児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

常習性とは行為者の属性と捉えるべきであるから、行為者が当該地方公共団体の区域外であっても、罰則をもって禁止されている違法な行為を繰り返していたという事実があれば、行為者にこの種違法な行為を繰り返す習癖、すなわち常習性を認めることができる。(名古屋地豊橋支判令和5年8月25日)

常習性とは行為者の属性と捉えるべきであるから、行為者が当該地方公共団体の区域外であっても、罰則をもって禁止されている違法な行為を繰り返していたという事実があれば、行為者にこの種違法な行為を繰り返す習癖、すなわち常習性を認めることができる。(名古屋地豊橋支判令和5年8月25日)
 じゃあA県での卑わい行為とB県での卑わい行為を常習一罪にしてもよさそうですね。東京高裁h17はどうする

裁判年月日 平成17年 7月 7日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平17(う)619号
事件名 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為の防止に関する条例(埼玉県条例)違反、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(東京都条例)違反被告事件
 2005WLJPCA07070006
判決理由
 本件控訴の趣意は,弁護人作成の控訴趣意書に記載されたとおりであるから,これを引用する。
 論旨は,要するに,被告人が,原判示第1の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為の防止に関する条例(埼玉県条例)違反の罪及び原判示第2の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(東京都条例)違反の罪といずれも常習一罪の関係にあるその後に犯した公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(愛知県条例)違反の罪について略式命令を受け,それが確定しているから,原判示各条例違反の罪は刑訴法337条1号にいう確定判決を経たときに帰するのに,被告人を免訴することなく有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかし,地方公共団体に認められた自治立法権条例制定権)の趣旨等に照らすと,地域を異にする別個の地方公共団体(埼玉県,東京都及び愛知県)の条例に違反する各罪を常習一罪として問う余地はないというべきであり,被告人を有罪とした原判決に訴訟手続の法令違反があるとはいえない。

愛知県迷惑行為防止条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、静岡県迷惑行為等防止条例違反被告事件
名古屋地豊橋支判令和5年8月25日D1-Law.com判例体系〔28312832〕
■28312832
名古屋地方裁判所豊橋支部
令和05年08月25日
理由
(罪となるべき事実)
第1 令和5年7月10日付け訴因変更請求書記載の事実(同事実中1記載の事実を第1の1、同2記載の事実を第1の2とする。)を引用する。
第2 同日付け起訴状記載の公訴事実を引用する。
(事実認定の補足説明)
 弁護人は、判示第2の事実について、要するに、静岡県内での盗撮の事実が1回のみであるから、静岡県迷惑行為等防止条例における常習盗撮罪は成立しない旨主張する。
 この点、常習性とは行為者の属性と捉えるべきであるから、行為者が当該地方公共団体の区域外であっても、罰則をもって禁止されている違法な行為を繰り返していたという事実があれば、行為者にこの種違法な行為を繰り返す習癖、すなわち常習性を認めることができる。
 本件についてみるに、判示第1によれば、被告人は、令和2年11月から令和5年3月までの間、合計14回にわたって、愛知県迷惑行為防止条例により罰則をもって禁止されている盗撮行為を繰り返していたのであるから、被告人にはこの種違法な行為を繰り返す習癖があるものといえる。弁護人の主張は、行為者の属性としてとらえるべき常習性の概念に、別次元の問題である条例の効力の場所的な限界を混同して議論するものであって、失当である。
 よって、静岡県内において盗撮目的で写真機等を設置し、映像に記録したという事実も、被告人の常習性が発露したものということができるから、判示第2のとおり認定した。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
 判示第1の所為のうち
  常習として盗撮した点(1及び2の事実)
  愛知県迷惑行為防止条例15条2項、2条の2第3項1号
  児童ポルノ製造(2の事実)
  児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、同条2項、2条3項3号
 判示第2の所為 包括して静岡県迷惑行為等防止条例12条2項、1項1号、3条2項(常習盗撮の点は、同条例12条2項、1項1号、3条2項、映像記録の点は同条例12条3項、1項1号、3条2項に該当するところ、これらの行為については包括一罪として常習盗撮の罪が成立すると判断した。)
科刑上一罪の処理
 判示第1の事実 刑法54条1項前段、10条(2の児童ポルノ製造と1及び2の常習盗撮の罪のうち2の盗撮の部分とはそれぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、結局1及び2の罪を一罪として刑及び犯情の重い児童ポルノ製造の罪の刑で処断する。)
刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重)
執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の処理 刑事訴訟法181条1項本文(負担)