児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

h29.9.30に尻を触ったという痴漢行為(H29.3.1施行 沖縄県迷惑行為防止条例3条1項1号違反)について、「沖縄県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」3条違反として通常逮捕した事例

 そもそも「沖縄県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例3条」というのが有効に存在しません。
 沖縄県迷惑行為防止条例はネット上ではヒットしません。県の例規集にも見当たりません。
 豊見城警察・那覇地検那覇地裁にも周知されていませんでした。
 弁護人は「新条例は公布されていない」という主張をしてください。検察官からは「俺は知らなかったけど、他の人は知っていた」みたいな反論が来るでしょう。
 令状を取り直している間、被疑者を警察署に留めた理由も説明してもらいましょう。

改正前
http://www.pref.okinawa.jp/reiki/35090101000900000000/35090101000900000000/35090101000900000000.html
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
昭和50年1月10日
条例第9号
改正
平成4年3月31日条例第38号
平成19年7月20日条例第45号
(卑わいな行為の禁止)
第3条 何人も、他人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しくしゅう恥させ、又は他人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。
(罰則)
第10条
1 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(1) 第3条の規定に違反した者
2 常習として前項第1号の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
追加〔平成19年条例45号〕
↓↓

改正後
http://www.pref.okinawa.jp/kenkouhou/H28/12gatsu/161228gogai38.pdf
あらまし
○ 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例(条例第62号) 1 題名を「沖縄県迷惑行為防止条例」に改めることとした。(題名関係) 2 3の行為規制を加えることに鑑み、目的を改めることとした。(第1条関係) 3 人の衣服等を透かして見ることができる写真機等を用いて他人の下着等を撮影する行為、衣服の全部又は 一部を着けない状態にある他人を撮影する行為等を規制することとした。(第3条関係) 4 3の行為規制を加えることに伴い、盗撮行為に関する罰則を1年以下の懲役又は100万円以下の罰金等と することとした。(第10条関係) 5 その他所要の改正を行うこととした。(第4条第1項第2号及び第4号、第11条第1項第1号並びに第12 条から第17条まで関係) 6 この条例は、平成29年3月1日から施行することとした。(附則第1項) 7 この条例の施行に関し、必要な経過措置を定めることとした。(附則第2項)



公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和50年沖縄県条例第9号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
沖縄県迷惑行為防止条例
第1条中「暴力的不良行為等」を「行為等」に改める。
第3条中「卑わいな言動」を「次に掲げる行為」に改め、同条に次の各号及び3項を加える。
(1) 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から直接他人の身体に触れること。
(2) 人の通常衣服で隠されている身体又は下着(以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
(3) 人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を向け、若しくは設置すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、正当な理由がないのに、人の衣服等を透かして見ることのできる写真機等を用いて、公共の場所にいる他人又は公共の乗物に乗っている他人の下着等を見、又は撮影してはならない。
3 イ可人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある他人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。
4 何人も、正当な理由がないのに、事務所、会鏃室、教室その他の公共の場所以外の場所であって、多数の者が利用するような場所において、他人の下着等を撮影してはならない。
第4条第1項第2号及び第4号並びに第3項第1号及び第2号中「通常衣服で隠されている身体又は下着」を「下着等」に改める。
第16条中「第10条第1項第2号、第11条第1項若しくは第2項、第12条第1項(第4条第1項に係る部分に限る。)若しくは第2項」を「第11条第1項第2号、第12条第1項若しくは第2項、第13条第1項(第4条第1項に係る部分に限る。)若しくは第2項」に、
「第13条」を「第14条」に、「第14条」を「第15条」に改め、同条を第17条とする。第15条を第16条とし、第11条から第14条までを1条ずつ繰り下げる。
第10条の前の見出しを削り、同条第1項第1号中「第3条」を「第3条第1項から第3項まで」に改め、「違反した者」の次に「(前条第1項第1号の規定に該当する者を除く。)」を加え、同条を第11条とし、第9条の次に次の見出し及び1条を加える。
(罰則)
第10条次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(1) 第3条第1項(第3号に係る部分に限る。)、第2項又は第3項の規定に違反して撮影した者
(2) 第3条第4項の規定に違反した者
2 常習として前項の違反行為をした者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成29年3月1日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」の一部改正
http://www.pref.okinawa.jp/site/iken/h28/documents/20160609160819.pdf
http://www.pref.okinawa.jp/site/iken/h28/kenkei2.html
1 条例案の内容
(1) 改正趣旨
 現行条例は、公共の場所・乗物における痴漢や盗撮行為を規制しています。
 しかし、風呂場や更衣室など、通常衣服を着けない状態でいるような場所や、公共の場所ではない学校の教室など、特定かつ多数の人が利用するような場所における盗撮、あるいは透視機能を有した写真機での盗撮は、現行条例で取り締まることができません。
 そこで、現行条例で規制できない形態の盗撮等を規制するため条例を改正します。  
 また、今回の改正により画像流出による二次被害のおそれが高い盗撮行為の罰則を強化します。
(2) 改正内容
ア 公共の場所における「卑わいな行為」関係(禁止行為を一部追加)
 現行条例は、規制する内容を公共の場所における「卑わいな言動」とし、条文をひとくくりにしていますが、今回の改正で、「卑わいな言動」の態様が分かりやすいよう、次のとおり例示規定するとともに、新たに盗撮目的でカメラを設置する行為等を規制します。
・現行(要約):公共の場所又は乗物において、卑わいな言動をしてはならない
・改正案(要約):公共の場所又は乗物等において、次の行為をしてはならない。
①人の身体に触れる痴漢行為
②衣服で覆われている人の下着や身体をのぞき見する行為
③下着等を盗撮し、盗撮する目的で写真機等を向け、若しくは設置する行為
イ 透視機能を有する写真機等で下着等を見ることや盗撮の禁止(新設)
※公共の場所又は乗り物に乗っている人に対し、次の行為をしてはならない。
・正当な理由がないのに、透視機能を有したカメラ等で、公共の場所にいる人の衣服を透かして見る行為や撮影する行為を新たに規制します。
ウ 通常衣服を着けない状態でいる場所にいる人の盗撮等の禁止(新設)
※公共の場所又は公共の乗物を要件としない禁止行為
・正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所等で、衣服を着けない状態でいる人を、盗撮し、又は盗撮目的で写真機等を向け、若しくは設置する行為を新たに規制します。
エ 特定かつ多数の人が利用するような場所での盗撮の禁止(新設)
※場所的要件「特定かつ多数の人が利用する場所」
・正当な理由がないのに、公共の場所に含まれない集会所、事務所、教室など特定かつ多数の人が利用するような場所において、人の下着等を盗撮する行為を新たに規制します。
オ 罰則の強化
次のとおり盗撮行為の罰則を強化します。
【盗撮】
・現行:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)
・改正案:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(常習は2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)
【痴漢】
・現行:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)
・改正案:現行と変更なし。

条例誤適用の男送検/豊見城署「再発防止努める」
2017.10.03 沖縄タイムス
 豊見城署は2日、女子小学生の尻を触ったとして、県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕した無職の男(52)を那覇地検に送致した。同署は1日、改正前の同条例違反容疑で逮捕したが、その後誤りに気付き、男を一度釈放。同日中に、改正後の同条例違反容疑で再び逮捕した。
 1度目の逮捕から約32時間半後の2日午前11時ごろに送検した同署は、手続きの不備について「職員の指導を徹底し再発防止に努めたい」とした。男は同署の調べに対し、容疑を認めているという。1度目の逮捕で、改正前の同条例違反容疑で逮捕状を発布した那覇簡裁を監督する那覇地裁も「点検が不十分だった」と不備を認めた。その上で「このような事態が生じたことは誠に遺憾だ」とコメントした。
 刑事訴訟法は、警察が留置の必要があると判断した場合、逮捕した被疑者を48時間以内に検察官に送致する手続きを規定している。豊見城署は「送検手続きに違法性はなかった」としている。同署は男をいったん釈放した後、再び逮捕するまでの約3時間の扱いについて「被疑者に事情を説明し、任意で署に待機してもらった」と説明した。
 同条例は1975年に公布され、最新の改正案は今年3月施行。同署は「改正前と後のどちらの条例の構成要件も満たし
 ている」と説明していた。
・・・
旧条例名で逮捕状/県警・地裁 執行後釈放し再逮捕
2017.10.03 琉球新報
 豊見城署は1日、小学生女児の尻を触ったとして逮捕した自称住所不定無職の男(52)について、改正前の古い条例名で逮捕したことから、一時釈放し再逮捕したと発表した。同署は「今後は同様のことがないように指導したい」としている。弁護士は「警察は罰則付きの法律や条例の適用でミスをしてはいけない」と指摘した。

 逮捕容疑は9月30日午後4時前、那覇市のショッピングセンター内で女子小学生の尻を手で触った疑い。豊見城署は1日午前2時半ごろに「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」に違反したとして逮捕。しかし、同条例は3月の改正で「沖縄県迷惑行為防止条例」と名称が変わっていた。

 豊見城署員が送検手続きをしている際に誤りに気が付いたため、同署は1日午後1時15分ごろに男を一度釈放。事情を説明して任意で署内で待ってもらい、同4時42分に再逮捕した。同署は「犯罪の構成要件は充足しているが、厳正手続きの観点から釈放し再逮捕した」と説明した。男は2日午前中に送検された。

 那覇地裁によると、多田裕一裁判官が最初の令状を発布した。再逮捕の際は別の裁判官が担当したという。那覇地裁の矢尾渉所長は「このような事態が生じたことは誠に遺憾だ。再発防止に努めたい」とした。

 元裁判官で刑事弁護に詳しい釜井景介弁護士は、身柄拘束が強制的に行われる観点から「法的根拠を明示して権力を行使する立場の警察官にあってはならない間違いだ」と批判した。裁判官については「今回の容疑は刑法ではなく条例違反で、間違ってはいけないが難しい面はある」と話した。

 沖縄弁護士会刑事弁護委員会の高良誠委員長は「釈放後の身柄の取り扱いなどで被疑者に不利益があってはならない。裁判所にもチェックを果たせなかった甘さがある」と指摘した。