児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

準強姦1審無罪判決(久留米支部r01.3.12)の検察官控訴で、「被告人質問を実施したが, 被告人は終始黙秘したため,当審で取り調べた実質的証拠は存在しない」のに、破棄自判して有罪とした事案(福岡高裁r02.2.5)

詐欺の意思を除く事実は、すべて、認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した1審判決を破棄し、被告人に有罪の判決を言渡しても刑訴第400条但書の規定に違反しない。(最判s33.5.1)
という判例がある
 

判例番号】 L01310138
       欺被告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和31年(あ)第4239号
【判決日付】 昭和33年5月1日
【判示事項】 刑訴第400条但書に違反しない事例
【判決要旨】 本件の第1審判決説示のごとく、詐欺の意思を除く事実は、すべて、認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した1審判決を破棄し、被告人に有罪の判決を言渡しても刑訴第400条但書の規定に違反しない。
【参照条文】 刑事訴訟法400
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集12巻7号1243頁
       最高裁判所裁判集刑事125号17頁
       裁判所時報259号95頁
       判例時報150号35頁
【評釈論文】 研修136号69頁
       主   文
 本件上告を棄却する。
 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
       理   由
 同第三点についてo
 所論は憲法三一条違反をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張に過ぎず適法な上告理由にあたらない。のみならず記録によれば、原審は被告人に対し昭和三一年九月二〇日原審第二回公判期日に出頭を命じ(二五〇丁)、該公判廷において被告人を、公訴犯罪事実その他について詳細にわたつて質問している(二五三丁以下)のであるから、その余の証拠については法廷において直接これが取調をなしていないことは所論のとおりであるが、原判決が、被告人の犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した一審福島地方裁判所の判決を破棄し、被告人に有罪の判決を言渡しても刑訴四〇〇条但書の規定に違反しないことは当裁判所の判例(昭和二六年(あ)二四三六号同三一年七月一八日大法廷判決、判例集一〇巻七号一一四七頁以下)の趣旨に徴し明らかである。(本件の第一審判決説示のごとく、詐欺の意思を除く以外の事実は、すべて、認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、原控訴審における事実の取調として充分であると見るのが相当である。
そして、原控訴審では本件につき前述のごとく被告人の質問をした上原控訴判決は、当審における事実取調の結果、すなわち、被告人の当審公判廷における供述によると、「被告人は本件各犯行の当時土工をして月収平均七、〇〇〇円乃至九、〇〇〇円であつたが、その内三分の一は母に出し、残りで身廻り品等を購入し、所謂飲代は三、〇〇〇円位で、平均して一〇口に一度位飲食していたことが認められると」判示し、さらに、「本件の各場合におけるが如く一回に二、〇〇〇円余りから四、〇〇〇円程度の飲食をすれば、他に特別の収入又はその見込のない限り直ちにその支払に窮することは明らかである。而して被告人に当時右代金支払に充てる収入があつたことはこれを認める資料が存しない。然らば、被告人の右代金支払の意思があつたという弁解は疑わしいものといわなければならない」と説示している。されば、原審には事実の取調をしない違法は認められない。)それ故論旨は理由がない。
 被告人の上告趣意は単なる事実誤認の主張であつて適法なる上告理由にあたらない。

条解刑事訴訟法
必要な事実の取調は,事件の核心についてしたことが必要である(判例⑭(c)参照)。第一審が事実の一部のみを認定せず他を認定しているときは認定しなかった部分のみに関するものでたりる(判例⑮(a)参照)。自判に必要な事実の取調は,必ずしも新証拠の証拠調でなくとも核心についての証拠を新たに取り調べればたり,証拠調の結果が第一審で取り調べた証拠以上に出なくともよい(判例⑮(跡参照。その他,十分とされた例として判例⑮(c)(d)参照)。
・・・・
【破棄自判が許される事例】
(a)第一審判決が詐欺の意思を除くすべての事実を認定している場合に,被告人を公判廷で質問し,被告人の検察官に対する供述調書を措信するべきか否か等につき取調をし,犯罪事実の存在を確定せず無罪を言い渡した第一審判決を破棄し,被告人に有罪の判決を言い渡すこと(最判昭33.5.1集12-7-1243)。

(b)犯意について証明がないことを理由とする第一審の無罪判決に対し,控訴裁判所が, 自ら事実の取調として,証人を取り調べたが,その結果が争点に直接触れるところにおいて第一審で取り調べた証拠以上に出ない場合,右事実取調の結果と訴訟記録および第一審で取り調べた証拠とによって破棄自判し,有罪の判決をすること(最判昭36.1.1礫15-1-113)。
(c)第一審の無罪判決に対し検察官から控訴の申立てがあった場合に,控訴審が事実誤認を理由として右第一審判決を破棄し,自ら犯行現場の検証等証拠の取調をした上,右検証調書と訴訟記録ならびに第一審裁判所において取り調べた証拠によって被告人に対し有罪の判決をする
こと(最決昭34.3.19集13-3-361)。
(d)犯罪の証明がないことを理由とする第一審の無罪判決に対し検察官から控訴の申立てがあった場合において,控訴審が自ら証人の取調をした上, これと訴訟記録ならびに第一審裁判所において取り調べた証拠とによって破棄自判し,有罪の判決をすること(最判昭32.3.15集11-3-1085)。