児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

静岡県内において性行為・わいせつ行為する際の年齢確認義務について

 177条後段の強姦罪では「13歳未満の者と知りながら」が要件になりますので、「13歳未満の者とは知らなかった」と否認されることになります。

第177条(強姦)
暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。
十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

 否認が通れば、青少年条例違反(淫行)に切り替えられるように二段構えになっています。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120803-OYT1T00027.htm
同署は、容疑者が女子生徒に複数回乱暴していたとみて調べている。
 発表によると、容疑者は公立中に勤務していた昨年7月頃、当時13歳未満だった女子中学生をホテルに連れ込み、乱暴した疑い。容疑者は「生徒と交際していた。生徒が13歳未満とは知らなかった」と供述しているという。
 刑法の規定では、被害者が13歳未満の場合、暴行や脅迫がなくても強姦罪で立件できる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120803-00000022-san-l22
逮捕容疑は、県東部の別の公立中学校講師として勤務していた平成23年7月ごろ、教え子の中学1年生の女子生徒をホテルに連れ込み、わいせつな行為をしたとされる。
 捜査関係者によると、2人は交際していたもようで、複数回にわたり、女子中学生を乱暴したとみられる。刑法では、被害者が13歳未満の場合は、同意のうえでも強姦罪が成立する。
 大仁署によると、今年5月に様子がおかしいと気づいた両親と兄が女子生徒に聞き被害が発覚。同署に相談した。学校関係者によると、容疑者は公立中学校を6月末に「一身上の都合」で辞職している。

 ところで、静岡県青少年のための良好な環境整備に関する条例は、淫行する際には「青少年に対し、年齢、生年月日を尋ねたり、本人の容姿、体格等の身体的発育状況によって満18歳以上であると信じたというだけでは足りず、戸籍謄本、運転免許証等の客観的な資料に基づいて、通常可能な調査方法を講じ、更には父兄に直接問い合わせる等、年齢確認に万全を期したものと認められない限り、過失がないとはいえない。」という厳格な年齢確認義務を負わしています。

https://www2.pref.shizuoka.jp/all/file_download2100.nsf/FEDB1F2F9C6BF4294925785400082DAE/$FILE/jourei230401.pdf
第21条
8 第14条の2から第15条までに規定する行為をした者は、青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項、第2項及び第4項第10号から第12号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

静岡県青少年のための良好な環境整備に関する条例の解説h21
8 第8項関係
本項は、第14条の2 (淫行及びわいせつ行為の禁止)、第14条の3 (入れ墨の禁
止)、第15条(場所の提供及び周旋の禁止)の各規定に違反する行為を行った者は、青少年の年齢を知らなかったことを理由として処罰を免れることができない旨を定めた規定である。
これらの行為は特に悪質な行為であり、このような行為が年齢の不知をもって処罰を免れることは、本条例の目的である青少年の健全育成に反するため、青少年の年齢を知らなかったことに過失のないときを除き、処罰の対象とするものである。
(1) 「過失がないとき」とは、青少年に対し、年齢、生年月日を尋ねたり、本人の容姿、体格等の身体的発育状況によって満18歳以上であると信じたというだけでは足りず、戸籍謄本、運転免許証等の客観的な資料に基づいて、通常可能な調査方法を講じ、更には父兄に直接問い合わせる等、年齢確認に万全を期したものと認められない限り、過失がないとはいえない。
(2) 無過失であることの挙証責任は、違反する行為を行った者にあると解される。

 こういう青少年条例の年齢確認義務は、非業務者・非営利者については、無茶だとおもうんですが、児童買春罪や性犯罪についても、これをテコにして、「年齢確認義務があるのにしなかったということは、その年齢であることをうすうす知ってたんだろ!」という取調がされることがあります。

 児童買春罪で年齢不知の場合、177後段の強姦罪で年齢不知の場合に、条例の年齢知情条項を適用して、青少年条例違反で処罰できるのかという問題がありますが、児童買春罪の場合にはできないという判例(東京高裁)が出ています。強制わいせつ罪との関係では可能という判例福岡高裁)もあります。

東京高裁H24.7.17
(1)原判示第1,第5,第7及び第11の各所為に対して条例を適用した点について
所論は,18歳未満の者との性行為については,国法である児童買春・児童ポルノ等処罰法のみで全国一律に有償の場合のみを規制する趣旨であるとして,同法の施行により条例の淫行処罰規定は当然に失効しかと主張する。
そこで検討すると,児童買春・児童ポルノ等処罰法が,対償を伴う児童との性交等のみを児童買春として処罰することとし,対償を伴わない児童との性交等を規律する明文の規定を置いていないのは,後者につき,いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であるとは解されず,それぞれの普通地方公共団体において,その地方の実情に応じて,別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解される。
そうすると,青少年に対するみだらな性行為等を禁止し,これに違反した者を処罰することとした条例35条1項,53条のいわゆる淫行処罰規定は,児童買春・児童ポルノ等処罰法の施行によって,児童買春に該当する行為に係る部分についてのみ効力を失ったが,それ以外の部分については,なお効力を有するものと解される(平成11年法律第52号附則2条1項参照)。
したがって,児童買春に該当しない原判示第1,第5,第7及び第11の各所為に対して原判決が上記条例の規定を適用したことに誤りはない。
所論は採用できない。