児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

逮捕されて勾留前の被疑者の逃走罪

 このせいで川崎支部での閲覧が延期になったので、羽田で時間つぶし
 この辺はややこしい。
 通常逮捕後勾留状執行前であれば、単純逃走罪は成立しない。
 もともとの容疑の逮捕状を取り直して追いかけていることになる。

http://mainichi.jp/select/news/20140110k0000m040072000c.html
逃走後に改めて逮捕された容疑者の容疑は、6日に神奈川県警が逮捕した時の容疑と同じで、横浜地検が改めて逮捕状を取り、県警の捜査員が発見現場で執行した。

 勾留されている容疑者・被告か刑務所に収容された受刑者が逃走した場合は逃走罪の対象となる。しかし、容疑者が地検川崎支部から逃げ出したのは裁判所が勾留決定をする前だったため、逃走罪は適用されない。

 容疑者を発見後、速やかに身柄を拘束するため、今回は地検が逮捕状を取り、県警に執行してもらう形を取った。このため、逮捕された容疑者は地検川崎支部に移され検察官の取り調べを受けた。裁判所の勾留決定後、容疑者は県警本部に移され、今後は県警が調べを進める。

刑法
第97条(逃走)
裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。
第98条(加重逃走)
前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
第99条(被拘禁者奪取)
法令により拘禁された者を奪取した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第100条(逃走援助)
法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第101条(看守者等による逃走援助)
法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、一年以上十年以下の懲役に処する。
第102条(未遂罪)
この章の罪の未遂は、罰する。

 「既決未決の囚人」で暗記しています。

刑法
第97条〔単純逃走〕
 既決、未決ノ囚人逃走シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ処ス
第98条〔加重逃走〕
 既決、未決ノ囚人又ハ勾引状ノ執行ヲ受ケタル者拘禁場又ハ械具ヲ損壊シ若クハ暴行、脅迫ヲ為シ又ハ二人以上通謀シテ逃走シタルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
第99条〔被拘禁者奪取〕
 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ奪取シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
第100条〔逃走援助〕
 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ逃走セシムル目的ヲ以テ器具ヲ給与シ其他逃走ヲ容易ナラシム可キ行為ヲ為シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス
 前項ノ目的ヲ以テ暴行又ハ脅迫ヲ為シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
第101条〔看守者逃走援助〕
 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ看守又ハ護送スル者被拘禁者ヲ逃走セシメタルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス
第102条〔未遂〕
 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

条解刑法
P302
単純逃走罪
(ウ)未決の者
被疑者又は被告人として勾留状の執行により拘禁されている者をいう(札幌高判昭28・7・9高集6ー7-874)。少年で勾留に付された者のほか,少年鑑別所に観護措置に付されていた者が少年法45条4号により検察官送致されて勾留とみなされた場合も含まれる。また.同法43条により勾留に代わる措置として観護措置に付されて少年鑑別所に送致された者も含まれる。もっとも,この点に関して,少年法の精神に鑑み,少なくとも逆送決定があるまでは,少年は未決の者たり得ないとする見解がある(注釈(3)101)。
逮捕された者や,勾引状の執行を受けて勾引された者については,次条において本条に掲げる者と別に勾引状の執行を受けた者が規定されていることから,未決の者には含まれないと解される(ポケット248,大コンメ2版( 6)236)

P305
加重逃走罪
1) 主体
前条に規定する者(前条注2参照)又は勾引状の執行を受けた者である。
「勾引状の執行を受けた者」とは,刑訴法の規定する勾引状に限定する必要はなく,広く身体の自由を拘束する令状の執行を受けた者をいう。刑訴法62条に基づき勾引された被告人,刑訴法152条,民訴法194条に基づき勾引された証人,刑訴法135条に基づき勾引された被告人以外の者のほか逮捕状の執行を受けた者も含まれる(東京高判昭33・7・19高集11-6-347)。しかし現行犯逮捕された者,緊急逮捕されて逮捕状が発付される前の者は含まれない。勾引状の執行を受ければ足り,一定の場所に引致され,又は引致された後に留置され,拘禁されたことを要しない。


P308
被拘禁者奪取
2) 客体
法令により拘禁された者である。事実上でなく法令の根拠に基づ
いて拘禁された者をいう。
「拘禁」とは,身体の自由の拘束をいう。長期にわたる継続的な身体の自由の拘束のほか,短期の一時的な身体の自由の拘束を含む。したがって,必ずしも一定の場所に拘禁されている者に限らず,逮捕されて連行途中の者など拘禁のために連行中の者も含まれる。
前2条にいう裁判の執行により拘禁された既決未決の者や勾引状の執行を受けた者に加えて,現行犯逮捕又は緊急逮捕されて令状が発せられる前の者も含まれる。

 もとの逮捕状で行けるんじゃないかという疑問があるので調べておきました。

条解刑事訴訟法
P386
10) 逮捕状の数通発行数通いずれもが正本であり独立して逮捕状としての効力をもつ。しかし, 1通によって逮捕すれば他は当然効力を失う。したがって1通によって逮捕した被疑者が逃走した場合,他の逮捕状で逮捕することはできない。

P385
1) 有効期間
適法に逮捕状による逮捕に着手できる期間をいい,発付の目の翌日
から7日聞を原則とするが,被疑者が逃走中等の事由があるときは, 7日を超えた有効期間を定めることができる(規3∞・142①(6))。有効期間として7日より短い期間を定めることは一般的には許されないが, 7日よりも早く公訴時効が完成するような場合には例外的に許されると解すべきであろう。逮捕状発付後の有効期間の延長は認められない。
新たに逮捕状の諦求をして発付を得,差し替えることになる。
6) 有効期間経過後の逮捕は違法である。したがって,その逮捕を前提として勾留請求をすることも違法である。

高森高徳 Q&A 実例 逮捕・拘留の実際〔第2版〕(2013年 立花書房
Q逮捕状により逮捕した被疑者が引致途中で逃走した場合、その逮捕状で再度被疑者を逮捕することは許されるか。

A同一犯罪事実の再逮捕
逮捕における厳格な時間的制限の潜脱を防守ため、同一犯罪事実に
ついての逮捕は原則として1回しか許きれないが、逮捕の不当な蒸し返しにならない限度で例外が認められる。被疑者が引致途中で逃走した場合には、逮捕の不当な蒸し返しにはならないので、同一犯罪事実につき改めて逮捕状の発付を受けて被疑者を再逮捕することは許される。現行犯逮捕や緊急逮捕の場合には、被疑者の逃走により各逮捕の要件が失われることになるので、それしか被疑者の身柄を拘束する手段はないからである。しかし、被疑者が逃走した場合、直ちに追跡して被疑者の身柄を拘束しなければならず、改めて逮捕状の発付を受けている時間的余裕はないのが普通である。その場合、逮捕状の効力として被疑者の再逮捕が許されるか否かが問題となる。
解説
逮捕状は、捜査機関に逮捕権を付与する裁判の裁判書であり、その効力は逮捕手続が完了するまで継続する。逮捕は、身体の拘束という狭義の逮捕、司法警察員等への引致、勾留までの留置という段階を経るが、どの段階で逮捕手続を完了したといえるかにより、同一逮捕状による再逮捕の許否が決せられる。逮捕という言葉の意義自体からは、逮捕状の効力は狭義の逮捕(捕縛)だけに及び、引致とそれに引き続いての留置は、法が特別に認めたものと解する余地もあり得る。しかし、逮捕は、単にその場で被疑者の抵抗を排除するだけのものではなく、逃走及び罪証隠滅を防止するためのものであるから、一定の場所への引致を前提としない身柄拘束は、逮捕の目的からするとほとんど意味はないし、引致場所が逮捕状の必要的記載事項とされていることからすると、法は、逮捕の概念には引致も含めているものと解される。
これに対し、引致後の留置は、逮捕の概念に当然包含されるとはいえないと考えられる。司法警察員等は、逮捕されて引致された被疑者を受け取った場合、留置の必要がないと思料するときは被疑者を釈放しなければならず、引致後の留置は、司法警察員等が被疑者の弁解を聴いた上で留置の必要があると判断したときに初めて許されるものだからである(刑訴法203条l項)。引致後の留置は、法によって特別に認められた逮捕の付随的な効果と解されるのであり、逮捕状の効力によって許容されるのではない。
したがって、逮捕状は、被疑者を逮捕して引致する権限を付与するものと解すべきであり、引致が完了するまでは逮捕手続は完了していないことになる。設問の場合、被疑者が引致途中で逃走したのであり、引致は完了していないから逮捕手続も完了しておらず、逮捕状はその目的を達していないので逮捕状の効力も継続しているのであって、その逮捕状により被疑者を再逮捕することは許される。
これに反し、被疑者が引致後の留置中に逃走した場合には、逮捕状はその目的を達しており、その効力は失われているから、その逮捕状で再逮捕することはできないと解される。もっとも、法が引致後の留置権限を特別に認めたのであるから、その権限に基づいて被疑者の身柄拘束をなし得ると考えることも可能であるが、法は、あくまで勾留までの一連の手続の中における逮捕の付随的効果として留置権限を認めたのであるから、いったん手続が中断した場合にも被疑者を再拘束できるほどの強力な権限を認めているとは解きれない。この場合は、改めて逮捕状の発付を受けて再逮捕すべきである。