児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ条例廃止へ=京都

 有償取得罪とか被害者救済とか国法とかぶらないようになってるんですけどね。ややこしいので廃止か。
 被害者保護もやらないまま廃止。

児童ポルノ条例廃止へ=京都
2015.07.02 読売新聞
 府は1日、18歳未満のわいせつ画像や映像の所持を禁じ、全国初の廃棄命令を盛り込んだ「児童ポルノ規制条例」を廃止する考えを明らかにした。昨年改正された児童買春・児童ポルノ禁止法の規制が条例の内容を含んでいるためという。
 この日開かれた府議会の府民生活・厚生常任委員会で府が説明。同条例は2012年1月に施行されたが、これまで命令は出されていないという。府は9月定例会に廃止のための条例案を提出する。

京都府児童ポルノの規制等に関する条例
京都府条例第32号
京都府児童ポルノの規制等に関する条例をここに公布する。
京都府児童ポルノの規制等に関する条例
(目的)
第1条 この条例は、児童ポルノの流通及び拡散の防止等に関し府、府民等の責務を明らかにするとともに、児童ポルノに係る行為に対する必要な規制等及び児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対する支援を行うために必要な事項を定めることにより、児童の権利が擁護され、児童ポルノによる児童の権利の侵害を決して許さない社会の構築を図り、もって児童ポルノを根絶し、児童ポルノによる被害をなくすることを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「児童」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号。以下「法」という。)第2条第1項に規定する児童をいう。
2 この条例において「児童ポルノ」とは、法第2条第3項に規定する児童ポルノをいう。
3 この条例において「児童ポルノ記録」とは、法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。
(平26条例31・一部改正)
(府の責務)
第3条 府は、児童ポルノが根絶され、児童ポルノによる被害のない社会の実現に向け、その気運を醸成するため、児童ポルノが流通し、及び拡散することのないよう適切な広報及び啓発を行うとともに、児童ポルノによる被害を防止するための必要な教育の推進その他の必要な措置を講じるものとする。
府民の責務)
第4条 府民は、児童ポルノに係る行為が児童の権利の侵害であることについて理解を深めるとともに、府がこの条例の目的を達成するために実施する施策に協力するよう努めるものとする。
2 府民は、児童ポルノが流通し、及び拡散することのないようにするため、児童ポルノに係る情報がインターネットを利用して公衆の閲覧(視聴を含む。以下同じ。)に供されていることを発見したときは、速やかに、その旨をホットラインセンター(児童ポルノに係る情報の通報を受け付け、インターネットの利用に係る役務を提供する者に対し必要な措置を講じるよう依頼する業務を行う団体で知事が別に定めるものをいう。)に通報するよう努めるものとする。
(インターネットの利用に係る役務を提供する者の責務)
第5条 インターネットの利用に係る役務を提供する者は、その提供する役務を利用して児童ポルノに係る情報が公衆の閲覧に供されていることを知ったときは、速やかに、当該情報を公衆が閲覧することができないようにする等、児童ポルノが流通し、及び拡散することのないようにするため、児童ポルノに係る情報がインターネットを利用して公衆の閲覧に供される機会をできるだけ少なくする措置を講じるよう努めるとともに、府がこの条例の目的を達成するために実施する施策に協力するよう努めるものとする。
(適用上の注意)
第6条 この条例の適用に当たっては、府民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。
(所持等の禁止)
第7条 何人も、正当な理由なく、児童ポルノを所持し、又は児童ポルノの提供を受けてはならない。
2 何人も、正当な理由なく、児童ポルノ記録を保管し、又は電気通信回線を通じて児童ポルノ記録の提供を受けてはならない。
(廃棄命令等)
第8条 知事は、前条第1項の規定に違反して、児童ポルノ(法第2条第3項第3号に掲げる児童の姿態を描写したものにあっては、衣服の全部を着けない姿態を描写したもの又は性器若しくは肛門を描写したものに限る。以下この条及び次条第1項において同じ。)を所持する者に対し、期限を定めて当該児童ポルノの廃棄を命じることができる。
2 知事は、前項の規定による命令を行うことができる場合において、児童ポルノを所持する者が当該児童ポルノに記録された児童ポルノ記録(法第2条第3項第3号に掲げる児童の姿態を描写した情報を記録したものにあっては、衣服の全部を着けない姿態を描写した情報を記録したもの又は性器若しくは肛門を描写した情報を記録したものに限る。以下この条及び次条第1項において同じ。)の消去による方法その他の当該児童ポルノの廃棄によらない方法により当該児童ポルノ児童ポルノに該当しないものとするための措置を講じることができると認めるときは、その者に対し、前項の規定による命令に代えて、期限を定めて当該措置を講じるべきことを命じることができる。
3 知事は、前条第2項の規定に違反して、児童ポルノ記録を保管する者に対し、期限を定めて当該児童ポルノ記録の消去を命じることができる。
4 知事は、前項の規定による命令を行うことができる場合において、児童ポルノ記録を保管する者が当該児童ポルノ記録の消去によらない方法により当該児童ポルノ記録を児童ポルノ記録に該当しないものとするための措置を講じることができると認めるときは、その者に対し、同項の規定による命令に代えて、期限を定めて当該措置を講じるべきことを命じることができる。
5 知事は、前各項の規定による命令(以下「廃棄命令等」という。)をしようとするときは、京都府行政手続条例(平成7年京都府条例第2号)第13条第1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
(立入調査等)
第9条 知事は、廃棄命令等をするため必要があると認めるときは、その職員に、児童ポルノを所持し、又は児童ポルノ記録を保管していると認められる者その他の関係者(以下この条において「関係者」という。)に対し、当該児童ポルノを所持し、又は当該児童ポルノ記録を保管していると認められる場所に立ち入り、調査させるよう求めさせることができる。
2 知事は、前項の場所に立ち入り、調査させたときは、その職員に、関係者に対し質問させ、又は必要な資料の提出を求めさせることができる。
3 前2項の立入調査等を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4 第1項及び第2項の立入調査等は、犯罪捜査のためのものと解してはならない。
(努力義務)
第10条 何人も、児童に係るわいせつな行為を視覚により認識することができる方法により描写した写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物で児童ポルノに該当しないものを、正当な理由なく、製造し、所持し、提供し、又は運搬しないように努めなければならない。
2 何人も、児童に係るわいせつな行為を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録で児童ポルノ記録に該当しないものを、正当な理由なく、保管し、又は電気通信回線を通じて提供しないように努めなければならない。
(心身に有害な影響を受けた児童に対する支援)
第11条 府は、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、関係機関と連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長し、生活することができるよう、相談体制の充実を図ること等により必要な支援を行うものとする。
2 府は、前項の支援のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、必要な支援を行うものとする。
(規則への委任)
第12条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
(罰則)
第13条 第7条第1項の規定に違反して、対償を供与し、又はその供与の約束をすることにより児童ポルノ(法第2条第3項第1号又は第2号に掲げる児童の姿態(13歳未満の児童に係るものに限る。以下この項において同じ。)を描写したものに限る。)の提供を受けた者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。第7条第2項の規定に違反して、対償を供与し、又はその供与の約束をすることにより電気通信回線を通じて児童ポルノ記録(法第2条第3項第1号又は第2号に掲げる児童の姿態を描写した情報を記録したものに限る。)の提供を受けた者も、同様とする。
2 廃棄命令等に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。ただし、第7条から第10条まで及び第13条の規定は、平成24年1月1日から施行する。
附 則(平成26年条例第31号)
この条例は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第79号)の施行の日から施行する。
(施行の日=公布の日(平成26年6月25日)から起算して20日を経過した日)

こういう説明をしていたことも、全部やめちゃうんですね。

京都府児童ポルノの規制等に関する条例 逐条解説H2409 
(府の責務)
第3条 府は、児童ポルノが根絶され、・児童ポルノによる被害のない社会の実現に向け、その気運を醸成するため、児童ポルノが流通し、及び拡散することのないよう適切な広報及び啓発を行うとともに、児童ポルノによる被害を防止するための必要な教育の推進その他の必要な措置を講じるものとする。
【解説】
本条は、本条例第l条の目的を達成する上での「府の責務」を明らかにした規定である。
 本条例の基本理念である「児童ポルノによる子どもたちの権利侵害を決して許さない社会を構築すること」は、国民的な課題であるとともに、国・府をあげて取り組まなければならない重要な行政課題である。
その中で、条例制定主体である府は、関係機関・団体を含めた府民全体の取組の推進を図りつつ、条例の目的達成に向けて積極的な役割を果たしていく責務を有するものである。
 児童ポルノ根絶に向けた気運を高めるとともに、児童ポルノ等による性的虐待の被害を予防するために必要な教育を推進することは重要である。
本条は、府が、広報・啓発活動を積極的に実施し、インターネットを適切に活用できる能力を取得するための情報リテラシー教育などの取組の推進について規定したものである。
 また、インターネット上に一旦流通した児童ポルノの回収は事実上不可能であり、被害児童やその親しい者に対して将来にわたり耐え難い苦しみを与え続ける。
 本条は、府が、児童ポルノを発見した際の通報窓口の周知や児童ポルノが掲載されたサイトの迅速な削除など、警察やインターネットホットラインセンターなど関係機関と連携し、これ以上児童ポルノが流通・拡散しないための取組の推進について規定したものである。
じ〉「必要な教育」とは、インターネットを適切に活用できる能力を取得するための情報リテラシー教育をはじめ、子どもたちが両性聞において対等な人間関係を築き、児童ポルノ等による性的虐待の被害を予防するために必要な教育のことであり、府が行う青少年育成の他、教育長の学校教育も含まれる。
なお、被害児童の支援については、児童ポルノ規制と並んで特別に重要な府の責務,
であるため、別に条立てを行っているところである。(第11条)

(心身に有害な影響を受けた児童に対する支援)
第11条 府は、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、関係機関と連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長し、生活することができるよう、相談体制の充実を図ること等により必要な支援を行うものとする。
2 府は、前項の支援のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、必要な支援を行うものとする。
【解説】
本条は、本条例第1条の目的を達成する上での「府の責務」のうち、被害児童の支援について特別に規定したものである。:
子どもの時に受けた性的被害は、その子どもの将来や人生のあり方に深刻なダメージを与えるものであり、児童ポルノの被害をなくしていくという観点においても、最優先事項として被害に遭った児童の支援を充実させることが重要であることを明記したものである。
被害児童の支援に当たっては、児童ポルノ被害に関する相談については、被害者自身からなかなか言い出しにくい面があるので、身近な専門相談窓口を設置し、あらゆる機会をとらえて広く周知に努めるなど、気軽に相談しやすい環境をつくることが大:切である。:
あわせて、相談に際して二次被害(被害後に周囲の言動によってさらに傷つけられてしまうこと)が生じることがないよう十分配慮するなど、安心して相談できる環境;をつくることも大切である。
また、子どもは家族の一員であり、被害児童の支援においては、保護者も含めて家族に対するサポートができる体制も必要である。
【具体的な取組方策】
専門的な知識に基づく迅速かつ適切な支援(助言・指導・一時保護・施設入所など)が行えるようにするなど、相談体制の強化を図るとともに、保護者も含めて家族に対するサポートができる体制づくりを検討していく。
家族に対するサポートとは、例えば、「自分の子どもが児童ポルノ被害を受けたのは、自分が親としての責務を果たしていなかったから」等と自分を責めるケースも想定されることから、児童と同様、心に傷を負った家族に対しでも助言・指導等のサポートを行おうとするもの。
また、保健所や市町村、警察、学校などの関係機関との相互の連携・協力により、家庭支援総合センターを中心に被害児童支援のためのネットワークを府域全体に拡げるとともに、(社)京都犯罪被害者支援センタ一等の民間支援団体との連携も強化し、個々のケースに応じたきめ細やかな支援体制の構築についても検討していく。

追記
 結局、児童ポルノ処罰が主眼で、被害児童保護はオマケだったんでしょうね。

http://www.pref.kyoto.jp/kouhou/documents/kouho_2720_1.pdf
京都府児童ポルノの規制等に関する条例を廃止する条例(京都府条例第48号)(青少年課)
1 廃止の理由
  児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)の一部改正により、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等が新たに規制されたことに伴い、条例を廃止するものである。
2 施行期日
  平成27年10月13日

京都府条例第48号
京都府児童ポルノの規制等に関する条例を廃止する条例
 京都府児童ポルノの規制等に関する条例(平成23年京都府条例第32号)は、廃止する。
   附 則
1 この条例は、公布の日から施行する。 
2 平成27年7月14日以前にした行為に対する罰則の適
用については、なお従前の例による。