児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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条例による規制の対象となる「児童ポルノ」とは、児童ポルノ規制法と同様、実在の児童(児童の生死は問わない)の姿態を視覚により確認することができる方法により描写したものとし、実在しない児童の姿態を描いた漫画やアニメ等の二次元の表現物は児童ポルノに当たらず、条例の規制は及ばない。(規制の対象外となる。)〜京都府児童ポルノの規制等に関する条例の趣旨

 教授が解説していた、ブラックマーケットの禁圧という言葉は出てきません。
 こういう社会的法益を加味すると、実在性の要件は薄らぎます。

京都府児童ポルノの規制等に関する条例〈逐条解説〉平成24年9月 京都府
京都府児童ポルノの規制等に関する条例の解説
【条例制定の背景】
平成11年に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び、児童の保護等に関する法律(平成11年5月初日法律第52号、以下「児童ポルノ規制法」という。)」が施行され、その後の改正を経て、現在、児童ポルノの頒布・販売やそれらを目的とする所持・製造等が禁止されたものの、他に提供する目的のない「単純所持」は禁止されておらず、依然として多くの児童ポルノが流通している状況にある。
近年、特にインターネットが本格的に普及したおかげで、誰でも簡単に児童ポルノ」の閲覧・入手が可能な状況にあるが、ネットの画像は簡単に複製されて拡散し、こうした児童ポルノの氾濫が、新たな児童ポルノの製造・提供を助長し、さらなる被害児童等を生み出す土壌となっているとともに、一旦流通した児童ポルノの回収は事実上不可能であり、被害児童やその親しい者に対して将来にわたり耐え難い苦しみを与え続けている。
こうした状況の中、京都府では、児童ポルノの流通・拡散を防ぎ、児童ポルノの被害から児童の人権を守ることを目的として、平成22年9月に「児童ポルノ規制条例検討会議」を設置した。
児童ポルノの規制に当たっては、法的問題点も含め多面的に検討する必要があることから、検討会議委員は、学識経験者(憲法、刑法、人権、児童福祉、情報)、弁護士、報道関係者、青少年育成関係者、教育関係者で構成し、青少年関係団体やインターネット関係事業者からも意見聴取を行いながら、児童ポルノ被害の拡大防止や被害児童の保護・ケアなど、子どもを守るという観点から、どういったことが条例で可能なのか検討頂いたところ。
具体的には、
?条例の目的については、児童ポルノの被害から児童の人権を守ることに重きをおくこと。
?規制する対象は、実在の児童が被写体等となっている表現物とすること。(漫画やアニメ等の二次元は規制対象としない。)
?法律で規制されていない提供目的以外の児童ポルノの所持・取得についても禁止していくこと。
?インターネットについては、府独自の規制には限界があるが、サイト発見通報義務やサイト削除協力について、条例に規定していくこと。
?被害を受けた児童の保護・ケア、児童ポルノ根絶に向けた広報・啓発、インターネットを適切に活用する能力の習得、いわゆる情報リテラシー教育の推進などを府の責務をすること。
などについて提言いただいたところ。
 検討会議からの報告書を踏まえ、「児童ポルノによる子どもたちの権利侵害を決して許さない社会を構築すること」を基本理念とし、児童ポルノの被害から児童の人権を保護し、被害児童等の救済を図ることを目的とした条例を制定したところ。
(目的)第1条
この条例は、児童ポルノの流通及び拡散の防止等に関し府、府民等の責務を明らかにするとともに、児童ポルノに係る行為に対する必要な規制等及び児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対する支援を行うために必要な事項を定めることにより、児童の権利が擁護され、児童ポルノによる児童の権利の侵害を決して許さない社会の構築を図り、もって児童ポルノを根絶し、児童ポルノによる被害をなくすることを目的とする。
【解説】
I現在、京都府を含め全国で児童ポルノ事犯が増加傾向にあり、極めて憂慮すべき状況にある。
また、京都は日本を代表する国際的な文化都市として、外国人観光客や修学旅行生をはじめ多くの人々が訪れる場所であり、何よりも日本の歴史と文化の中心地としての責任を果たすため、率先して「児童ポルノを決して許さない」という決意を示していく必要がある。
本条は、この条例が「児童ポルノによる子どもたちの権利侵害を決して許さない社会を構築していくこと」を基本理念とすることを明らかにしたものである。
児童ポルノ」とは、児童の性的虐待の記録であり、児童に対する人権侵害である,と位置づけ、こうした児童ポルノの被害から児童の人権を保護し、被害児童等の救済を図ることを条例の目的とするものである。

(定義)
第2条
この条例において「児童」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び、児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号。以下「法」という。)第2条第1項に規定する児童をいう。
2この条例において「児童ポルノ」とは、法第2条第3項に規定する児童ポルノをいう。
3この条例において「児童ポルノ記録」とは、法第7条第1項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。
【解説】
本条は、第3条以下において用いられる主要な用語の意義を明確にし、解釈上疑義が生じないようにしたものである。
本条第1号で「児童」を「児童ポルノ規制法」と同じ(18歳に満たない者)としたのは、一般的にこの年齢までは身体的及び、精神的に未熟であって、有害な環境や不健全な行為によって特に重大な影響を受けやすいからである。
ちなみに、「児童ポルノ規制法」、「児童福祉法(昭和22年12月l2法律第164号)」、「児童虐待の防止等に関する法律(平成12年5月24日法律第82号)」といった国の法律や、本府の条例である「青少年の健全な育成に関する条例(昭和56年l月9日京都府
例第2号)」等の関係法令においても、18歳未満の者が保護の対象とされており、これらとの均衡も図るものである。
本条第2号では、「児童ポルノ」の定義を「児童ポルノ規制法」第2条に規定されている「児童ポルノ」と同様としている。
ただし、罰則を科す場合は、全ての「児童ポルノ」ではなく、第8条及び第13条に記載したとおり、限定することとしている。
また、この「児童ポルノ」に当たらないものであっても、児童に対する性的虐待の防止という観点から、例えば、衣服を着ている児童の顔や体に精液をかける行為が写った画像など、児童に対するわいせつ行為が写っている画像等については、罰則や禁止規定を設けることはしないが、児童の権利を侵害するものとして所持・保管等しないよう、第10条に記載したとおり、努力義務を課すこととしている。
本条第3号では、「児童ポルノ規制法」第7条第1項に規定されている「児童の姿態を視覚により認識することるできる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録」を「児童ポルノ」と定義づけている。
「電磁的記録」とは、記録媒体に記録された状態にある電磁的情報のことをいう。
具体的な記録媒体としては、磁気ディスク・磁気テーフ・磁気ドラム・フロッピーディスクなどの磁気的方式によるものや、ICカード・ICメモリなどの電子的方式によるもの、また光ディスク(CD-・DvD等)などが含まれる。
「その他の記録」とは、「電磁的記録」に類似はするものの、電子計算機による処理を経ない等の理由により「電磁的記録」には当たらないものをいう。
具体的には、ファクシミリによる送信の際の文書上の記録がこれに当たる。
なお、条例の基本理念及び目的に照らし、条例による規制の対象となる「児童ポルノ」とは、児童ポルノ規制法と同様、実在の児童(児童の生死は問わない)の姿態を視覚により確認することができる方法により描写したものとし、実在しない児童の姿態を描いた漫画やアニメ等の二次元の表現物は児童ポルノに当たらず、条例の規制は及ばない。(規制の対象外となる。)