼児の養護及び教育を責務とする立場にありながら,その立場を利用し,まだ幼くその行為の意味を理解できず抵抗しない担当クラスの幼児2名に対し,合計3回にわたりわいせつな行為をした。このような被害者との関係性,被害者の属性,被害人数及び件数を踏まえれば,本件は極めて卑劣で悪質な犯行であるというべきである。
 将来被害者らが,被告人にされた行為の意味を理解し又は知った時のショックは計り知れず,健全な成育への悪影響も懸念される。被害者らの家族が,峻烈な処罰感情を有しているのも当然のことである。
 一方,本件各犯行の態様は,暴行や脅迫を伴うものではないという点では穏当といえ,被害者らが実際の恐怖心を感じたとは認められない。しかしながら,暴行や脅迫をその要件としない刑法176条後段の罪において,この点を過度に被告人に有利に評価することはできない。
 以上の点に加え,本件各わいせつ行為をスマートフォンで撮影した児童ポルノ製造の罪3件も併せ考えれば,被告人の行為責任は相応に重く,被告人に前科前歴がないことなどを踏まえても刑の執行を猶予できる事案ではない。
 被告人はまだ若く,真摯に反省し,自己の性的嗜好と向き合い,2度と同様の犯行をしないよう,ワークブックの実践やカウンセリングへの通院をしている。さらに,今後は保育士として就労することはせず子供に近寄らない旨を誓約し,母親も監督を誓約している。本件は,再犯可能性が高い犯罪類型には当たるものの,以上の点からすれば,被告人の更生には一定の期待が持てる。しかしながら,前記のとおり,行為責任の観点から実刑はやむを得ないから,これらの点は刑期の面で十分に考慮することとする。その他,Bとの間で,宥恕の意思が示されているわけではないものの示談が成立していること,余罪被害者2名との間でも示談が成立していること,本件は広く報道され,一定の社会的制裁を受けていることなども考慮した上で,主文のとおりの刑を科す。
(求刑 懲役3年6月,主文同旨の没収)
  令和3年7月2日
    福井地方裁判所刑事部
           裁判官  日巻功一朗