児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

スカート内を撮影して下着が撮影された場合は、条例5条1項2号が適用されるのか、性的姿態撮影罪(2条1項1号イ)が適用されるのか?~東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 (昭和37年10月11日東京都条例第103号)5条2項の盗撮行為の禁止規定と、性的姿態撮影罪(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項1号)との関係(法条競合とか観念的競合とか) 

スカート内を撮影して下着が撮影された場合は、条例5条1項2号が適用されるのか、性的姿態撮影罪(2条1項1号イ)が適用されるのか?~東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 (昭和37年10月11日東京都条例第103号)5条2項の盗撮行為の禁止規定と、性的姿態撮影罪(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項1号)との関係(法条競合とか観念的競合とか) 

 卑わい行為(条例)と強制わいせつ罪の関係については、警視庁は法条競合(吸収関係)と解釈していて、強制わいせつ罪が立つときは、卑わい行為は適用されないとされる。
 同様に考えると、盗撮罪(条例)と性的姿態撮影罪との関係についても、警視庁は法条競合(吸収関係)と解釈していて、性的姿態撮影罪が立つときは、盗撮罪は適用されないとしている可能性がある。
 とすると、スカート内にカメラを入れて撮影した場合の罰条は、性的姿態撮影罪のみになって、迷惑条例の盗撮罪は適用されない。未遂の場合も、性的姿態撮影罪未遂のみになる。

警視庁が“盗撮犯”の容疑を「迷惑防止条例」から「撮影罪」に訂正…その“思惑”とは? 小さいようで大きい2つの法律の違い
JR山手線の電車内で女性のスカート内を盗撮しようとしたとして、警視庁高輪署は10日、性的姿態撮影処罰法(撮影罪)違反(撮影未遂)の疑いで、国土交通省職員の男を現行犯逮捕したーー。
実はこの報道、共同通信が12日に配信したものだが、第二報。当初は「性的姿態撮影処罰法違反」容疑ではなく、「東京都迷惑防止条例」違反の疑いとなっていた。発表から数時間後に警視庁が訂正したのだ。
大きな意味では、どちらも「盗撮」を罰する法令であり、間違いとはいえない。だが、撮影罪が新設された経緯や盗撮の特性を考えると、見過ごせないことであり、訂正を発表したことには意義がある。
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<盗撮犯を逮捕した>。その点だけに目を向ければ、第一報と第二報に大きな違いはない。だが、警察の訂正に、今後、盗撮罪での検挙にもより力を注いでいくんだというメッセージが込められていると信じ、盗撮罪による検挙の推移を見守りたい。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
(昭和37年10月11日東京都条例第103号)
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条
1 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写 真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は 出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

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公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例一部改正の解説第5条第1項第2号盗撮行為(平成30年7月1日施行)
趣旨
近年の盗撮行為は、スマートフォンの急速な普及、撮影機器の更なる高性能化、小型化に伴い、これらの機器を使用して犯行に及ぶことにより、犯行の秘匿性が増し、様々な場所において盗撮が行われるなど、都民生活の平穏が著しく脅かされている状況にある。また、盗撮された画像データは半永久的に記録され、ネット上に流出するおそれがあるほか、個人の特定が可能な情報が含まれているケースも少なくなく、被害者に係る法益侵害の程度は深刻である。
したがって、本改正では、これまで処罰対象とされていなかった住居内や会社事務所内、会社や学校のトイレ、更衣室等における盗撮行為の取締りを可能とすることにより、都民の不安感や懸念を払拭し、都民生活の安全・安心の確保を図るものである。9

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逐条解説
3卑わい行為事犯と他法令との関係
(1)強制わいせっ罪との関係
本項にいう卑わいな行為とは、いやらしくみだらな言動の意であり、わいせっ行為より広い概念で、卑わいな行為にはわいせつ行為も含まれる。わいせつ行為が暴行、脅迫を伴う場合、刑法上の強制わいせっ罪が成立し、本項違反が成立する余地はない。両者の関係は法条競合であり実務上問題となるのは、人に対するわいせつな言動が、強制わいせっ罪を構成し、しかも、告訴がない場合に、これを本項違反として立件し得るかという点である。このような場合といえども、強制わいせっ罪という犯罪は成立しているのであって、単に告訴という「訴訟要件」を欠くにすぎないのであるから、両者の関係からすると、本項違反として立件し得ないと考えるべきである。ただし、言語はわいせつ行為に当たらないとするのが判例であるから、卑わいな行為が言語のみによってなされた場合には、このような関係は問題とならない。
もっとも、本項違反の罪で逮捕したものを強制わいせつ罪で起訴することは絶対にできないというものではない。なお、痴漢事犯に多く見らを目安として執務の参考とされたい.

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
(性的姿態等撮影)
第二条次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロイに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

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法務省逐条説明
第2条から第6条までの各罪は、人の意思に反して性的な姿態を撮影したり、これにより生成された性的な姿態の記録を提供するといった行為がなされれば、当該記録の存在・流通等により、性的な姿態が当該姿態をとった時以外の機会に他人に見られる危険が生じ、ひいては、不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じる危険があることから、それらの行為を処罰するものであり、その保護法益は、
〇自己の性的な姿態を他の機会(すなわち、当該姿態をとった時以外の他の機会)に他人に見られるかどうか
という意味での被害者の性的自由・性的自己決定権である。