児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

青少年条例違反(淫行)について「成人と聞いていたので、18歳未満だとは知らなかった。普通に交際をしていました」という弁解

 過失犯処罰はおかしいと言われているので
 真剣交際とか無過失を主張すれば起訴猶予になるかもしれないですね

https://news.livedoor.com/article/detail/19790462/
少年は家族に「友達が来ているから、会いに行く」という口実で出掛けていたが、家に帰って来ない日が続いたことから、不審に思った親がホテルまで様子を見に行くと、部屋に見知らぬ女がいた。親はから事情を聴き、警察に相談した。
 調べに対し、は「セックスしたり、少年をホテルに泊まらせたのは間違いありません。成人と聞いていたので、18歳未満だとは知らなかった。普通に交際をしていました」と供述し、少年は「会いたかった。体の関係を持ちたかった」と話しているという。

栗原雄一「児童買春の罪と青少年育成条例の関係について」研修644号*1
そのため,形式的には,全ての行為者につき年齢の調査確認の手段を尽くしたことの挙証責任が課せられているようにみえる。 しかし,淫行しようとする者は当然にその相手方の年齢を調査確認すべき義務があるといえるかどうかは微妙である。 したがって,実務的には,年齢知情に関する規定の適用を前提として,淫行罪により処罰しようとする場合には, 「使用者性」に匹敵する事情を別途立証するのが相当であるろう。すなわち,当該青少年と知り合った経緯,当該青少年の体格,服装,言葉遣い等から,当該行為者において,当該青少年が18歳未満ではないかとの疑いを持ち得る客観的状況があったことを示す証拠を収集しておくべきこととなる。
(法務総合研究所教官)
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藤宗和香(東京地方検察庁検事(当時))「青少年保護育成条例」風俗・性犯罪シリーズ捜査実務全書9第3版*2P336
このような例では、結局は、客が既に青少年と話をする機会などがあってその身上を知り得る関係にあったとか、当該応には18 歳未満の女子ばかりを世いているなどの噌があって、容の来応理由になっていたと認められるなど、個別具体的に、淫行の相手が18 歳未満であることについて客観的に知り得る状況があったことを明らかにしなければ、過失を認めるべきではないと考える。

奈良県青少年の健全育成に関する条例解説h26
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第34条
1何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し前項の行為を教え、又は見せてはならない。
【要旨】
本条は、心身ともに発達途上にある青少年に対し、みだらな性行為及びわいせつな行為をし、又はこれらの行為を教えたり見せたりすることを禁止し、青少年の健全な育成を図ろうとするものである。
【解説】
1 「みだらな性行為」とは、昭和60年10月23日最高裁判決にいう「淫行」すなわち「(広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、)青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」と同様である。
2 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的に羞恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
3 「してはならない」とは、何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならないのであって、相手となる青少年が承諾したかどうかは問わない。
4 「教え、又は見せ」とは、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をするのではないが、当該行為の方法等を教示することであり、単なる猥談等の漠然としたものではなく、具体的に教示することをいう。
5 本条の規定は、自らが青少年に対してする行為を禁止したものである。
なお、児童福祉法第34条第1項第6号に規定する「児童に淫行をさせる行為」の禁止規定との関係については、「行為者が第三者を児童の相手方として児箪に淫行をさせる場合」が同法違反となることは明らかであるが、「行為者自らが児童の相手方となって児童に淫行をさせる場合」についても、限定的ではあるが、同法違反が成立するとされている。
(平成10年11月2日最高裁決定)
6 13歳以上の男女に対する暴行又は脅迫を用いてのわいせつな行為(強制わいせつ)及び13歳以上の女子に対する暴行又は骨迫を用いての姦淫(強姦) については、本規定と刑法第176条及び第177条の条項とが競合することになる。
ここで、第176条違反が「6月以上7年以下の懲役」、第177条違反が「2年以上の懲役」というようにそれぞれ懲役刑が科される一方、本条違反が「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」であることから、より重い刑を科している刑法の規定が適用されることになる。
ただし、13歳以上の男女に対する暴行又は骨迫を伴わないわいせつな行為及び13歳以上の女子に対する暴行又は骨迫を伴わない姦淫については、刑法では規定していないため、本条の規定が適用される。
また、13歳未満の男女にわいせつな行為をすること及び13歳未満の女子を姦淫すること(どちらも暴行、脅迫を用いてか否かは問わない)についても、本規定と刑法の規定とが競合することになるが、これについても上記と同様の理由から刑法が適用されることになる。
7 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以F「児童買春・児童ポルノ禁止法」という。)附則第2条は、「地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。」と規定している。
つまり、罰則が規定されている行為で、同法と条例が重なった部分については、同法が条例に優先し、条例で定めている部分が失効するということである。
このことから、「児童買春」に該当する行為については同法が適用され、本条の規定は適用されないこととなった。
(ただし、本条の規定は、対償の有無にかかわらず、青少年に対するみだらな性行為及びわいせつな行為を禁止するものであり、児童に対する対償の供与又はその約束を伴う児童買春よりも広い概念を表す。)
8 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(以下「出会い系サイト規制法」という。)では、インターネット異性紹介事業を利用して、児童(18歳に満たない者のこと。)を性交等の相手方となるように誘引すること等を禁じているが、これは実際に性交等を行ったか否かは問わず、誘引すること自体を罰則の対象としている。
また、インターネット異性紹介事業を通して知り合った児童を相手に性交等を行った場合は、本条や児童買春・児童ポルノ禁止法などの規定が適用されることになる。
なお、出会い系サイト規制法は、本条例と異なり、児童に対する免責規定を設けていないが、児童が罪を犯した場合であっても、同法に規定する禁止行為に対する罰則が100万円以ドの罰金であることから、少年法第41条の規定により家庭裁判所の審判に付され、児童に応じた必要かつ適切な保護・処遇がなされることとなる。
9 「何人も」には、青少年も含まれる。
青少年が本条に違反した場合、本条例第44条の規定により、罰則が適用されることはないが、当該違反行為が他法令にも違反する場合は、当該法令の規定により罰則が適用されたり、上記出会い系サイト規制法の場合と同様に家庭裁判所の審判に付されたりすることになる。

3 第5項の「当該青少年の年齢を知らないことについて過失がない」とは、通常可能な調査が適切に尽くされているといえるか否かによって決められる。具体的には、相手方となる青少年に、年齢、生年月日、干支等を尋ね、又は身分証明書等の提出を求める等、客観的に妥当な確認措置を尽くしたにもかかわらず、青少年自身が年齢を偽り、又は虚偽の証明書を提出する等、行為者側に過失がないと認められる状況をいう。
過失がないことの証明は、行為者自身において行うことを必要とするものである。