児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

訴因変更の違法で余罪が落ちるかも

 迷ったら追起訴にしておけばいいんですよね。
 この事件は一審途中で訴因変更の違法に気づいたので、追加分は追起訴されて、一応審判対象に入って、免訴になったり有罪になったりしています。
 控訴審併合罪だと気づいたときは、やはり、違法な訴因変更は無効だから、余罪が落ちてしまうので、破棄減軽されるでしょう。この場合の併合罪主張は被告人に有利に働く。
 落とされた余罪については、公訴時効は止まっているので、起訴可能ですが、不利益変更禁止が働くので、一部差戻しの場合と同じく、総合して前の一審判決を超える量刑はできないことになるでしょう。
 まあ、控訴審は原判決を救済しようとするので、一罪の判決をくれると思います。

詐欺,恐喝未遂,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件
最高裁判所第3小法廷決定平成18年11月20日
誤って併合罪関係にある事実を追加する内容の訴因変更請求をした場合,検察官が訴因変更請求書を裁判所に提出した時点から,その請求に係る事実について公訴時効のの進行が停止する。
最高裁判所刑事判例集60巻9号696頁
判例タイムズ1227号190頁
 1 原判決の認定及び記録によると,本件出資法違反被告事件の訴訟経過は,以下のとおりと認められる。
(1)検察官は,平成10年11月13日,出資法5条2項違反の事実1件について被告人を起訴した。
(2)検察官は,出資法5条2項違反の行為が反復累行された場合には包括一罪になるとの見解に基づいて,平成10年12月10日,同日付け訴因変更請求書で,当初の訴因に平成9年11月28日から平成10年7月23日までの間に犯したとする出資法5条2項違反の事実20件を追加する内容の訴因変更請求をした。
(3)第1審裁判所は,平成11年2月19日の公判期日において,弁護人に異議がないことを確認して訴因変更を許可し,以後訴因変更後の公訴事実について審理が重ねられた。
(4)第1審裁判所は,平成15年9月16日の公判期日において,当初の訴因と追加分の訴因との間には公訴事実の同一性がないから,訴因変更許可決定は不適法であるとして,職権で訴因変更許可取消決定をし,追加分の訴因に係る証拠について証拠の採用決定を取り消す決定をした。
(5)検察官は,平成15年10月9日,訴因変更許可取消決定により排除された事実を公訴事実として改めて被告人を起訴し,その後の公判期日において,同事実についての審理が行われた。
(6)第1審判決は,訴因変更請求を公訴の提起に準ずるものとして刑訴法254条1項前段を類推適用するのは相当といえず,本件訴因変更請求には公訴時効の進行を停止する効力がなく,前記(5)の公訴事実については公訴提起の時点で既に公訴時効の期間が経過していたとして,被告人を免訴した。
(7)これに対して検察官が控訴を申し立て,原判決は,訴因変更許可決定がされた段階で,本件訴因変更請求に刑訴法254条1項前段が準用されて公訴時効の進行が停止し,訴因変更許可取消決定がされた時点から再び公訴時効が進行を始めたものと解されるから,前記(5)の公訴事実について公訴時効は完成していないとして,第1審判決を破棄した上で自判し,被告人に有罪を言い渡した。

 訴因変更請求があったら、弁護人は一応、公訴事実の同一性=罪数を調べてください。控訴理由で使えるかもしれないから。
 控訴理由って量刑不当だけじゃないですから。