児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

4~6歳児への強制口腔性交罪+児童ポルノ製造4件で、懲役9年とした事例 千葉地裁H30.10.11

 
 改正前は強制わいせつ罪(176条後段)で、わいせつ性だとか、保護法益を争ってましたが、強制口腔性交罪(177条後段)になっちゃうと既遂時期とか挿入したかくらいしか争うとこがないですよね。

裁判年月日 平成30年10月11日 
裁判所名 千葉地裁 裁判区分 判決
事件名 強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2018WLJPCA10116006
 上記の者に対する強制性交等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官及川恭輔及び私選弁護人林通嗣各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
 被告人を懲役9年に処する。
 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。
理由
 【罪となるべき事実】
 被告人は,千葉県●●●幼稚園で教諭として勤務していた者であるが,
第1
 1 同幼稚園に通園するA(当時4歳。以下「A」という。)が13歳未満の者であることを知りながら,Aと強制的に性交等をしようと考え,平成29年10月10日午前10時28分頃,同幼稚園内において,Aの口腔内に被告人の陰茎を入れるなどし,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をした。(平成30年3月30日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 2 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記日時頃,同所において,衣服を脱がせたAに,その口腔内に被告人の陰茎を入れる姿態などをとらせ,これを被告人の動画撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画データ1点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し,同児童に係る児童ポルノを製造した。(平成30年3月30日付け起訴状記載の公訴事実第2)
第2
 1 同幼稚園に通園するB(当時5歳。以下「B」という。)が13歳未満の者であることを知りながら,Bと強制的に性交等をしようと考え,平成29年11月6日午前9時55分頃から同日午前9時56分頃までの間に,同幼稚園内において,Bの口腔内に被告人の陰茎を入れるなどし,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をした。(平成30年3月30日付け起訴状記載の公訴事実第3)
 2 Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午前9時44分頃から同日午前9時56分頃までの間に,同所において,衣服を脱がせたBに,その口腔内に被告人の陰茎を入れる姿態,Bに陰部を露出させる姿態などをとらせ,これを被告人の動画撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画データ3点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,それぞれ視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し,同児童に係る児童ポルノを製造した。(平成30年3月30日付け起訴状記載の公訴事実第4)
第3
 1 同幼稚園に通園するC(当時6歳。以下「C」という。)が13歳未満の者であることを知りながら,Cと強制的に性交等をしようと考え,平成29年12月25日午後1時42分頃,同幼稚園内において,Cの口腔内に被告人の陰茎を入れるなどし,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をした。(平成30年2月23日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 2 Cが18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後1時36分頃から同日午後1時43分頃までの間に,同所において,Cに,その口腔内に被告人の陰茎を入れる姿態,被告人の陰茎を触らせる姿態,Cの陰部を露出させる姿態などをとらせ,これを被告人の動画撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画データ2点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,それぞれ視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し,同児童に係る児童ポルノを製造した。(平成30年2月23日付け起訴状記載の公訴事実第2)
第4
 1 同幼稚園に通園するD(当時6歳。以下「D」という。)が13歳未満の者であることを知りながら,Dと強制的に性交等をしようと考え,平成30年1月5日午前11時8分頃,同幼稚園内において,Dの口腔内に被告人の陰茎を入れるなどし,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をした。(平成30年2月6日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 2 Dが18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午前11時4分頃から同日午前11時10分頃までの間に,同所において,衣服を脱がせたDに,その口腔内に被告人の陰茎を入れる姿態,被告人の陰茎を触らせる姿態,Dの陰部等を露出させる姿態などをとらせ,これを被告人の動画撮影機能付き携帯電話機及びタブレット端末で撮影し,その動画データ3点を同携帯電話機及び同タブレット端末の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,それぞれ視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し,同児童に係る児童ポルノを製造した。(平成30年2月6日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 【証拠の標目】括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号を示す。
 (省略)
 【法令の適用】
 罰条
 判示第1の1,第2の1,第3の1,第4の1の各行為 いずれも刑法177条後段
 判示第1の2,第2の2の各行為 いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号,3号
 判示第3の2,第4の2の各行為 いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号,2号,3号
 刑種の選択 判示第1の2,第2の2,第3の2,第4の2の各罪につきいずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第4の1の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 【量刑の理由】
 1 本件は,被告人が当時勤務していた幼稚園の園児4名に対し,約3か月の間に口腔性交をした上,それぞれその状況等を撮影して児童ポルノを製造したもので,常習的な犯行である。
 被告人は,幼稚園教諭という立場を利用し,他の職員が少ないタイミングを見計らうなどするとともに,ドレスを着せてあげるなどと甘言を用いるなどして被害児童らと保育室で2人きりの状況を作り,事もあろうに被害児童らが被告人を信頼し慕っていたことや,被告人の性的意図を理解できない未熟さにつけこみ,被害児童らに対し,口腔性交に及んでいる。かかる犯行態様は,巧妙かつ卑劣で,相当悪質である。
 被害児童らは,性的なことについての判断能力のない年齢である。何をされているか分からないまま,一方的に性的自由を侵害されており,犯行時間が長いとはいえなくても,被害結果は重大である。また,大切な我が子を安心して任せていた幼稚園において,我が子が信頼していた教諭から本件犯行に及ばれたことを知った保護者の衝撃や怒りは察するに余りある。そして,保護者らが,今後,本件の記憶が我が子の健全な成長や人格形成に悪影響を及ぼす可能性を懸念・心配し,被告人に対する峻烈な処罰感情を述べるのも当然のこととして理解できる。
 また,被告人は,幼稚園教諭として児童の健全な育成を図るべき立場にあり,児童心理や将来の影響等について専門的な知識を有していたにもかかわらず,被害児童らへの悪影響等全く顧みず,むしろその立場を悪用し,被害児童らを自己の性欲のはけ口にしたのであって,本件犯行の動機,経緯に酌量の余地は全くない。
 以上に加えて,児童ポルノを製造した点も無視できないことを併せ考えると,本件の犯情は非常に悪く,被告人の刑事責任は相当に重いというべきである。
 2 そうすると,被告人が,D,Cに対して各200万円(ただし,Dについては損害賠償金の一部として),Bに対して230万円をそれぞれ支払って,C及びBとの間では示談が成立したこと,被告人の母親が情状証人として出廷して今後の指導監督を誓約したことや,被告人が罪を認めて反省と謝罪の弁を述べていること,被告人に前科前歴がないことなど,被告人に有利に酌むことのできる事情を十分考慮しても,主文の刑は免れない。
 よって,主文のとおり判決する。
 (求刑 懲役13年)
 平成30年10月17日
 千葉地方裁判所刑事第5部
 (裁判長裁判官 市川太志 裁判官 福田恵美子 裁判官 下村有朋)