児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春罪1罪の量刑は罰金50万円が基本です(東京高裁h29.12.22)

 弁護人じゃないですよ

東京高裁h29.12.22破棄自判 速報番号3631号
前科前歴のない者による被害児童が1人のみの児童買春の事案において、罰金刑を科する場合には、おおむね罰金50万円とする一般的な量刑傾向が認められるところ、本件では、そのような量刑傾向を大幅に超えた刑を科すべき合理的理由は無く、また、児童買春は処罰の必要性や非難の強さが地域によって異なる犯罪とは言いがたいことなどからすると、罰金100万円を科した原判決は量刑傾向を大幅に超えて裁量の幅を逸脱した量刑をしたものと言わざるを得ない。

追記 2020/12/03
 原判決は量刑相場知らないで、「同種事案の量刑傾向も踏まえ」と間違った理由を付けて、検察官の求刑を盲信して、罰金100万円にしたということですね
 ちなみに、当時、宇都宮には児童買春事件は年3件くらいしかなく、全部、略式起訴で罰金100万円にしていたようです。弁護人に相談して、正式裁判請求でチェックすればいいですね。

宇都宮簡裁H29.9.21
罰金100万円
量刑理由
ツイッターで被害児童が誘引していた事案
前科前歴なし。
 そこで上記の事情を総合考慮して、同種事案の量刑傾向も踏まえ被告人に対しては主文の罰金刑に処するのを相当と判断した
求刑 罰金100万円

東京高裁H29.12.22
主文
原判決を破棄する
被告人を罰金50万円に処する
その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間 被告人を労役場に留置する
理由
 本件は対価を払い当時16歳の被害児童を買春したという事案であるところ、本件控訴の趣旨は、弁護人AB作成の控訴趣意書に記載された通りであり、論旨は、要するに罰金100万円に署した原判決の量刑は重すぎて不当である。というのである、
 所論は被害児童が1名の場合は概ね罰金50万円とする量刑傾向がうかがわれ、原判決の量刑は量刑傾向から外れており、本件では~~ 反省の態度を示していることから、同種事案では重い部類と位置づける根拠もないという
(ここからは判決速報記載)
 そこで,検討すると,前科・前歴のない者による被害児童が一人のみの児童買春の事案で罰金刑を科する場合には,所論のいうような一般的な量刑傾向が認められるところ,本件はSNSで被害児童の方から援助交際を求めていた事案であり,児童買春の中で特に悪質な犯行態様であると目される要素はなく,被告人には常習性もうかがわれない。原判決は,被告人が自己の性欲を満たすために被害児童の思慮の浅さを利用したとか,規範意識に問題があるなどと説示するが,それは児童買春に共通して当てはまることであって,被告人に同年代の娘がいるとの原判決の指摘も特に刑を重くすることを正当化するものとはいえない。原判決は,同種事案の量刑傾向を踏まえるとしながらも,その一般的な量刑傾向からすると2倍程度になる多額の罰金刑を相当とする具体的,説得的な根拠を示しておらず,本件記録を検討してもそのような根拠を見出すことはできない。
 ところで,原審検察官の求刑は原判決と同額の罰金刑であり,略式命令も同額であることからすれば,原判決はその求刑を正当なものとして認めたことがうかがわれる。そうであるとすれば,原審検察官の求刑がその庁の求刑基準から外れたものであったのか,そもそもその庁の求刑基準が他の地域のそれとは異なっていたのかのいずれかになるが,仮に後者であるとしても,児童買春は,SNSや出会い系サイト等の通信手段を利用して買春の約束をして行為に及ぶというのがその典型であり,被害児童と買春をする者の居住地域が離れていることも少なくなく,買春の場所と居住地との関係も区々であって,処罰の必要性や非難の強さが地域によって異なる犯罪とは言い難く,事件を捜査する機関の所在地いかんにより罰金額に2倍もの開きが生じることの合理性を説明することは困難である。
 そうすると,原判決は,一般的な量刑傾向についての誤った認識を前提としたものか,あるいはそうでなくとも合理的理由がなく量刑傾向を大幅に超えて裁量の幅を逸脱した量刑をしたものといわざるを得ず,いずれにせよ,科刑の公平の観点からすれば,原判決の量刑は重すぎて不当であり,破棄を免れない。
 論旨は理由がある。
(ここまで判決速報)
  よって刑訴法397条1項 381条により原判決を破棄して、400条但し書きを適用して、被告事件についてさらに判決する、
原判決が認定した事実に原判決挙示の法令を適用し(罰金刑の選択も含む)、前記量刑事情の評価に基づき、
その所定金額の範囲内で、被告人を罰金50万に処し、その罰金を完納することができないときは、刑法18条により、金5000円を1日に換算した期間 被告人を労役場に留置することとし、主文の通り、判決する
 第8刑事部