児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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119条3項の審議過程

 コンメンタールの部分執筆を頼まれて、ダウンロード処罰規定の資料がなくて困ってるんですよ。

第百十九条  
3  第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

171 - 参 - 文教科学委員会 - 14号
平成21年06月11日

○政府参考人(高塩至君) インターネットによります音楽、映像作品の違法配信の状況につきましては、今御指摘ございましたように、社団法人日本レコード協会、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会が調査を行っておりまして、その結果は、今次の改正におきまして検討の参考として文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会において報告をされたものでございます。
 これらの調査は、利用者に対するアンケート結果に基づくものでございまして、違法の配信からのダウンロードの件数を網羅的に当然調査したものではございませんけれども、複数年にわたり継続的に行われておりまして、インターネットにおきます違法な状況を知る上で一定の評価できる資料だというふうに考えております。こうした資料につきましては、この著作権分科会の小委員会におきまして委員の方たちの御指摘も踏まえまして、より厳正な推定値となるよう見直しも行ったところでございます。
 こうしたことを踏まえまして、文化庁といたしましては、こうした調査は録音、録画の実態を理解するための一定の適切な内容があるものだというふうに考えまして今回の法改正の参考としたところでございます。
○那谷屋正義君 今回の法律によって、いわゆるユーザー側も違法のものであるということが分かっていてダウンロードしたら法に触れるということになるわけでありますけれども、具体的には特別な罰則等は直接はうたわれていません。
 そういったことの中で幾つか懸念される点があるのではないかということを、これは衆議院の議論でももう指摘をされていますけれども、一つは、インターネット利用そのものが萎縮してしまう可能性があるのではないかというふうに言われています。そういう意味では、そのことはそうであるかないかという見解をお尋ねするとともに、今後やっぱり一定の期間利用者に対するアンケート調査を行うなど状況の把握を行うことが必要ではないかというふうに、文化庁自らが行うことが必要ではないかというふうに思うわけでありますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 今回の改正につきましては、違法に配信される音楽や映像を複製、ダウンロードする行為が正規の配信市場を相当上回っているという状況、こういうのを踏まえまして、現行制度における違法配信者への対処というだけでは、いわゆるアップロードだけの対処では難しい、限界があるということから、ダウンロード行為にも一定のルールの導入が必要という判断に基づいたものでございます。
 今先生から御指摘がございましたように、そうしたことがネット利用の萎縮効果を及ぼすのではないかという御指摘があったところでございますけれども、文化庁といたしましては、そうした影響がないように、今回の制度の趣旨、内容につきまして、文化庁のみならず民間の団体とも官民一体となって制度の周知、広報に努めてまいりたいと思っておりますし、また必要に応じて適切な措置を講じてまいりたいと思っております。
○那谷屋正義君 是非、そのことはもう必要不可欠なことではないかというふうに思うわけであります。
 ところが、こうした制度を設けたときに、これは定額給付金ですとかあるいは裁判員制度も同じでありますけれども、必ず不正請求というふうなものが、そういったものが多発されることが懸念されるわけであります。とりわけ今回のものは違法配信からのダウンロードを行ったという利用者が感じるいわゆる罪悪感というものに付け込むものであるために、より被害が拡大することが予想されるわけであります。
 本法律案の内容を利用者に説明すること以外に、具体的にやっぱりもう少し踏み込んだ措置が必要ではないかというふうに思うわけでありますけれども、そうした予定がおありかどうか、お尋ねをしたいと思います。
○政府参考人(高塩至君) 今先生から、今回の改正を契機にいわゆる本規定を悪用した不正請求の詐欺被害というものが生じるのではないかという御懸念でございますけれども、先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、この制度内容につきまして広く国民へ周知を図る際に、詐欺に関する注意喚起も行っていくことが重要であるというふうに考えております。
 具体的には、今回の法改正の内容につきましては、メディアを通じました広報、それから文化庁のホームページへの今回の法改正内容の解説文の掲載、各種セミナーへの開催、あと学校への資料送付によりまして広く周知を図ることを予定いたしておりますけれども、あわせて、制度を悪用した不正請求等の詐欺に関する注意事項についても広報の中に取り入れて行ってまいりたいというふうに考えております。

180 - 衆 - 文部科学委員会 - 6号
平成24年06月15日
○下村委員 アメリカの土俵の上にのって議論が進まないように、しっかり政府として対応をしていただきたいというふうに思います。
 さて、日本レコード協会の調査によりますと、一年間に違法ダウンロードされるファイルの数は四十三・六億ファイルに上ると推計されております。これは、正規音楽配信のダウンロード数の約十倍のファイルが違法にダウンロードされているという計算になるわけです。
 また、同じく日本レコード協会等の調査によると、違法にダウンロードされているファイルを正規に配信されている音楽の販売価格に換算した場合、約六千六百八十三億円になるというふうに推計されております。
 違法に配信されているファイルの違法ダウンロードは、例えばそれが音楽ファイルの違法ダウンロードであれば、一つには、アーティストの著作権やレコード会社の著作隣接権を侵害する行為であるということ、それから、多くの人に繰り返し行われること、このことによって、音楽産業に多大な損害を与え、ひいてはアーティストが次の作品を世に送り出すことが難しくなるということにもつながるわけでございます。
 こういうことから、自民党公明党は、これから共同提案で、音楽等の私的違法ダウンロードを処罰する規定を整備するための閣法の修正案を提出したいというふうに考えております。
 まず、この修正案に対しては、私的使用目的で、違法に配信されている有償の音楽、映像を違法と知りながらダウンロードする行為を処罰の対象とすることにより、インターネット社会の健全な発展が阻害されるのではないかという懸念が一部示されております。
 インターネット上に著作権を侵害する違法なファイルが次々に配信され、多くの人々がそれをダウンロードするような事態が生じていることについては、憂慮すべきことであるとこれは言わざるを得ないと思います。知的財産立国を掲げる我が国においては、このような事態に適切に対処することが、インターネット社会を発展させる上でも非常に重要であるというふうに考えます。
 そもそも、今回のこの修正案で罰則を科そうとしている、違法に配信されているものであることを知りながら有償の音楽、映像を私的使用目的でダウンロードする行為は、一つには、アーティストの著作権やレコード会社の著作隣接権を侵害する行為であるとともに、二つ目に、多くの人に繰り返し行われることにより、音楽産業に多大な損害を与え、ひいてはアーティストが次の作品を世に送り出すことが難しくなる、こういう行為である。そのようなダウンロード行為が繰り返し行える状況を放置している、そういうことの方がむしろインターネット社会の健全な発展を阻害するということになるのではないかと考えますが、政府の見解をお聞きしたいと思います。
○平野(博)国務大臣 議員は、この関係のものについての議論の経過も十分御理解をいただいていると思っております。
 今、私も、委員から指摘されて、一年間にダウンロードされるファイルの数がかなりの数になるということ、及び、ビジネスベースに換算すると六千億円を超えてくる、こういうことでございます。そういう意味におきまして、委員御指摘のように、私は、やはり、インターネットの、著作物の違法流通に関する権利者の被害というのは深刻な状況にある、こういう認識に立ってございます。
 そういう意味合いにおきましても、平成二十一年の改正法におきましても、私的利用にあっても、違法配信と知りながらダウンロードするという行為は違法としている、こういうことでございます。
 音楽産業発展やインターネット社会の健全な発展のためには、このようなルールがきちんと守られる、こういうことが非常に重要である、かように考えております。
 また、加えて、著作権というのは、過去の歴史から見ましても、非常に、技術の進歩と権利とあるいは保護、こういう観点でイタチごっこのような状況に来ていることも事実でありますから、やはり我々としては、的確に権利者の保護ということをしっかり守っていかなきゃならない、その対応策が重要である、こういうふうに認識しております。
○下村委員 ありがとうございます。
 これから出す修正案でございますけれども、文言が、違法に配信されているものであることを知りながら、有償の音楽、映像を私的使用目的で複製する行為は私的違法ダウンロードということでございますが、解釈次第では、ネット社会全体の検閲につながり、警察の捜査権の肥大化を招く危険があるのではないかということを表明する人たちもおられます。
 さらに、罰則に実効性を持たせようとすると、かなり薄い嫌疑で個々の個人のパソコンを押収できるようにするということになると、それは人々のプライバシー侵害をする度合いが大きいのではないか、こういう危惧を持たれる方々もおられます。
 公権力である捜査機関のネットへの介入の典型として、プロバイダーからアクセスログを停止させることなどが挙げられると考えられますけれども、現在、そのような行為は裁判官の発する令状に基づいて行われる、令状主義ですね。ですから、いきなり入って介入する、個人の自宅に入って回収するということはあり得ないわけでございますし、まして、この修正案においても、令状主義の範囲内にあるわけでありまして、無制限に捜査機関のネットへの介入を認めるものではないわけでございます。令状を要しないというような、介入の性質が変容するものではなくて、今までの令状主義の中できちっとやるものである。
 したがって、捜査機関がネットへ過剰に介入するのではないかという懸念は当たらないというふうに思っていますし、また、薄い嫌疑で個人のパソコンが押収されプライバシーが侵害されるのではないかという懸念も当たらないというふうに我々は思っておりますが、一般論として、警察から見解をお聞きしたいと思います。
○岩瀬政府参考人 お答え申し上げます。
 犯罪捜査は法と証拠に基づいて進められるものでございまして、サイバー犯罪捜査におきましてもこのことは当然のことでございます。
 したがいまして、今御指摘のありましたように、捜索、差し押さえ等、証拠収集を行う場合には、裁判官から発付された令状に基づき行っているものでございます。
 御質問のダウンロードに係るような犯罪というものについて、これがもし新設されまして、警察においてそのような捜査を行う場合にありましても、法と証拠に基づきまして適正捜査に努めてまいりたいと考えております。
○下村委員 それから、ネット上に配信されているファイルは違法なものと適法なものが混在している、そのため、利用者はどれが違法か適法か区別できず、ネット上の表現やネットの利用に萎縮効果をもたらすのではないか、こういう懸念を表明されている方々もおられます。
 今回の修正案においては、故意犯のみ、意図的にわかって犯罪を犯す、こういう故意犯のみを処罰の対象としておりまして、構成要件に該当する客観的事実の認識が必要であります。したがって、ダウンロードしようとする有償著作物等が著作権または隣接著作権を侵害して違法に配信されたものであると知っていることが必要でありまして、配信されているファイルが違法であるか適法であるかの区別がつかない場合については、これは罪に問われないということでございます。
 また、今回これから出すこの修正案では、有償著作物等を公衆に提供し、または提示する事業者に対し、違法に配信されているものであることを知りながら、有償の音楽、映像を私的使用目的でダウンロードする行為を防止するための措置を講ずるよう努めることとなっておりまして、既に一般に浸透しつつあるエルマークの普及等がなお一層進むことが期待されます。
 この事業者の措置に係る規定は、罰則の規定よりも早く、公布の日から施行することとなっており、罰則の規定が施行するまでの間に、利用するサイトが適法か違法かの区別が容易になることが見込まれるところでもございます。
 したがって、適法か違法かの判断にちゅうちょして、ネット上の表現やネットの利用に萎縮効果をもたらすという懸念は当たらないというふうに考えますが、政府の見解をお聞きしたいと思います。

○高井副大臣 デジタル化、ネットワーク化の進展に伴って、著作権法が国民生活に深いかかわりを持つようになってきている。それに加えて、著作権侵害について刑事罰が科される可能性があるということから、著作権法改正に当たっては、著作物の利用に過度な萎縮が生じないように、明確性の原則に十分留意することが必要というふうに思っていまして、今回の改正の検討に当たっても、関係省庁とも協議を重ねて、慎重に検討を行ってまいりました。
 平成二十一年の著作権法改正において、いわゆる違法ダウンロードについて、刑事罰ではないが違法とした。そのときにも、今御紹介いただいた違法サイトを識別するためのエルマークのような取り組みを推進してまいりまして、政府としても、こうした取り組みが広く普及するように今後も支援していきたいと思っております。

○下村委員 同様の罰則規定が諸外国では既に実施されておりますが、罰則規定、どんな国でどんなことがあるのか。そして、このことによって罰された事例があるのかどうか。諸外国の例をちょっと挙げていただきたいと思います。
○河村政府参考人 違法な配信からの私的な複製行為、いわゆる違法ダウンロードに対しましては、アメリカですとかドイツなどでは刑事罰の対象としておりますが、英国では、現在の我が国と同様に、違法ではございますが刑事罰の対象とはなっておりません。
 刑事罰の対象としている国における法定刑の定め方は、一律ではないのでございますけれども、私ども今把握しているところでは、例えば、アメリカの場合には、一年以下の懲役、十万ドル以下の罰金またはその併科ということとされ、ドイツの場合には、三年以下の自由刑、または、額は定められておりませんけれども、裁判所が決する所定の額の罰金を支払う仕組みというふうになっているものと承知をいたしております。
 これらに基づいて現実に刑事罰の対象となった事例は、私ども、今のところは承知をいたしておりません。
○下村委員 抑止力によって業界が健全に発展されますよう、また、ネット社会において、正常な中で、我が国において発展がされますように、我々は、同時にそれを目指しながら修正案を出していきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上で終わります。ありがとうございました。
・・・・・・・・・・・・・・
○宮本委員 大臣、幾らすぐれた録音、録画の機械があっても、肝心のコンテンツ、音楽や映像がなくなれば、せっかくの機器も使われることはないんです。日本の音楽や映像文化を支えてきたクリエーターに対する対価の還元をどうするかというのは重大問題であって、もっと正面からメーカーにはっきり迫るべきだと私は思うんですね。そうでなければ日本のコンテンツ産業は死滅してしまう。このことは本当に重大なことだと思います。
 ところが、事もあろうに、メーカーに対しては腰が引けて要求しないまま、今度はユーザーを刑事罰でおどしつけて問題を解決しようという動きが起こっております。
 本日、政府提出の著作権法改正案に対して、自民、公明両党から、第百十九条に三項を加え、違法に配信された音楽や映像などを、私的使用目的であってもダウンロードしたユーザーに、二年以下の懲役もしくは二百万円以下の罰金、またはそれを併科するなどという重大な修正案が提案されることになっております。我が党は、これには断固反対です。
 そもそも、違法ダウンロードに対する刑事罰導入に関しては、日弁連からも厳しい反対の意見書及び会長声明が発出されております。個人の私的生活領域におけるダウンロードに対して刑事罰を科そうとする議論を是認すれば、国家権力が私的領域に直接入り込む余地を与えることになるものであるとまで日弁連は警告しております。そのような重大な内容の修正案を、しかも質疑終局後に提出するなどということは、言語道断だと言わなければなりません。
 そこで、お聞きしますけれども、そもそも今回問題になっている私的領域における違法にアップロードされた音楽、映像などのダウンロードについては、わずか三年前の二〇〇九年の法改正で初めて違法とされたものであります。それ以前は、私的領域については違法ですらなかったですね、文化庁
○河村政府参考人 平成二十一年の改正により初めて、私的使用目的であっても、違法配信と知りながら音楽、映像をダウンロードする行為が違法とされたものでございます。
○宮本委員 この法改正が施行されたのは二〇一〇年一月一日ですよ。ですから、そもそもわずか二年余り前までは、私的領域におけるダウンロードは基本的には違法ですらなかったわけです。
 これを初めて違法とした三年前の改正時にも、この問題をめぐって大きな議論がございました。しかし、このときは我が党も、違法ダウンロードが正規の配信事業を上回る規模になり、正規コンテンツの流通に支障を来していること、そして、このような状況が放置されることはゆゆしき事態であり、日本のコンテンツ産業の成長が阻害される懸念があることから賛成の立場をとりました。しかし、それはあくまで、罰則規定の導入など、国民の基本的人権を脅かすような内容がそこに含まれていなかったからであります。
 平成二十一年改正のときには、政府自身がそのことを力説していたと思うんですね。当時の塩谷文部科学大臣は、この二〇〇九年の改正案の法案趣旨説明で、「なお、この第三十条の改正については、違法なものと知りながら行った場合に限るとともに、罰則は科さないこととしております。」と述べております。
 確認しますが、大臣、このときなぜ罰則を科さないことにしたんですか。
○平野(博)国務大臣 そもそも論のところについて、私、全てを承知いたしておりませんが、先ほど来から申し上げていますように、日進月歩で技術の進展がある、特に、ネットの社会を含めて、いろいろな意味で技術進歩が日進月歩だ、こういう背景が一つ。もう一つは、やはり何をおいても大事なことは、権利者の保護ということをすることによってこの世界が導かれていく、さらに発展をしていくというのが基本であろうというふうに思っております。
 そういう中で、平成二十一年の改正時はどうだったんだ、こういう御指摘でございますが、平成二十一年の改正の際には、私的利用でも違法配信と知りながらダウンロードすれば違法、こういうふうにしてございます。
 では、刑事罰をなぜかけなかったのか、こういうことでございますが、個々の人の違法ダウンロードの事態は非常に軽微である、こういう判断をその当時されたんだろうというふうに私は思っております。
 もう一つは、どういうふうにその違法をトラップするかというところの実効性がどうなのか、こんなことも御議論されたように思います。
 しかし一方では、ネット上がより発展すればより広範に広がっていくということも事実だ、こういうふうに思っておりますし、また、検証していく部分というのはなかなか難しいということはありますが、やはり刑事罰をかけていくということによって抑止的効果が大いに期待できるのではないか、こういうふうな御意見もあったと承知をいたしておりまして、そういう両方ある中で、二十一年の改正のときにはそうしなかった、こういうことだと私は理解しております。
○宮本委員 このときは、違法化ですけれども、罰則規定をつけなかった、軽微だということでありますけれども、それでも、民主党の議員も当委員会で、いつ損害賠償請求が送られてくるかわからないというユーザーの不安にどう応えるのかといった議論を相当詳しくしております。
 このとき、高塩文化庁次長は、権利者団体がいきなりその利用者に対して損害賠償請求を行うようなことは基本的にないと答弁し、プロバイダー責任制限法におきましても、サイト運営者に対するダウンロードの個人情報開示の手続というものはございませんので、ダウンロードを行う利用者を特定するということは困難だと述べております。
 その後、何か事情が変わったのか、文化庁、お答えいただけますか。

○河村政府参考人 御指摘の点につきましては、事情の変更はないものと承知をいたしております。
○宮本委員 事情の変更はないんですね。
 それで、このプロバイダー責任制限法、正式には特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律という長い名前の法律でありますけれども、これを、二〇〇一年十一月六日、参議院総務委員会で審議した際、我が党から質問に立ったのはほかならぬ私でございました。
 きょうは総務省にも来ていただいております。
 私は、二〇〇一年十一月六日、参議院総務委員会でのプロバイダー責任制限法案の質疑で、インターネットでいつ、どんなサイトにアクセスしたかといったことは個人のプライバシーにかかわる問題であり、法律上も電気通信事業者はそれを通信の秘密として守る責務を負っていると指摘した上で、電気通信事業者がみだりにそれを開示することは許されないばかりでなく、それを開示させる法令をつくろうという場合でも、憲法上の通信の秘密の適用から除外するに足るだけの十分な理由がある場合に限られるのでなければ、憲法違反となると厳しく指摘をいたしました。
 それに対して、当時の片山総務大臣総務省も、発信者情報開示請求権の要件を厳格に定め、通信の秘密をいささかも侵すことのない運用に努めると繰り返し答弁したと覚えておりますが、間違いないですね。
○原口政府参考人 先生おっしゃいましたとおり、当時、宮本委員から御質問いただきまして、総務大臣、総合通信基盤局長から、一点目といたしまして、いわゆる通信の秘密につきましては、憲法上の基本的人権として保障されていること、また、インターネット上のいわゆる電子掲示板への接続の記録も、これは通信の秘密として保護の対象となること、それから、いわゆるプロバイダー責任制限法におきまして、発信者情報の開示請求の要件については非常に厳格に定められていること、それから最後に、プロバイダー責任制限法の施行に当たっては、その趣旨が十分に理解され、適切な運用が図られるように、必要に応じて関係者に周知徹底を図ること、このように答弁させていただいたと承知しております。
○宮本委員 相当厳密な議論をやったんですね。
 それで、今既に罰則が付されているアップロードという行為、これはもちろんプロバイダーのところでそのアドレスを特定するということは可能であります。しかし、ダウンロードしたかどうかということをプロバイダーが特定するというのは不可能でありまして、やろうと思えば全てのアクセスを手当たり次第に調べてみる必要が出てくるわけであって、アクセスした全てのIPアドレスを開示請求するということは許されないことであって、開示請求を受けたところを一つ一つ踏み込んでパソコンの中を調べてみるということは、とんでもない騒ぎに、とんでもない話になるわけであって、できようがないわけなんですね。
 ですから、そういう点でも、こういうものに罰則をかけるというのは、技術的にも、そして憲法上も許されないということを申し上げなければなりません。
 それで、こういう議論が文化審議会著作権分科会でもやられてきたと思うんです。文化審議会著作権分科会では、昨年、著作権法第三十条の見直しの議論がされ、関係者からもヒアリングをされてきたと聞いております。
 そこで、私的違法ダウンロードに罰則をかけるというようなことが関係者間で合意されたという事実がございますか。


○河村政府参考人 昨年度、文化審議会では、著作権法第三十条、私的使用のための複製の規定でございますが、この規定全般について関係者から広くヒアリングを行い、検討課題を整理した、そういう段階でございます。

○宮本委員 合意はできていないですね。

○河村政府参考人 検討課題を整理したという段階ですから、まだそうした議論をしているということではございません。

○宮本委員 文化審議会著作権分科会でも合意に至っていない、こういうものであります。
 違法ダウンロードが動画投稿サイトで多いと言われております。そこで、その実態について聞くんですが、動画サイトは、音楽の利用について権利者と包括的に許諾を得ているサイト、具体名を挙げるとニコニコ動画など、それと、放送局などの公式ページと違法にアップロードされた動画が混在するサイト、具体名を挙げますとユーチューブなどがあると思うんですが、これは事実ですね、文化庁

○河村政府参考人 お話しのように、動画サイトの中には、運営事業者とJASRAC等の著作権等管理事業者やレコード製作者との間で包括的な利用許諾契約を締結している例もある一方で、適法なものと違法にアップロードされた動画が混在しているサイトも存在しているというふうに承知しております。

○宮本委員 動画投稿サイトにある音楽や映像には、適法にアップロードされたものと違法なものが混在しているというのが今答弁にあったように実態なんです。
 これでは、音楽、映像のダウンロードが果たして違法な行為に当たるのかどうかを理解できないままに行われる場合も多く、処罰の対象にすることは過剰な対応だと言わざるを得ないと思います。
 さらにお伺いしますが、放送局などの場合、その多くが無償で提供するサイトと有償で提供するサイトの両方を運営しているほか、映画、音楽なども、それぞれの販売目的に応じて、期間を限定して無償で提供したり、一部分を無償で提供したりする、そういう実態があると思うんですけれども、これも、文化庁、事実ですね。

○河村政府参考人 お尋ねの点につきましては、放送局が無償または有償で放送番組等の動画を提供するサイトを運営している例や、映画製作者、音楽事業者が、販売促進等の目的に応じて、期間や提供部分を限定するなどして無償で提供している例があるというふうに承知をいたしております。

○宮本委員 有償と無償の区別をつけることさえ難しいというのが実態です。こんな状態では、ダウンロードすれば処罰の対象となる音楽、映像なのか、利用者が事前に判別するということは困難だと言わざるを得ないと思います。何が罪になるのか明確になっていないものを刑罰を定めるというようなことは、許されるものではありません。
 そもそも、新たな刑罰を科す場合、賛否はどうあれ、当然、国会において慎重な質疑がなされ、その立法事実、構成要件等を明らかにしなければなりません。とりわけ、この修正案が提起している違法ダウンロードの処罰化は、今や多くの国民が利用するインターネット利用に大きく影響するものであります。
 修正案提案者には、そのような修正案の提案は取りやめること、また、そのような修正案に何の審議もなく賛成するというようなことは、くれぐれも思いとどまることを強く訴えて、私の質問を終わります。

○石毛委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――

○石毛委員長 この際、本案に対し、池坊保子さん外四名から、自由民主党無所属の会及び公明党の二派共同提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。池坊保子委員。
    ―――――――――――――
 著作権法の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――

池坊委員 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表いたしまして、その趣旨及び内容の概要を御説明いたします。
 本修正案は、違法に配信されているものであることを知りながら、有償の音楽、影像を私的使用目的で複製する行為、いわゆる私的違法ダウンロードについて罰則を設けるとともに、私的違法ダウンロードの防止に関し、国民に対する啓発、関係事業者の措置などについての規定を追加するものであります。
 その内容の概要を御説明いたします。
 まず、私的違法ダウンロードに対する罰則を設けることといたしました。
 すなわち、一、私的使用の目的をもって、二、有償著作物等の著作権または著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音または録画を、三、みずからその事実を知りながら行って著作権または著作隣接権を侵害した者は、四、二年以下の懲役もしくは二百万円以下の罰金に処し、またはこれを併科することとしております。
 また、私的違法ダウンロードの防止の重要性についての国民の理解を深めることが重要であると考え、国及び地方公共団体に対し、私的違法ダウンロードの防止に関する啓発、未成年者に対する教育の充実を義務づけることといたしました。
 その他、関係事業者の措置に関する規定、法律の施行後一年を目途とする検討条項等を設けることとしております。
 以上が、修正案の趣旨及び内容の概要でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○石毛委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――

○石毛委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。宮本委員。

○宮本委員 私は、日本共産党を代表して、内閣提出の著作権法の一部を改正する法律案に賛成、自民党公明党共同提出の修正案に反対の立場から討論します。
 内閣提出の法律案は、写り込みなど、ある程度事例を限定した上で、現行では形式的には違法となる行為を容認しようとするものですし、国会図書館が所有する電子化資料の利用拡大など国民の利便性が向上する面もあり、賛同できるものです。
 これに対し、自民党公明党共同提案による修正案は、内閣提出の法律案とは全くかかわりがない違法ダウンロードを処罰化するものです。
 まず、このような国民の基本的人権にかかわる重大な内容を含む修正案を政府案の質疑終局後に提出するという委員会運営を強引に進めた修正案提案者及び民主党に対して厳しく抗議します。
 現在、動画投稿サイトやファイル交換ソフト等を通じて違法にアップロードされたコンテンツが簡易に無料で入手できる状況にあり、正規コンテンツの流通に支障を来していることはもちろん問題です。しかし、その対処は処罰化ではなく、まずはインターネット上にある違法にアップロードされたものの削除などの対策のさらなる強化であるべきであって、違法ダウンロードの処罰化ではありません。
 そもそも、この問題は個人のインターネット利用のありようにかかわる私的な領域であり、ダウンロードを行っているのは未成年者を含む若者が多く、その影響も考慮し、慎重に検討されなければなりません。
 著作権法制のあり方を検討する文化庁文化審議会著作権分科会では、昨年九月に、違法ダウンロードの処罰化については賛否両論の論点整理をまとめているのみで、ことし二月の審議経過報告では、今後、適宜検討するとされているにすぎず、関係者間の合意はありません。
 また、現在、ダウンロード違法化の施行からわずか二年余りが経過したにすぎず、わずかな期間での処罰化は国民の理解を得られません。国民的な合意もないまま、関係者間の議論の途上で、審議会での議論さえ踏まず、罰則を導入するなどは言語道断です。
 違法ダウンロードが行われているとされる動画投稿サイトには、音楽の利用について権利者と包括的に許諾を得ているサイトと、放送局などの公式ページと違法にアップロードされた動画が混在するサイトがあり、ユーザーにとって、インターネット上にある音楽、映像が違法にアップロードされたものかどうかを事前に判断することは困難です。
 また、修正案は有償であるもののみを対象としていますが、放送局などの場合、その多くが無償で提供するサイトと有償で提供するサイトの両方を運営しているほか、映画、音楽などもそれぞれの販売目的に応じて期間を限定して無償で提供したり、一部分を無償で提供したりもしています。有償か無償かを見分けることも容易ではありません。
 さらに、処罰する場合、誰がどのようにして違法ダウンロードを行ったのかを証明、把握する必要が生じます。日常的に権利者、捜査当局が個人のインターネット利用の内容、音楽、映像のダウンロード状況を監視、把握することが予想されます。親告罪著作権者の告発により捜査が行われるといっても、臆測や疑惑の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険を排除できません。
 このような問題の多い修正案をまともな審議抜きで採決することの不当性を厳しく指摘して、私の討論を終わります。

○石毛委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――

○石毛委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、池坊保子さん外四名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の委員の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕

○石毛委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の委員の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕

○石毛委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○石毛委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――

○石毛委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時十二分散会

180-参-文教科学委員会-6号 平成24年06月19日

平成二十四年六月十九日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十九日
    辞任         補欠選任
     蓮   舫君    はた ともこ君
     山本 博司君     長沢 広明君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         野上浩太郎
    理 事
                鈴木  寛君
                那谷屋正義君
                橋本 聖子君
                水落 敏栄君
    委 員
                神本美恵子君
                斎藤 嘉隆君
                谷  亮子君
               はた ともこ君
                藤谷 光信君
                森 ゆうこ君
                蓮   舫君
                石井 浩郎君
                上野 通子君
                熊谷  大君
                義家 弘介君
                山本 博司君
                柴田  巧君
                自見庄三郎
                横峯 良郎君
   衆議院議員
       修正案提出者   河村 建夫君
       修正案提出者   下村 博文君
       修正案提出者   馳   浩君
       修正案提出者   松野 博一君
       修正案提出者   池坊 保子君
   国務大臣
       文部科学大臣   平野 博文君
   副大臣
       文部科学副大臣  高井 美穂君
   大臣政務官
       外務大臣政務官  加藤 敏幸君
       文部科学大臣
       務官       神本美恵子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        古賀 保之君
   国立国会図書館
       館長       大滝 則忠君
   政府参考人
       警察庁生活安全
       局長       岩瀬 充明君
       法務大臣官房審
       議官       岩尾 信行君
       文部科学省生涯
       学習政策局長   合田 隆史君
       文化庁次長    河村 潤子君
   参考人
       慶應義塾大学
       学院メディアデ
       ザイン研究科教
       授        岸  博幸君
       日本弁護士連合
       会事務次長
       弁護士      市毛由美子君
       日比谷パーク法
       律事務所代表弁
       護士       久保利英明
       一般社団法人
       ンターネットユ
       ーザー協会代表
       理事       津田 大介君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
参考人の出席要求に関する件
    ─────────────

○委員長(野上浩太郎君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 著作権法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、警察庁生活安全局長岩瀬充明君外三名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(野上浩太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────

○委員長(野上浩太郎君) 著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。平野文部科学大臣。

国務大臣平野博文君) おはようございます。よろしくお願いいたします。
 この度、政府から提出をいたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を説明申し上げます。
 我が国の著作権制度については、これまでも逐次整備を進めてまいりましたが、文化芸術立国、知的財産立国の実現に向けて一層の充実が必要となっております。
 この法律案は、近年のデジタル化、ネットワーク化の進展に伴い、著作物等の利用態様が多様化しているとともに、著作物等の違法利用、違法流通が広がっていることから、著作物等の利用の円滑化を図るとともに、著作権等の適切な保護を図るため、必要な改正を行うものであります。
 次に、この法律案の内容の概要について御説明を申し上げます。
 第一に、いわゆる写り込み等に係る規定の整備を行うものであります。
 著作権者等の利益を不当に害しないような著作物等の利用であっても形式的には違法となるものについて、著作権等の侵害とならないことを明確にすることにより、著作物等の利用の円滑化を図るため、写真の撮影等の対象として写り込んだ著作物等の利用、著作権者の許諾を得るための検討等の過程で必要と認められる利用、技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用、情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用について、権利者の許諾なく行えるようにするための措置を講ずるものであります。
 第二に、国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信に係る規定の整備を行うものであります。
 国立国会図書館の有する電子化された資料を広く国民が有効に活用できるようにするため、国立国会図書館が電子化された資料を公立図書館等に対して自動公衆送信すること、また、公立図書館等において、その利用者の求めに応じ、送信された資料の複製物を一部提供することについて、権利者の許諾なく行えるようにするための措置を講ずるものであります。
 第三に、公文書等の管理に関する法律に基づく利用に係る規定の整備を行うものであります。
 公文書等の管理に関する法律では、国立公文書館等の長は、行政機関等から移管された歴史資料として重要な公文書等について、適切な記録媒体により永久に保存しなければならないこと、また、利用の請求があった場合にはその写しの交付等をしなければならないこととされております。
 このため、国立公文書館等の長や地方公共団体等の設置する公文書館等の長が公文書等の永久保存や写しの交付等を行うに当たっての著作物等の利用について、権利者の許諾なく行えるようにするための措置を講ずるものであります。
 第四に、技術的保護手段に係る規定の整備を行うものであります。
 今日では、DVD等が広く普及しておりますが、このDVD等に用いられている暗号型技術を回避するプログラム等が出回っているため、こうしたプログラム等が規制の対象となるよう、DVD等に用いられている暗号型技術を技術的保護手段の対象に加えることとしております。
 なお、この法律は、一部を除いて平成二十五年一月一日から施行することとし、所要の経過措置を講ずることとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いをいたします。
 以上でございます。

○委員長(野上浩太郎君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員池坊保子君から説明を聴取いたします。池坊保子君。

衆議院議員池坊保子君) ただいま議題となりました著作権法の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正部分につきまして、その趣旨及び内容の概要を御説明いたします。
 衆議院における修正により、違法に配信されているものであることを知りながら、有償の音楽、映像を私的使用目的で複製する行為、いわゆる私的違法ダウンロードについて罰則を設けるとともに、私的違法ダウンロードの防止に関し、国民に対する啓発、関係事業者の措置などについての規定を政府提出法律案に追加することといたしました。
 その内容の概要を御説明いたします。
 まず、私的違法ダウンロードに対する罰則を設けることといたしました。
 すなわち、一、私的使用の目的をもって、二、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、三、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者は、四、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとしております。
 また、私的違法ダウンロードの防止の重要性についての国民の理解を深めることが重要であると考え、国及び地方公共団体に対し、私的違法ダウンロードの防止に関する啓発、未成年者に対する教育の充実を義務付けることといたしました。
 その他、関係事業者の措置に関する規定、法律の施行後一年を目途とする検討条項等を設けることとしております。
 以上が、本法律案の衆議院における修正部分の趣旨及びその内容の概要でございます。
 何とぞ、御審議の上、御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

○委員長(野上浩太郎君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

森ゆうこ君 おはようございます。
 久しぶりに質問をさせていただきますけれども、今回の改正に関しましては、利用の拡大を図るために様々な改正がされるわけでございます。そういう意味では、著作権を守りつつ、しかし一方、利用拡大を図るということで、そのことによって更に知的財産立国という方向へ進んでいくものということで、政府提出の法案に対しては、私は、当然のことながら、提出時の責任者でもございましたので、是非成立を願うところでございます。
 今回の改正におきまして、利用規定が様々提示されているわけでございますけれども、条文を読みましても、やはりなかなか一般には分かりにくいというふうな御指摘も既にございます。分かりやすく周知すべきではないかと思いますし、その準備も進んでいるというふうに思いますので、そのことについてまず御答弁をいただきたいというふうに思います。

国務大臣平野博文君) 森さんとこういう立場で質疑をするとは思ってもいなかったわけですが、改めて、この法案について、実質その当時副大臣としていろんな御指摘に対する案文を考えていただいておりましたから、もう言わずもがなでございますが、改めて、御質問でございますから、御答弁をしたいと思います。
 今回、特に写り込み等の規定について、条文的にはどこまでなのかということが非常に分かりにくい、こういうことで、分離が困難であるといった、そういう言葉でありますとか、軽微な構成部分といった言葉があるので、具体的にどういう場面を想定をしているのか分かりにくいと、こういう指摘に対して私どもとしては、より具体的な内容を国民に理解をいただく、こういう観点で、この法律を通していただいた後に、その趣旨や要件、改正法が本当に適用されない等の具体的事例を示した資料を作成し、可能な限り国民に分かりやすく説明をしてまいり、周知を徹底していきたいと、かように考えております。

森ゆうこ君 ありがとうございます。
 今回の規定の改正に限らず、この著作権の問題というのは、なかなか条文を見ても理解をしづらいところが多々ございます。そういう意味で、国民の皆さんが、この著作権を擁護する、権利を擁護するということと同時に、その例外規定として許されている利用の拡大ということについて更に理解が深まるように、分かりやすい周知徹底に御努力を更にいただきたいというふうに思います。
 今回、様々な改正がございますけれども、衆議院の方でもいろいろ御指摘があったところでございますが、障害者に関して少し伺いたいというふうに思います。
 特にICT技術の活用というのは、障害者の皆さんにとって非常に福音をもたらすといいますか、何と言ったらいいんでしょうか、パワードスーツといいますか、障害者の皆さんの持っている力を拡大して、例えば相手とコミュニケーションをすることがなかなか難しい、自分の意思を伝えることが難しいという障害者の皆さんでも、技術を利用してそういうことが可能になるということを特に特別支援学校などで私も視察をさせていただいて痛感したところでございます。
 障害者の情報アクセス権が保障されるように録音図書等が活用される環境をきちんと整備をしていく必要があるというふうに思いますけれども、その点について御答弁をいただきたいというふうに思います。

国務大臣平野博文君) 今、森先生から御指摘がありましたように、インターネットの進展あるいは携帯情報端末等の普及に伴い、障害者の権利に関する条約をめぐる状況等を踏まえつつ、障害者における情報の格差を解消していく、また解消していかなきゃならないと、こういうことは極めて重要でございます。
 このため、これまでも著作権法を逐次改正する中で障害者のための自由利用の範囲を拡大をしてまいりました。特に平成二十一年度の改正におきましては、今、森先生から御指摘ございましたように、視覚・聴覚障害だけでなく発達障害等の方々にも広く広げる、こういうこと、また録音図書の作成主体として、ボランティア団体についても法人格の有無にかかわらず文化庁長官の指定により可能にすると、こういうことでやってきたわけであります。実際、これまでNPOや法人格のないボランティア団体、翻訳グループ等を十五団体指定しており、こうした指定を通じ幅広く録音図書の作成が行われるようにしてまいっております。
 今後、更に平成二十一年度の改正を活用した録音図書等が広く利用されるように進めるため、関係団体に対し改正法の内容をより一層周知をしてまいりたい、関係者間の連携協力を推進していくことが重要であると思っておりますので、御指摘を含めて前向きにとらまえてまいりたいと、かように考えています。

森ゆうこ君 ありがとうございます。
 今大臣からおっしゃっていただきました障害者の皆さんを支援する、そのようなグループの皆さんの力を活用して、それをネットワーク化して、更に障害者の皆さんの情報アクセス権が保障されるように、そして情報格差を是正するようにお取り組みをいただきたいというふうに思います。
 政府提出法案については、そもそも野党の皆さんも元々賛成であるというふうに伺っておりました。しかし、衆議院の方で違法ダウンロードの刑事罰化について、今修正案の御説明があったわけでございますけれども、閣法、内閣提出法案の修正という形で提出をされました。しかし、この法案に関しましては、これまでも議員立法という形で準備がされてまいりました。けれども、急に修正案ということで提出をされたわけでございます。
 閣法の修正案ということではなくて、やはり議員立法で出すべきであったというふうに私は考えておりますけれども、なぜ議員立法ではなく修正案という形で御提出をされたのでしょうか。

衆議院議員池坊保子君) 違法ダウンロードの刑事罰化は、アーティストの著作権などを保護することに加え、音楽文化、映像文化の振興、音楽産業、映像産業の健全な発展なども目的とするものです。そのために、著作権等の適切な保護に資するために提出されている内閣提出法案に付加していただきたい内容として、議員立法ではなく、内閣提出法案の修正案として提出したところです。
 私は、本来は、修正案ではなくて、閣法にこれが入ってほしいというふうに考えておりました。先ほど大臣がおっしゃいましたように、文化芸術立国そして知的財産立国の実現を目指すならば、やはり私は文化芸術に携わっている人への保護というものも必要なのではないかと思います。
 私は伝統文化に携わっておりますけれども、今まで文化芸術は国の支援なくして自助努力で大方やってまいりました。だけれども、このITなどが進んでまいりますと、もう自助努力だけではやっていくことができなくなりました。私は、国は最低限の文化芸術を保護するそうした法律を作ってほしいというふうに思っておりましたので、本来ならば、私は、二十一年ですか、作られましたときにもきっちりと刑罰を付けるべきではあったが、この中に、修正案にしなければならなかったことをむしろ私は残念に思っているぐらいで、そのために修正案にさせていただきました。これは文化庁が閣法にしてほしかったと私は願っております。

森ゆうこ君 今そういうお話なのでございますけれども、じゃ、前回改正の際、これは違法ダウンロードということが規定をされたわけでございます。要するに、著作権者が認めていない著作物についてのダウンロードについては違法であるというふうにされたわけでございますが、前回改正の際に刑事罰化は見送られたわけですけれども、その理由を教えてください。

衆議院議員池坊保子君) ダウンロードが違法であるという、こういう私は意識が少なかったのではないかと思うんですね。国民の、私は、段階的に……(発言する者あり)これ、なさるの、ごめんなさい。つい熱が入りました。

大臣政務官(神本美恵子君) 森委員、副大臣のときに御一緒に私もこの法案を担当してまいりましたのでもう重々御承知のことかと思いますが、改めて御確認の御質問だと思います。
 平成二十一年の著作権法改正によって、違法配信と知りながらダウンロードする行為は違法とされた、しかしこれが刑事罰化されなかったのはなぜかという御質問でございます。
 一つは、個々人の違法ダウンロード自体は軽微であること、二つ目に、家庭内で行われる行為についての規制の実効性の確保が困難であることなどから、刑事罰の対象とされなかったものでございます。
 このほか、平成二十一年法改正前に文化審議会において実施された意見募集では、利用者保護の観点から、特に未成年者である利用者に対する適切な保護や指導を行うことについて配慮すべきとの意見も寄せられたところでございます。また一方では、個々人の行為は軽微とはいえ、ネット上では違法複製物が瞬時にかつ広範に拡散する、また、実効性の確保が困難とはいえ、刑事罰化によって一定の抑止効果が期待できるのではないかというようなことから、刑事罰化するべきとの意見があることも承知をしております。

森ゆうこ君 説明していただくまでもなく、皆さん御存じのとおりでございます。青少年を含め、広く一般の国民がその対象となる新たな刑事罰の導入に、私はもう慎重にも慎重を期するべきであるというふうに考えておりまして、ちょっと熱が入りましたと、池坊先生のお考えも分かるんですけれども、私は、この刑事罰化、現時点における刑事罰化については反対でございます。
 それでは、文科省にもうちょっと伺いたいんですが、前回改正以降、違法ダウンロード防止のために対策が取られてきたということなんですけれども、でもまだ不十分でございますし、特に青少年のICT教育を充実させる必要があると考えますけれども、その点についてお答えをいただきたい。
 そして、エルマークの普及また違法アップロードの取締りの状況はどうなっておりますでしょうか。ダウンロード、何億件もあるわけですから、それは法の実効性という観点からしても、むしろアップロードについての取締りをきちんと行うべきではないかというふうに考えますけれども、その状況はいかがでしょうか。
 あわせて、前回の改正、ダウンロードの違法化について、この適用実態をどのように把握しているのか。前回の改正の結果、それがどうなっているのかという実態把握をしないまま拙速に刑事罰化ということは極めて拙速であるというふうに考えますが、その適用実態はどのように把握していらっしゃるでしょうか。

副大臣高井美穂君) 一点目のICT教育に関してでございますけれども、森先生が本当に率先して副大臣時代から取り組んでこられてきたことで、情報化の進展に応じて、情報モラル、またメディアリテラシー情報リテラシーという青少年に対する情報教育というのは本当に充実は大事だと思っておりますし、本当に森前副大臣がやってこられたとおりだと思っています。
 学習指導要領において、小中高の学校の各教科通じて知的財産の保護などの情報モラルを身に付けることや、またコンピューターそれから情報通信ネットワークなどの情報手段を適切に活用するための学習活動の充実というものを図りました。そして、文部科学省総務省、関係団体等が連携して、子供たちのインターネットの安心、安全な利用に向けた講座、e―ネットキャラバンというものなどを実施をしたり、保護者、子供、幅広い年齢層を対象とした啓発活動もやっておるところでございます。
 引き続き、情報教育に向けた取組について推進をしてまいりたいと思います。
 あと、違法アップロード取締りの状況に関してですが、数字的なものも含めてちょっと政府参考人の方から答えさせます。

○政府参考人(河村潤子君) 平成二十一年法改正で違法ダウンロードの規定が設けられました後の幾つかの状況、事実関係を申し上げたいと存じます。
 一つは、違法サイトを識別するためのエルマークというものをサイトに付けるということが行われておりますけれども、二十四年五月九日時点で二百五十四社、千四百七十サイトがこのエルマークの表示をいたしております。これは、平成二十一年四月、およそ三年前の時点では百八十社の千百三十三サイトでしたので、増加傾向にあるということでございます。
 それから二つ目に、インターネットを利用した著作権法違反の検挙件数と、それからアップロード検挙件数でございますが、警察庁によりますと、インターネット利用著作権法違反事件の検挙件数は平成二十三年に四百九件、そのうちいわゆる違法アップロードの検挙件数が二百七十八件と聞いております。
 また、平成二十一年の法改正で設けられましたこの違法ダウンロード規定の適用状況、これによりまして民事訴訟が提起されたような例があるかという点についてでございますけれども、関係団体からはこの規定によって民事訴訟を行われた例は今のところないというふうに聞いております。

森ゆうこ君 まだ前回の改正の効果を十分に活用するというところまでは行っていないということでございます。
 修正案提案者に伺いたいんですけれども、前回の改正で、この刑事罰化ということについては、利用者保護の観点からこれは慎重にと、様々な懸念があるということで見送られたわけですけれども、今の報告のように、前回改正の適用実態というものもまだまだ不十分な状況。そういう中で、前回改正で見送られた刑事罰化を実施する環境が整った、あるいは整いつつあるということで、何というんでしょうか、刑事罰化、今回提出されたというふうに思うんですけれども、その具体的な根拠を教えていただけますか。

衆議院議員池坊保子君) 改正著作権法の施行後は、関係省庁や業界団体の周知もあって、違法に発信されているものであることを知りながら、私的使用目的のダウンロード行為が違法とされたことについての認識は、私は定着しつつあるのではないかと思います。しかしながら、そのような中にあっても、認識の広がりとは別に、改正著作権法の施行が違法発信、違法ダウンロードを通じた違法な音楽等の流通量の減少に与えた効果については限定的であるとされておりますから、それらのことを考えますと一層の対策を講ずる必要があると思います。
 この修正案は、そうした状況を踏まえ、アーティストの著作権などの保護に加え、音楽文化の振興、音楽産業の健全な発展なども目的として、関係事業者に対し、違法に発信されているものであることを知りながら有償の音楽、映像を私的使用目的でダウンロードする行為を防止するための措置を講ずる努力義務を課すとともに、こうした行為に対する罰則を設けようとするもので、じゃ、どのような環境整備がなされてきたのか、それは刑罰化するに足りる条件がそろったのか具体的に示せということではございますが、まずは、私が申し上げたいのは、二十一年まではダウンロードは違法だよという意識が国民の中に私はなかったというふうに思います。これを二十一年に文化庁が、これは違法なんですよということを初めて示しました。示したことによって、国民は、ああそうなのか、ダウンロードはいけないんだなということを私は初めて知ったのではないかと思います。そのときに刑罰を私は付けてもよかったのではないかと思いますけれども、森委員がおっしゃるように、刑罰を付けるには、やはりきめ細やかな丁寧な段階的な私は処理というものが必要だと思います。そして、三年たちました。三年たって、やはり法律にちゃんとこれは違法だというふうに書かれているのですから、それに対して刑罰を付けることは私は当然なのではないかというふうに考えております。
 それで、他党の反対なさった方が、何で反対するのと申し上げたら、未成年者が多いからだとおっしゃいました。じゃ、未成年者は泥棒してもいいのと私はお答えしたんですけれども、軽微でも悪いことは悪いんだと思うんですね。一億円盗んでも、千円盗んでも、百円だから盗んでいいということでは私はないというふうに考えております。
 これは一例で、日本レコード協会の調査によれば、一年間に違法ダウンロードされるファイルの数は四十三・六億ファイルに上ると推定されております。これは、正規音楽発信のダウンロードの約十倍のファイルが違法にダウンロードされているという計算になっております。
 ですけれども、これは一例でございまして、私はやはり、悪いことをしたら罰せられることは、未成年者であっても正しく規律を守るということを教えていくべきであって、同時に、この法律の中にあっては未成年者への教育ということをうたっております。これをしっかりとさせるべきというふうに私は考えております。

森ゆうこ君 間違ったこと、違法であることをしたら罰することは当然だということなんですけれども、本当に違法かどうか分かるようになっているとお考えなんでしょうか。恐れ入りますけれども、どの程度先生がインターネットユーザーでいらっしゃるのか、法案提出者の皆さんがどの程度インターネットというのを使っていらっしゃるのか。もちろん平野大臣も含めて、私は先生方といろいろこの件に関してお話ししますと、ああ使っていない人には分かってもらえないのかなというふうに感じることがございました。どれが違法なのかどうかということが判別しにくい、また権利者自体、アーティスト自体が無料でアップロードをしている場合もありますし、どれが違法になるのかということは、非常に今の時点では、エルマークも見分けにくいですし、これが非常に難しいということを指摘しておきたいと思います。
 で、違法ダウンロード刑事罰の犯罪構成要件はどうなっておりますでしょうか。そして、その運用はどういうふうになるのでしょうか。

衆議院議員池坊保子君) この修正案で罰則が科せられる行為というのは、著作権法第三十条第一項に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為、これは著作権法第百十九条第三項にございます。
 分かりやすく言うと、私的使用の目的をもって、インターネット上で著作権又は著作隣接権を侵害して違法に発信されている本来であれば有償の著作物について、それが違法に発信されていることを認識しながらダウンロードをする行為を想定しております。
 恣意的な運用がなされるのではないかという懸念がたくさん私のところにも寄せられております。私もそのことに対して全然配慮しなかったわけではございません。そういうこともあるのかなと思いましたが、しかし、今回罰則を科そうとしている行為に対する捜査もまた令状主義の枠内にあるものでございまして、無制限に捜査機関のネットへの介入を認めるものでもなければ、介入の性質を変容させるものでもありません。令状がなくて踏み込むなどということはございません。
 また、警察において捜査権限の濫用があってはならないということは言うまでもなく、そのことについては既に、「その権限を濫用することがあつてはならない。」、警察法第二条第二項。
 このような懸案を払拭すべく、改正法案の附則において入念に、「第百十九条第三項の規定の運用に当たっては、インターネットによる情報の収集その他のインターネットを利用して行う行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならない。」ということをしっかりと明記しております。
 インターネットに対してあなたは全てを知っているかとおっしゃいますと、森委員よりははるかに劣っているとは思いますが、このことに関しまして私は大学生の人たちやいろんな人たちに聞きました、これはどうなのということで。そういうような意見も集約させていただいたことも申し加えたいと思います。

森ゆうこ君 ありがとうございます。
 しかし、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為、これはどのような行為なのかということを具体的に説明していただかないと分からないわけですね。
 例えば、メールが送られてきます、そこに添付されているファイルがございます、メールが知り合いから送られてきたので、それを開けて、そしてダウンロードすると。これをその人が、自らその事実、違法であると、違法にアップロードされたものであると、そして送られてきたものであると、それは、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為にこれは当たるんでしょうか。

衆議院議員池坊保子君) 息子が私に、それを開けて私に送る、これは捜査の対象にはなりません。

森ゆうこ君 息子がとおっしゃいましたか。

衆議院議員池坊保子君) 息子。ですから、例えて申しましたので、森さんが私に送ってくださる、そして私がそれを開ける、それは捜査の対象にはなりません。

森ゆうこ君 メールを送信した人がその対象になるということですか。

衆議院議員池坊保子君) 罰則を科そうとしている行為は、著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行う、だから、それを行うデジタル方式の録音又は録画です。自動公衆送信とは……(発言する者あり)もうよろしい。はい。

森ゆうこ君 いや、だから、その条文は具体的にはどうなのかということをお聞きしているんですよ。どれが違法でどれが違法じゃないのか判別が難しいということを申し上げているんです。それはお分かりになりますか。極めてグレーゾーンが多いわけですね。
 じゃ、自らその事実を知りながらというのはどこまでを言うんですか。これは恣意的な運用につながるというふうに指摘しているわけですよ。もっときちんと具体的にお答えください。

衆議院議員池坊保子君) 具体的にお答えしても御理解いただけないようですが、ここの中にもございますように、違法と知りながらという条文がございます。違法と知らないで出して、それを森さんが違法と御存じなくて、まあ森さんは非常にITにはお詳しいでしょうからそういうことはあり得ないのでしょうが、知らなくて、私が受けた場合には、それはここには入らないということでございます。

森ゆうこ君 だから、自らその事実を知りながらというところが、本当に故意にやったのかどうかということについて、本人は故意にやっていないというふうに言ったとしても、そういう事実があるじゃないか、ダウンロードした事実があるじゃないか、キャッシュも含めて、そういうことが違法であるというふうにして捜査の対象になるわけですよ。しかも、家庭の中に踏み込んで、そのPCをそういう疑いがあるということで持っていかれて、いろんなことを捜査されるわけですね。このことについて私は問題提起をしているんです。
 今、ちょうど法務委員会で小川前法務大臣が質問をしていらっしゃいます。皆さん御存じのように、指揮権発動という言葉が出てまいりました。官僚の無謬性といいますか、警察あるいは検察、あるいは司法は間違わないのだ、正しい捜査がなされるのだ、恣意的な運用はされないのだというふうに強く主張されても、現実問題として、検察官が証拠を捏造し、その反省に基づいて出直しましょうと言っているときに、捜査報告書を捏造して検察審査会を悪用した、こういう事実が明らかになっている。
 しかも、この事実は、先生は見ていらっしゃらないかと思いますけれども、ロシア語のサイトを通じてその捏造をされた捜査報告書がインターネットにアップされまして、全ての国民が見ることが既に可能になっております。
 そういう状況の中で、私は、これは極めて多くの国民が対象になるその新しい刑事罰というものを導入するということについては、今のやり取りの中でもはっきりとしないわけですよ。お答えは拒否されたわけですけれども。
 極めて慎重になるべきであるというふうに思いますが、法務省、来ていらっしゃると思いますけれども、私は、改めて申し上げますが、青少年を含め多くの国民が対象となる違法行為の刑事罰化には慎重には慎重であるべきだというふうに思いますが、今申し上げましたように、今現在、特に捜査報告書の捏造、これは誰が見ても全く別物である。田代検事の捜査報告書と石川知裕衆議院議員の隠し録音したその取調べの状況の反訳書を比べてみて、あれが記憶違いだということになれば、それはその人の認知能力を疑わざるを得ないような、それだけ全くの別物が、もう国民が全部見ているんですよ。そういう中で、捜査当局は何もしようとしない、そして法務省も何もしようとしない。だから、小川前法務大臣は指揮権発動ということに言及をされたわけです。
 これはどうするんですか、田代検事の捜査報告書捏造問題は。どのように対処されるんですか、法務省

○政府参考人(岩尾信行君) 御指摘の問題につきましては、現在、検察当局が告発を受理いたしまして鋭意捜査中である上、これと並行して必要な調査を行っているところでもありますので、法務当局といたしましては、検察当局の行っている捜査及び調査の結果を待ち、これを踏まえて適切に対処することになるものと考えております。

森ゆうこ君 反省がないわけですよ。
 先ほども申し上げましたけれども、インターネットを利用していらっしゃる方、いらっしゃらない方、これはもう本当に情報革命なわけですね、使っていないとなかなかこの問題点ということについて御理解いただけないのかなというふうに思って大変残念なんですけれども、これは本当に恣意的な不当捜査、別件逮捕、そういうものに間違いなく私はつながると思いますし、これだけ広く、特に青少年も含めて犯罪のこの処罰の対象に既になっているわけです。しかも、「自らその事実を知りながら行つて」という部分が非常に曖昧です。非常に曖昧であります。
 少なくともこの部分について、もっときちんと整理をされてしかるべきではないかというふうに思いますが、条文を繰り返し読むのではなくて具体的にお答えください。池坊先生じゃなくて、ほかの方はどうなんですか。もっときちんと答えてください。

衆議院議員馳浩君) まさしく運用において恣意的な捜査がなされるといけないということは当然でありますけれども、例えばメールのやり取りで、具体的に、これが違法であるということを知っていてそれでもダウンロードしたとか、繰り返し行ったとか、広範囲に多人数とやり取りを行ったとかということが明らかである場合には、まさしくこれは捜査の対象になるべきものと私は思っております。
 条文の具体性ということを申し上げれば、一度や二度行っても違法かといえば確かに違法にはなりますけれども、何度も何度も繰り返しそういうことを行ってはいけないということを言うがために運用上の配慮規定を設けましたし、青少年に対する教育的な配慮も条文として書いたところでありますので、一罰百戒というものではなく、こういったことは、違法なものをダウンロードしてはいけないということを明確に今後していくことが国民に対する啓発としても必要なことだというふうに考えております。

森ゆうこ君 時間ですから終わりますけれども、まさしく今おっしゃったように一罰百戒そのものではないかというふうに思います。刑事罰化をしなくても、もっと、こういうことは違法なのである、やってはいけない、著作権を保護しなければいけないということについて、もっとまずは啓発活動をすべきであるというふうに思いますし、衆議院の方で、法の施行日が、まずはその周知徹底の方が先に来るから大丈夫なんだというふうにおっしゃいますけれども、たった三か月で何ができるんでしょうか。
 そういう意味で、私は閣法には大賛成でございますけれども、衆議院のその修正部分、ダウンロードの刑事罰化については、これは非常に危険であるというふうに重ねて申し上げまして、そして反対であるということを申し上げまして、私の質問を終わります。

○水落敏栄君 自由民主党の水落敏栄でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 注目されている大切な大切な法案でありますので、これから早速質問に、いろんなことを申し上げたいので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
 まず、写り込み規定のガイドラインについて、文部科学省にお伺いをいたします。
 今回の改正案では、いわゆる写り込み、これは付随対象著作物としての利用等にかかわる規定が整備されております。これについては、一つ、写真撮影、録音、録画の場合に限り、二つ目は、対象物から分離困難な付随物や音を、三、軽微な構成部分として複製、翻案し、その後利用することができる、四、ただし、著作者の権利を不当に害してはならないとされておりまして、具体例としては、写真や映像の背景に映画のポスターや絵画などが写る場合が想定をされております。
 しかし、映画のポスター、これは外すことができますけれども、そうすると分離困難なものではないから、これ違法になるんでしょうか。また、現在はデジタル技術が発達していますので、写真や録画については写り込みを画像処理で消去、これ分離することは比較的容易に行えるわけであります。いまだ基準としては曖昧で、現場では分離性、困難性ということで迷いそうですので、対象物から分離困難な付随物について何らかのガイドラインが必要ではないか、こう考えておりますけれども、文部科学省のお考えをお聞かせください。

○政府参考人(河村潤子君) 改正法案第三十条の二のいわゆる写り込み規定に該当するためには、分離することが困難であるなどの要件に合致する必要がございます。その判断は、創作時の状況、創作、例えば写真を撮るというその行為でございますが、その創作時の状況に照らしまして、ある著作物を創作する場合に付随して対象となった別の著作物、これが法文上、付随対象著作物となっておりますけれど、これを除いて創作するということが一般的な社会通念の上で困難であるというふうに客観的に認められるか否かという点から判断するということになります。
 こう申し上げても、なかなかこの判断基準は、条文から具体的な内容を把握することが容易であるとは申せないと私どもとしても存じます。
 今回の写り込み規定の改正については、改正法の施行までの間にその趣旨や要件、改正法はこういう場合だったら適用をされませんといったような例などを具体的に示した資料を作成をいたしまして、できる限り国民の皆様に分かりやすく説明し、周知をしていきたいと存じます。

○水落敏栄君 続いて質問をいたします。
 フェアユースに対する考え方ですね。これも文部科学省にまずお聞きしますけれども、アメリカの著作権法には日本のように私的使用のための複製という制限規定はないわけであります。他人の著作物でも公正な利用ならば著作権侵害ではないというフェアユースと呼ばれる規定があります。今回の著作権法改正の大本は、内閣の知的財産戦略本部が平成二十年、二〇〇八年に策定した知的財産推進計画において、包括的な権利制限規定の導入も含め技術進歩等に対応し得る知財制度の在り方等を検討するとしたことでありまして、これは文化審議会著作権分科会ですけれども、ここにおいて権利制限の一般規定、いわゆる日本版フェアユースの検討が始まったということを私は承知をいたしております。
 今回の改正法案では、四つの個別分野について条件を設定した上で、著作物の利用の円滑化を図ることとされております。これは権利制限の一般的な規定とは異なって、フェアユースとは言えないと考えます。改正法案を批判するのではなくて、私的な複製をどこまで許すのかは国のコンテンツ政策の根幹でありまして、必ずしもフェアユースを導入しなければならないというわけではないと思います。
 後でTPPについて簡単に質問を行いますけれども、政府内においてどのような議論を経て日本版フェアユースから今回の個別分野における対応となったのか、お答えください。

○政府参考人(河村潤子君) 著作物の利用の多様化が進む状況の下、アメリカ型のフェアユース規定のように著作物の利用場面を特定しないで、幾つかの考慮要素を規定するのみで自由利用が許されるかどうかは司法の判断に委ねるべきと、こういう御意見があるのは議員御指摘のとおりでございます。
 こうした意見なども踏まえまして、知的財産戦略本部で作られました知的財産推進計画、累次のものでの権利制限の一般規定、これは日本版フェアユース規定とも言われておりますけれども、この導入に向けて検討するということが言われました。特にベルヌ条約等の著作権に関する条約等の規定も踏まえて、規定ぶり、規定の仕方について検討を行って結論を得るべきであるという指摘がありました。
 これらの知財計画を踏まえまして、文化審議会、具体的には著作権分科会でございますが、で更に検討した結果、アメリカ型フェアユース規定については、判例法主義のアメリカにおいて百三十年に及ぶ膨大な判例を明文化したものであって、実定法主義の我が国とは状況が異なること、また、刑罰法規としての明確性を欠き、罪刑法定主義の点から我が国としては問題があること。さらに、居直り侵害と呼ばれるような行為も助長する懸念があるということで、権利者団体を中心に反対の意見が強いことから