児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

数回の児童ポルノ公然陳列行為は併合罪(大阪高裁R03.3.10弁護人上告) ちなみに包括一罪説は大阪高裁h15.9.18、東京高裁h16.6.23、名古屋高裁h23.8.3

数回の児童ポルノ公然陳列行為は併合罪(大阪高裁R03.3.10)
 わいせつかつ児童ポルノであれば科刑上一罪になて処断刑期は5年ですが、(⑤と⑥の間)4分差で、わいせつではない児童ポルノを1個陳列すると、2個の行為になって、併合罪加重されて、処断刑期は7年6月になるというのです。

陳列日時 児童ポルノの号数 わいせつ性 検察官主張 弁護人主張 阪高
2021/2/23 11:34 2号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/3/5 11:26 3号 わいせつ 第1行為 第1行為 第1行為
2021/3/5 11:27 3号 わいせつ 第1行為 第1行為 第1行為
2021/3/5 11:30 3号 わいせつ 第1行為 第1行為 第1行為
2021/4/27 7:33 3号 該当無し 第1行為 第1行為 第2行為
2021/4/27 7:37 該当無し わいせつ 第1行為 第1行為 第1行為
2021/5/11 5:16 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/5/11 5:17 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/5/13 10:36 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/5/23 11:06 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/6/11 4:31 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
処断刑 7.6年 5年 7.6年
f:id:okumuraosaka:20210311074318p:plain
陳列行為

阪高裁令和3年3月10日
(2)公然陳列の罪数に関する所論について
 ア 所論〔主任弁護人〕は,原判決は原判示第1の児童ポルノ公然陳列罪と原判示第2の児童ポルノ公然陳列罪とを併合罪としているが,被告人のこれらの行為は,令和年月6日から同年月22日にかけて,自宅で,反復して児童の裸体画像を公然陳列するところにあり,しかも,陳列したのは1個のサーバコンピュータであり,公然陳列行為の個数はサーバの個数で決まると解するべきであるから,公然陳列行為は1個の行為であって単純一罪ないし包括一罪と評価されるべきであり(1個の公然陳列行為によって,わいせつ物公然陳列罪と児童ポルノ公然陳列罪を充たすので,両罪の観念的競合となる。),原判決には法令適用の誤りがある旨主張する。
 イ この点,原判決は,法令適用の罰条において「判示第1の1の所為のうち,児童ポルノ公然陳列の点及び判示第2の所為につき,各画像データごとにそれぞれ児童ポルノ法7条6項前段(2条3項2号,3号)に該当する」としているところ,児童ポルノ法は,児童を性欲の対象とする風潮を防止するという面で児童一般を保護する目的がある一方で,同法1条の目的規定や各個別規定による児童ポルノ規制のあり方に照らすと,当該児童ポルノに描写された個別児童の権利保護をも目的としていると解される。そうすると,被害児童ごとに法益を別個独立に評価して各画像データごとにそれぞれ児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めている原判決の罰条適用は正当なものである。所論は(児童ポルノ)公然陳列行為の個数はサーバの個数で決まるというが,同罪の個人的法益に対する罪としての性格を軽視するものであって賛同できない。
 その上で,原判決は「判示第1の1の所為は,1個の行為が10個の罪名(わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の包括一罪と9個の児童ポルノ公然陳列)に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により,判示第1の2のわいせつ電磁的記録記録媒体陳列を含め,1罪として刑及び犯情の最も重い別表1番号4の画像についての児童ポルノ公然陳列の罪の刑で処断する」と科刑上一罪の処理をしているところ,これは,複数のわいせつ電磁的記録記録媒体陳列は,社会的法益に対する罪である同罪の罪質に照らし,同一の意思のもとに行われる限り包括一罪として処断され,さらに,児童ポルノであり,かつ,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列したときは,児童ポルノ公然陳列罪とわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪との観念的競合になることから,結局,原判示第1の各罪を包括一罪(刑及び犯情の最も重い別表1番号4の画像についての児童ポルノ公然陳列の罪の刑)で処断したものと考えられるのであり,そのような原判決の法令適用に誤りはない。
 ウ もっとも,そのように包括一罪とされる原判示第1のうちの同2のわいせつ電磁的記録記録媒体の公然陳列行為と,原判示第2の児童ポルノの公然陳列行為とは,同じ日の僅か4分の間に続けて行われたものであるから,これらをも包括一罪とする考えもあり得るところで,現に原審検察官の起訴はそのようなものであったが,しかし,児童ポルノ公然陳列罪の個人的法益に対する罪としての性格を重視し,あえてそのような処理をせず,原判示第1の罪と原判示第2の罪とを併合罪の関係にあるとした原判決の法令適用に誤りがあるとはいえない。
 公然陳列の罪数に関する所論も採用できない。
 論旨は理由がない。

 判例タイムズの裁判官研究会は併合罪

判例タイムズ1432号
第10 児童ポルノの公然陳列
1機会の複数
陳列の機会が複数の場合に,包括一罪とすることも考えられる64)。
しかし,前記児童ポルノの提供と同様に,日時や方法が異なる陳列は,通常,行為が別で,犯意も別と評価すべきであるほか,全く同じ被害児童の児童ポルノを陳列する訳でもなく,陳列行為ごとに当該被害児童に児童ポルノを流通に置かれて心身に悪影響を与えられた新たな法益侵害が生じていることなどから,多くの場合は数罪となり併合罪とするのが相当である。
64)包括一罪とした例に,大阪高判平成l5年9月l8日裁判所ウェブサイト掲載。複数回かは判決文上必ずしも明らかでないが一定期間に合計16画像を送信して記憶蔵置させた行為を包括一罪とした例に,名古屋地判平成18年1月l6日情報ネットワーク・ローレビュー7号43頁掲載の第1.
65)被害児童が複数かなどは不明であるが,画像データが複数の場合で単純一罪とした例に,東京地判平成l5年IO月23日裁判所ウェブサイト掲載。なお,複数の児童ポルノ画像データがサーバコンピュータ上に記憶。蔵置されていたことを利用して,識別番号(URL)をホームページ上で明らかにすることで公然陳列した場合に,単純一罪とした例に,大阪地判平成21年1月l6日公刊物未掲載(最決平成24年7月9日判タl383号l54頁の第1審)。


 昔、植村コートで「サーバーが1個の場合は1罪」だという判決をもらったことがあります。判例違反になると思います。

東京高裁h16.6.23
2 所論は,要するに,原判決は,被害児童ごとに法7条1項に違反する罪(児童ポルノ公然陳列罪)が成立し,結局これらは観念的競合の関係にあるとして,その罪数処理を行っているが,本罪については,被害児童の数にかかわらず一つの罪が成立するというのが従来の判例であるから,原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第16)。
そこで,本件に即して検討すると,法7条1項は,児童ポルノを公然と陳列することを犯罪としているから,同罪の罪数も,陳列行為の数によって決せられるものと解するのが相当である。確かに,所論もいうように,児童個人の保護を図ることも法の立法趣旨に含まれているが,そうであるからといって,本罪が,児童個人に着目し,児童ごとに限定した形で児童ポルノの公然陳列行為を規制しているものと解すべき根拠は見当たらず,被害児童の数によって,犯罪の個数が異なってくると解するのは相当でない。
そして,本件では,被告人は,22画像分の児童ポルノを記憶・蔵置させた本件ディスクアレイ1つを陳列しているから,全体として本罪1罪が成立するにすぎないものと解される。したがって,この点に関する所論は正当であって,被害児童ごとに本罪が成立するとした原判決の法令解釈は誤りである。しかし,原判決は,成立した各本罪全体について,科刑上一罪の処理をした上で,全体を一罪として処断刑を算出しているから,その処断刑期の範囲は,当裁判所のそれと同一である。そうすると,この点に関する原判決の法令適用の誤りは,判決に影響を及ばすものとはいえない。
論旨は,結局理由がない。


 大阪高裁h15.9.18も包括一罪です。
 ダウンロード販売行為が販売罪とならないという高裁判例で、児童ポルノ法改正で「提供罪」を設けるきっかけになった判例です。

【文献種別】 判決/大阪高等裁判所控訴審
【裁判年月日】 平成15年 9月18日
【掲載文献】 高等裁判所刑事判例集56巻3号1頁(裁判所ウェブサイト掲載)
裁判所ウェブサイト
       主   文

原判決を破棄する。
被告人を懲役2年に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
 そこで,刑事訴訟法397条1項,380条により原判決を破棄するが,原審において被告人は事実関係をすべて認めて公訴事実を争っておらず,上記のとおり当審において追加された予備的訴因は主位的訴因である当初の公訴事実と基本的事実を同じくするものであって、その事実調べも尽くされていることが明らかであるから,直ちに判決することができるものと認め,同法400条ただし書により,当審において追加された予備的訴因に従い,更に次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第2 児童ポルノ画像を不特定多数のインターネット利用者に閲覧させようと企て,神戸市i区jk番lの当時の被告人方において,被告人所有のパーソナルコンピューターを操作し,
1 同年11月20日ころ,東京都千代田区a町b丁目c番地d所在の株式会社E管理のサーバーコンピューターに対し,ホームページを開設し,児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を露骨に撮影した9画像,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態を露骨に撮影した4画像及び衣服の全部又は一部を着けないで性器等を露出した児童の姿態を露骨に撮影した22画像の各画像データを送信し,同サーバーコンピューターの記憶装置であるディスクアレイ内に記憶,蔵置させた上,被告人が別に開設したホームページにアクセスした不特定多数のインターネット利用者に対し,電話回線等を使用し,上記各画像データを受信して再生閲覧することが可能な状況を設定し,同月21日ころ,上記ホームページにアクセスしてきた京都市m区n町o番地所在のBら不特定多数の者に対して,上記画像データ35画像が蔵置されたホームページのアドレス及びパスワードを教示するなどし,そのころ,Bをして,上記児童ポルノの画像を同人方に設置されたパーソナルコンピューターに受信させて再生閲覧させるなどし,
2 同月27日ころ,上記株式会社E管理のサーバーコンピューターに対し,上記ホームページとは別のホームページを開設して,上記1の画像データ35画像並びに18歳未満の児童である第1記載のAを相手方とする性交又は性交類似行為に係る同児童の姿態を露骨に撮影した13画像及び衣服の全部又は一部を着けないで性器等を露出した同児童の姿態を露骨に撮影した12画像の各画像データを順次送信し,同サーバーコンピューターの記憶装置であるディスクアレイ内に記憶,蔵置させた上,前同様の不特定多数のインターネット利用者に対し,前同様に再生閲覧することが可能な状況を設定し,同日ころ,前同様にアクセスしてきた名古屋市p区q町r丁目s番t号所在のC及び静岡県湖西市uv番地w所在のDら不特定多数の者に対して,上記各画像データが蔵置されたホームページのアドレスを教示するなどし,そのころ,C及びDをして,Cには上記1と同様の児童ポルノの画像(ただし,衣服の全部又は一部を着けないで性器等を露出した児童の姿態を露骨に撮影した児童ポルノについては21画像)を,Dには上記児童2名のすべての画像をそれぞれの自宅に設置されたパーソナルコンピューターに受信させて再生閲覧させるなどし,
 もって,児童ポルノを公然と陳列したものである。 
(証拠の標目)省 略
(法令の適用)
罰条
 第2の所為 包括して同法7条1項
刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い第2の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予 刑法25条1項

名古屋高裁平成23年8月3日
1 控訴理由④について
 論旨は,本件各画像の被写体となっている児童は3名であるから,本件は児
童ポルノ公然陳列罪3罪の併合罪とされるべきであるにもかかわらず,これら
を混然と1罪とした本件起訴状は訴因の特定を欠くものであって,この不備を
補正させることなく,また公訴を棄却せずに実体判決をした原審の訴訟手続に
は法令違反があり,さらに,本件を1罪とした原判決には法令適用の誤りがあ
る,というのである。
 しかしながら,本件犯行は,児童3名が1名ずつ撮影された本件各画像(4
点の画像のうち2点は同一の児童が撮影されたものと認められる。)のデータ
を,約5分間の間に,インターネットのサーバコンピュータに記憶,蔵置させ
た上,本件各画像の所在を特定する識別番号(URL)をインターネットの掲示
内に掲示して児童ポルノを公然と陳列したというものであり,本件各画像が上
掲示板内の「ロリ画」と題する同一カテゴリ内に掲示されているなど,各陳
列行為の間に密接な関係が認められることからすれば,各児童に係る児童ポル
ノ公然陳列罪の包括一罪であると解するのが相当である。
したがって,本件起訴状は訴因の特定を欠くものではないから,原審の訴訟手
続の法令違反をいう論旨は理由がない。なお,原判決は本件を単純―罪と判断
したものと解されるが,処断刑期の範囲が包括一罪と同一であるから,原判決
には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはないというべきであ
る。