児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被告人が児童に性器接触等して姿態を取らせて撮影した行為を、ひそかに製造罪とした事例(奈良地裁R4.10.20)

被告人が児童に性器接触等して姿態を取らせて撮影した行為を、ひそかに製造罪とした事例(奈良地裁R4.10.20)
 確定したのを確認しています。
 犯人が姿態をとらせた場合はひそかに製造罪は適用されないという大阪高裁R5.1.24(奈良地裁r04.7.14)を前提にすると、ひそかに製造罪は全滅(法令適用の誤り+訴訟手続の法令違反)と思われます。
 大阪高裁R5の控訴趣意書はr4.10.1に提出されていて、それがこの問題を公式に指摘した最初の書面になります。奈良の検察官は訴因変更で修正する機会がありました。

阪高裁r05.1.24
同法7条5項の規定する児童ポルノのひそかに製造行為とは、隠しカメラの設置など描写の対象となる児童に知られることがないような態様による盗撮の手段で児童ポルノを製造する行為を指すと解されるが、同項が「前2項に規定するもののほか」と規定していることや同条項の改正経緯に照らせば、児童が就寝中等の事情により撮影の事実を認識していなくても、行為者が姿態をとらせた場合には、姿態をとらせ製造罪(同条4項)が成立し、ひそかに製造罪(同条5項)は適用されないと解される。

判例番号】 L07751098
       準強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 奈良地方裁判所判決/令和4年(わ)第9号、令和4年(わ)第42号、令和4年(わ)第95号、令和4年(わ)第134号、令和4年(わ)第166号
【判決日付】 令和4年10月20日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 被告人を懲役2年8月に処する。
 未決勾留日数中190日をその刑に算入する。

       理   由

 【罪となるべき事実】
 被告人は、
第1 A(当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月6日、奈良市(住所省略)被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第2 B(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月12日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第3 C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月31日、前記被告人方において、ひそかに、同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を、被告人がスマートフォンで動画撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録・保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第4 D(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年8月18日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第5 E(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年4月4日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第6 F(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年4月29日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第7 G(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年7月29日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第8 H(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年11月14日、前記被告人方において、ひそかに、同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を、被告人がスマートフォンで動画撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録・保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第9 スイミングスクールの元教え子であるI(当時17歳)に対し、アロママッサージを装ってわいせつな行為をしようと考え、令和3年12月29日午後2時3分頃から同日午後3時38分頃までの間、前記被告人方において、前記Iがアロママッサージを受けるものと誤信して抗拒不能にあるのに乗じ、パンツの上からその陰茎を触るなどした上、さらに、被告人からわいせつな行為をされたことに気付き困惑、狼狽等により引き続き抗拒不能に陥っていた前記Iに対し、パンツをずらして露出させた同人の陰茎を手指で触るなどし、もってわいせつな行為をした
第10 前記I(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年12月29日、前記被告人方において、ひそかに、同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を、被告人がスマートフォンで動画撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録・保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
ものである。
 【量刑の理由】
(求刑 懲役4年)
  令和4年10月20日
    奈良地方裁判所刑事部
           裁判官  石川理紗

追記 2023/03/02
 刑事確定訴訟記録法で閲覧して法令適用を確認しました。
 7条2項を挙げないと、法定刑が決まりません。

(証拠の標目)
 省略
(法令の適用)
罰条
 判示第1ないし第4、第6ないし第8、第10の行為、いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2条3項2号、3号 (※7条2項が欠けている)
判示第5の行為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2条3項3号(※7条2項が欠けている)
刑種の選択
 判示第1ないし第8、第10の行為、いずれも懲役刑
併合罪加重 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第9の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項但し書き