児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

罰金では販売収益を収奪できないこと。。「わいせつ動画販売容疑 逮捕 茨城県警など 自ら出演、売り上げ2億数千万円超か」という場合の罰金額

 よく「総売上何億円」という報道がありますが、わいせつ図画の場合は、何本売ったとしても、刑期としては「二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する」ということになります。
 わいせつ頒布・所持は科刑上一罪ですので、販売回数が1件でもでも1万回販売しても、売上が何億円あったとしても、併科の罰金の上限は250万円になります。
 対照的に、非わいせつの児童ポルノの場合は、併合罪ですので、1万回提供すると、併科の罰金の上限は5億円になります。

7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 なお、わいせつかつ児童ポルノの場合には、わいせつ図画罪でかすがいされるので処断刑は「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」ということになって、1万回提供しても、罰金の上限は500万円になります。
 児童ポルノであるだけでなく、さらにわいせつになると軽くなるという変な話ですが、この解釈は、最決H21.7.7で確認されています。
児童ポルノであり,かつ,刑法175条のわいせつ物である物を,他のわいせつ物である物も含め,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持したという本件のような場合においては,わいせつ物販売と同販売目的所持が包括して一罪を構成すると認められる」

最決平成21年7月7日
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37814
1 原判決の認定によれば,上記訴因変更に関する事実経過は以下のとおりであ
る。
(1) 本件第1審判示第3の罪に関する当初の公訴事実の概要は,「被告人は,前後11回にわたり,3名の者に対し,児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD-R合計11枚及びわいせつ図画であるDVD-R合計25枚を不特定又は多数の者に販売して提供した。」というものであった。
(2) 次に,検察官は,(1)の提供行為を維持したままで,さらに5回の提供行為を追加し,「被告人は,前後16回にわたり,4名の者に対し,児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD-R合計21枚及びわいせつ図画であるDVD-R合計67枚を不特定又は多数の者に販売して提供した。」とする訴因変更を請求し,第1審裁判所はこれを許可した。
(3) さらに,検察官は,(2)の提供行為を維持したままで,所持行為を追加し,「被告人は,(ア) 前後16回にわたり,4名の者に対し,児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD-R合計21枚及びわいせつ図画であるDVD-R合計67枚を不特定又は多数の者に販売して提供し,(イ) 自宅において,児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD-R合計20枚及びわいせつ図画であるDVD-R合計136枚を不特定若しくは多数の者に提供又は販売する目的で所持した。」とする訴因変更を請求し,第1審裁判所は,これを許可した上,最終的にそのとおりの事実を認定した。
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項にいう児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合には,児童の権利を擁護しようとする同法の立法趣旨に照らし,同法7条4項の児童ポルノ提供罪と同条5項の同提供目的所持罪とは併合罪の関係にあると解される。
しかし,児童ポルノであり,かつ,刑法175条のわいせつ物である物を,他のわいせつ物である物も含め,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持したという本件のような場合においては,わいせつ物販売と同販売目的所持が包括して一罪を構成すると認められるところ,

その一部であるわいせつ物販売と児童ポルノ提供,同じくわいせつ物販売目的所持と児童ポルノ提供目的所持は,それぞれ社会的,自然的事象としては同一の行為であって観念的競合の関係に立つから,結局以上の全体が一罪となるものと解することが相当である。所論は,児童ポルノ提供罪と同提供目的所持罪とが本来併合罪の関係にある以上,そのように解するのは相当でない旨いうが,採用できない

第一七五条(わいせつ物頒布等)
1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=16373184043574&fbclid=IwAR3CWakNWfilufo-Zx-HSkwNH7zKAUGpejQHmdaGpxESHZ6f_87sEUKxS2c
逮捕容疑はそれぞれ、昨年12月から今年9月ごろまでの間、海外の動画サイト「FC2」を通じ、わいせつな動画を不特定の人に複数回販売した疑い。

同課によると、2人は自ら動画に出演し、女性とのわいせつ行為を撮影していた。主任研究員は「販売したことは間違いないが、映像を粗くしてアップロードしたので、わいせつの認識はなかった」と容疑を否認。無職の男は「お金を稼ぐためにわいせつ動画を販売していた」と容疑を認めている。