13歳未満の児童を脅迫して陰部画像を送らせた場合の法令適用(某地裁)

13歳未満の児童を脅迫して陰部画像を送らせた場合の法令適用(某地裁)

 不同意わいせつ罪と製造罪は併合罪だという高裁判例があるのでアクロバティックな罪数処理になっています。
「刑法54条1項前段、後段、10条(ただし、同条1項は旧刑法)(映像送信要求と不同意わいせつ及び性的姿態等撮影との間にはそれぞれ手段結果の関係があり、性的姿態等撮影と児童ポルノ製造は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるので、結局一罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)」

 しかし、脅迫して画像を撮影送信させる行為と児童ポルノ製造罪とは、併合罪だという高裁判例も幾つかあるので、その点では判例違反となっています。

広島高裁岡山支部h22.12.15(牽連犯否定)
そこで検討するに,強要罪は,脅迫し又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせる行為をしたことを構成要件とし,3項製造罪は,児童に児童ポルノ法2条3項3号に掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録にかかる記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童にかかる児童ポルノを製造したことを構成要件とするものであって,被害児童に衣服の全部又は一部を着けない姿態をとらせて撮影し,その画像データを送信させてハードディスクに記録して蔵置することをもって児童ポルノを製造した場合に,強要罪に該当する行為と3項製造罪に該当する行為とは,一部重なる点があるものの,3項製造罪において,上記のとおり姿態をとらせる際,脅迫又は暴行によることが要件となるものとは解されず,また,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるので,両罪は,観念的競合の関係にはなく,また,上記説示に照らせば,両罪は,通常手段結果の関係にあるともいえないから,牽連犯の関係にもないというべきである。
 また,強要罪は個人の行動の自由を保護法益とし,3項製造罪は,当該児童の人格権とともに抽象的な児童の人格権をも保護法益としており,保護法益の一個性ないし同一性も認められないことをも考慮すれば,両罪は,混合的包括一罪ともいえず,最高裁判所平成19年(あ)第619号同21年10月21日第1小法廷決定・刑集63巻8号1070頁の趣旨に徴し,刑法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。

東京高裁h28.2.19(新潟地裁高田支部H27.8.25)
2 法令適用の誤りの主張について
論旨は,原判決は,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとした上で,強要罪の犯情が重いとして同罪の刑で処断することとしたが,本件の脅迫は一時的で,害悪もすぐに止んでいるのに対し,3項製造罪は画像の流通の危険やそれに対する不安が長期に継続する悪質なもので,原判決の量刑理由でも,専ら児童ポルノ画像が重視されており,犯情は3項製造罪の方が重いから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある, というのである。
しかしながら,本件の強要罪に係る脅迫行為の執拗性やその手口の卑劣性などを考慮すれば,3項製造罪に比して強要罪の犯情が重いとした原審の判断に誤りはない。
法令適用の誤りをいう論旨は,理由がない。
なお,原判決は,本件において,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとしたが,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるから,これらは併合罪の関係にあるというべきである。したがって,本件においては,3項製造罪につき懲役刑を選択し,強要罪と3項製造罪を刑法45条前段の併合罪として,同法47条本文,10条により犯情の重い強要罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきであったところ,原判決には上記のとおり法令の適用に誤りがある

名古屋高裁金沢支部h27.7.23(高岡支部事件)
2 原判示第3の強要罪と3項製造罪の罪数関係についての主張
 論旨は,原判示第3の強要罪と3項製造罪は,牽連犯の関係にあるのに,両罪が観念的競合の関係にあるものと判断した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,強要罪と3項製造罪は,犯罪の通常の形態として手段結果の関係にあるものとは認められず,牽連犯の関係にはないと解するのが相当であるから,論旨は理由がない。
 なお,職権により検討すると,以下に述べるとおり,原判示第3の強要罪と3項製造罪は,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあるものと解するのが相当である。
 すなわち,両罪を構成する行為の重なり合いの程度についてみると,被害者をして,その性器等に性玩具を入れさせ,その姿態を被害者使用の携帯電話機で撮影させた上,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させたという点では,両罪の実行行為は重なっているものの,被害者を脅迫した点は強要罪にのみ係る実行行為であり,被告人において上記画像データを被告人使用の携帯電話機で受信して,同機内蔵の記憶装置に記録保存した点は,3項製造罪に係る実行行為であって,この点で,両罪の実行行為は重なり合っていない部分がある。とりわけ上記画像データ等の受信,保存行為は,被害者に撮影させた画像を更に被告人が使用する携帯電話機の記憶装置に保存して複製する行為であり,この複製行為により初めて児童ポルノである写真画像データが被告人により恣意的に社会に拡散される状況が生じるのであって,上記受信,保存行為は,被害者をしてその姿態を撮影,送信させる行為と並んで,3項製造罪にいう「製造」行為の中核的な部分を構成するというべきところ,この点については,強要罪の実行行為との間で重なり合いはない。
そうすると,両罪の各実行行為は,その主要部分において重なり合っているといい難い。また,強要罪は,当初の一時点の製造行為の際の強要行為につき成立するのが通常であるのに対し,3項製造罪では,複製行為も犯罪を構成し,当初の製造行為及びその後の継続的な各複製行為につき,時間的にも場所的にも相当広範囲にわたって包括一罪として犯罪が成立する場合が予定されていることからすると,両罪は,行為の同時性が甚だしく欠けることになり,社会的に見て一体同質の行為であるとはいい難い。さらに,強要罪と3項製造罪とは,それぞれ片方のみを犯すことが当然にできるのであり,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為は通常伴う関係にあるとはいえない。
 以上からすれば,強要罪と3項製造罪の各行為における行為者の動態は,社会的見解上別個の行為と評価するのが相当であり,両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪に当たるというべきである。
 したがって,両罪が観念的競合の関係にあるとした原判決には法令適用の誤りがあるが,この誤りの結果,最終的な処断刑の範囲に差異は来さないから,判決に影響を及ぼすものとはいえない。

名古屋高裁金沢支部h27.7.23(福井地裁事件)
2原判示第2の1の強要罪と同第2の2の3項製造罪の罪数関係についての主張
論旨は,要するに,原判示第2の1の強要罪に係る行為と同第2の2の3項製造罪に係る行為は,社会的見解上一個の行為であるから,両罪は観念的競合の関係にあり,あるいは,両罪は牽連犯の関係にあるとも考えられるから,科刑上一罪とすべきであるのに,両罪が併合罪の関係にあると判断した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで検討するに,両罪を構成する行為の重なり合いの程度についてみると,原判示第2の1の強要罪と原判示第2の2の3項製造罪においては,被害児童Bをして,その乳房や陰部等を露出した姿態をとらせ,それらを同児童に撮影させるなどした上,同写真画像データ等を被告人使用の携帯電話機に送信させたという点では,両罪の実行行為は重なっているものの,被害児童Bを脅迫した点は強要罪にのみ係る実行行為であり,被告人において写真画像データ等を受信して,電磁的記録媒体である携帯電話機本体の記録装置に記録して保存した点は,3項製造罪に係る実行行為で、あって,この点で,両罪の実行行為は重なり合って,いない部分がある。
とりわけ上記写真画像データ等の受信,保存行為は,被害児童Bに撮影させた画像を更に被告人が使用する携帯電話機本体の記録装置に保存して複製する行為であり,この複製行為により初めて児童ポルノである写真画像データが被告人により窓意的に社会に拡散される状況が生じるので、あって,上記受信,保存行為は,被害児童Bをしてその姿態を撮影,送信させる行為と並んで,3項製造罪にいう「製造」行為の中核的な部分を構成するというべきところ,この点については,強要罪の実行行為との間で重なり合いはない。
そうすると,原判示第2の1の強要罪と原判示第2の2の3項製造罪は,その各実行行為の主要部分6において重なり合っているといい難い。
また,強要罪は,当初の一時点の製造行為の際の強要行為につき成立するのが通常であるのに対し,3項製造罪では,複製行為も犯罪を構成し,当初の製造行為及びその後の継続的な各複製行為につき,時間的にも場所的にも相当広範囲にわたって包括ー罪として犯罪が成立する場合が予定されていることからすると,両罪は,行為の同時性が甚だしく欠けることになり,社会的に見て一体同質の行為であるとはいい難い。
さらに,強要罪と3項製造罪とは,それぞれ片方のみを犯すことが当然にできるのであり,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為は通常伴う関係にあるとはいえない。
以上からすれば,強要罪と3項製造罪の各行為における行為者の動態は,社会的見解上別個の行為と評価するのが相当であり,両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはないというべきである。
また,両罪は通常手段結果の関係にあるともいえないから,同条項後段の牽連犯の関係にもなく,同法併合罪の関係にあるというべきである。
したがって,これと同旨の原判決の判断に法令適用の誤りはなく,論旨は理由がない。

某地裁r07
罪となるべき事実
被告人は、A(当時10歳)がI3歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと企て令和7年11月6日ころ、大阪府内又はその周辺において、被告人が使用するスマートフォンのアプリケーションソフト「」のメッセージ機能を利用し、前記A が使用するスマートフォンに、
脅迫文言
性器画像を送れ、さもなければ。。。
などと記載したメッセージを送信し、その頃、同人にこれを閲読させ、性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求した上、被告人の要求に応じなければ、前記A らの身体、名誉等に危害を加える旨脅迫して、同人を同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせ、同日、同人にその陰部を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用するスマートフォンの撮影機能を利用して撮影させた上、その頃、それらの動画データ5点を同スマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに前記「」を利用して送信させて.同スマートフォン内の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって前記A に性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求し、同人を同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせてわいせつな行為をするとともにその性的姿態等を撮影させ、さらに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した

(法令の適用)
1 罰条
16歳未満の者に対する映像送信要求の点
 包括して刑法182条3項2号、令和5年法律第66号附則3条

不同意わいせつの点 
 包括して刑法176条3項、1項1号、令和5年法律第66号附則3条

性的姿態等撮影の点 
 包括して性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号、2号、1号ロ、令和5年法律第67号附則2条

児童ポルノ製造の点 
 包括して整理法441条1項による改正前の児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項3号

2 科刑上一罪の処理
  刑法54条1項前段、後段、10条(ただし、同条1項は旧刑法)(映像送信要求と不同意わいせつ及び性的姿態等撮影との間にはそれぞれ手段結果の関係があり、性的姿態等撮影と児童ポルノ製造は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるので、結局一罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)