児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

集団強姦致傷罪等で懲役16年(山形地裁H24.7.12)

 刑事損害賠償命令の申立がある場合は、控訴して、刑事損害賠償命令を受けて、支払えば、減軽されることがあります。
 被害者参加人代理人弁護士の科刑意見は、両被告人について法定刑の上限の無期懲役でしたが、どっちの裁判員にも考慮されなかったようで、説得力を持たせる努力が必要だと思います。

地裁、被告に懲役16年 集団強姦致傷・裁判員裁判 /山形県
2012.07.13 朝日新聞
 矢数裁判長はいずれの犯行も計画的で悪質としたうえで、「車に連れ込もうとして暴行を加えたり、実際にわいせつ行為に及んだりしたのは被告だけで、果たした役割は大きい」と指摘。一方で、被害者に被害弁償金の支払いを申し出たことや、反省の言葉を述べていることなど、考慮すべき事情もあるとした。
 被害者参加制度で被害者側の代理人を務めた遠藤凉一弁護士は判決後、「賠償金の支払い提示が有利な情状とされたが、支払いを拒否した被害者もいる。求刑を上回る判決もあり得たのではないか」と話した。
 判決によると、被告は2005年10月、女子高生を車に連れ込み強姦して負傷させた。さらに仲間と共謀し、昨年5月には強姦目的で女子高生を車に連れ込もうとし、同年6月には別の女子高生を車に連れ込んで強姦しようとしてけがを負わせ、現金4万2千円を窃盗。同年8月には天童市内の民家から女子高生の体操服を盗んだ。

車に少女連れ込む 懲役16年 裁判員裁判判決 「身勝手な犯行」=山形
2012.07.13 読売新聞
 矢数裁判長は「成人向けビデオで興味を持ち、1人で犯行に及んだ6年後、共犯者から誘いを受け、再び連続して犯行を行っており、強く非難されるべき」と断じた。弁護側の「主導的な立場ではなかった」という主張については、「わいせつ行為を行ったのは被告のみで、果たした役割は大きい」と退けた。
 閉廷後、被害者参加人の代理として法廷に立った遠藤涼一弁護士は「相場通りの判決で、どこまで被害者の感情が反映されているのかわからない」と話した。
 この裁判は、損害賠償命令制度の申し立てが行われており、判決言い渡し後、同地裁で非公開で審理が行われた。
 また、この事件で同罪などに問われ、懲役8年が確定した共犯の受刑者(39)についても、損害賠償命令制度の申し立てが行われ、12日までに審理を終え、賠償が命じられた。金額は明らかにされていない。

 被害者参加人代理人の科刑意見は無期懲役でしたが、裁判例など根拠が示せないし、他の被害者の事件の量刑まで言っちゃうというのでは、裁判員を説得できない。

山形・少女連れ去り:集団強姦致傷裁判員裁判 懲役18年を求刑 被害者側、厳罰求める /山形
2012.07.12 毎日新聞
 矢数裁判長は被害者の母親の心情を朗読。「娘の将来を台無しにされた。被告は自分自身の家族も含め、他人への思いやりが全くない冷酷な人間。卑劣な性格は一生治らない。生きている間に社会に出ないように厳罰に処してください」とした。
 被害者代理人の遠藤凉一弁護士は「被告には、反省の態度は見られず、自己を正当化しようとするひきょうな態度。法を守る規範意識が見えない。被害者の気持ちに立って現行法で許容される最上限の刑(無期懲役)に処するべきだ」と意見陳述をした。

共犯の判決は6/21で懲役8年(求刑10年)確定。こっちでも被害者の科刑意見(無期懲役)の訴求が弱いという評価。

「集団強姦致傷」裁判員裁判、被告に懲役8年 「刑事責任は重い」 地裁判決/山形県
2012.06.22 朝日新聞
 強姦(ごうかん)目的で女子高生を車に連れ込んだなどとして集団強姦致傷などの罪に問われた被告(39)の裁判員裁判の判決が21日、山形地裁であった。矢数昌雄裁判長は「被害者らが味わった恐怖心は大きく、被告の刑事責任は重い」として懲役8年(求刑懲役10年)を言い渡した。弁護側は「被告と相談して控訴するかどうか決める」としている。
 矢数裁判長は犯行を計画的としたうえで、「女性の気持ちを顧みない身勝手な動機は強く非難されるべきだ」と指摘。弁護側の「役割は従属的だった」という主張については、被告が共犯者に積極的に犯行を持ちかけたことなどを挙げ、「従属的であったとまでは言えない」と退けた。
 判決によると、被告は被告(31)=同罪などで起訴=と共謀し、昨年5月28日夜、山形市内の路上で強姦目的で帰宅途中の女子高生を車に連れ込もうとし、同年6月25日夜には、同市内の路上で別の女子高生を車に連れ込んで強姦しようとして頸椎(けいつい)捻挫を負わせた。
 ●被害者参加制度を初適用 裁判員らの受け止め様々
 裁判員裁判被害者参加制度が適用された県内初の裁判。被害者や被害者家族は出廷しなかったが、代理の遠藤凉一弁護士が被告に質問したり、量刑について意見を述べたりしたほか、被害者の母親が事件について思いをつづった意見陳述書が読み上げられた。
 評議の末に下された判決は、職業裁判官による従来の裁判で「相場」とされる「求刑の八掛け」にぴったり合致する量刑だった。
 判決について遠藤弁護士は「『型どおり』という印象。もう少し被害者の心情を加味した、求刑ぎりぎりの量刑もあり得たのではないか」と話した。一方、閉廷後に会見に応じた裁判員らは「被害者の精神的苦痛が身近に感じられ、弁護士の言葉も怒りに震えているのがよくわかった」(天童市・60代男性)など、被害者側の思いを重く受けとめたと口をそろえた。
 ただ、「被害者感情」をどう量刑に反映させるかでは、考えの違いも。山形市の男性(60)は「ひしひしと訴えるものがあり、判決に加えられたと思う」と話したが、同市の女性は「心に響いたが、量刑を左右したかは別問題」。山形市の男性(54)は「事実関係などは検察が出した証拠で明らかになっている。被害者側の主張は重く受け止めたが、弁護士の主張は『感情的』に感じた。被告の立場を考えることも必要と思った」と語った

山形・少女連れ去り:集団強姦致傷裁判員裁判 被告に懲役8年 「従属的とはいえない」−−地裁判決 /山形 2012.06.22 毎日新聞
 また、被害者の心情について「精神的苦痛は計り知れない。被害者やその家族が厳罰を希望しているのは当然」と指摘。「被告人も2人の幼い子供がいる。父親として社会復帰し、更生の道を歩んでほしい」と説諭した。
 今回の裁判員裁判は県内で初めて被害者参加制度が適用された。被害者代理人として意見陳述などをした遠藤凉一弁護士は閉廷後、「判決理由で被害者の気持ちに触れてもらえた。どの程度、裁判官の心に響いていたのか、判決を読み込んで検討したい」と話した。
 閉廷後に裁判員の記者会見が開かれ、裁判員5人、補充裁判員1人が出席。被害者参加制度について、全員が「被害者の苦痛がよく伝わってきた」などと話した。
 一方で、裁判員を務めた山形市の男性会社員(54)は「検察側の立証だけでも、犯行の卑劣さ、被害者の心の傷の深さは十分に伝わってきた。被害者代理人を務めた遠藤弁護士の意見陳述などをあえて考慮に入れようと意識しなかった」とも話した。

山形・少女連れ去り:集団強姦致傷裁判員裁判 被害者代理人が被告追及 参加制度初適用 /山形 2012.06.20 毎日新聞
 山形市の路上で昨年6月に10代の少女に乱暴したなどとして、わいせつ略取と集団強姦(ごうかん)致傷などの罪に問われた被告(39)の裁判員裁判が19日、山形地裁(矢数昌雄裁判長)で結審した。判決の言い渡しは21日。この日は被害者参加制度を利用して、被害者の代理人として遠藤凉一弁護士が検察側の席に座って証人尋問、被告人質問、意見陳述をした。県内の裁判員裁判で、被害者参加制度の適用は初めて。
 検察は「異常な性欲が動機で、極めて悪質」とし懲役10年を求刑。弁護側は「反省し、犯行では従属的な立場だった」として懲役3年執行猶予5年を求めた。
 遠藤弁護士による被告人質問では「受け売りのような言葉ばかり。本当に反省しているのか。どうやって償うつもりなのか」と、あいまいな答えを繰り返す被告に詰め寄る場面もあった。被告は終始うつむき、つぶやくように「分かりません。とにかく頭を下げるしかない」答えた。
 また、矢数裁判長が被害者の母親の心情を朗読。「男2人で10代の娘を襲うという全く卑劣な人間。絶対に許せない気持ちは娘も同じです。一生、事件前の心の状態には戻れません。被告人を生涯社会に出ないようにしてください」と述べた。遠藤弁護士は「被害は深刻。一生癒えることのない被害者の傷と同等の苦しみを与えるべきで、現行法で許容される最上限の刑(無期懲役)に処するべきだ」と意見陳述をした。

参考文献

論題 「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成19年法律第95号)」の解説(2)民事訴訟法の改正部分を除く
著者 白木 功. 飯島 泰. 馬場 嘉郎.
他言語論題 Comments on the law to amend part of the code of criminal procedures and other related acts to protect the rights and benefits of crime victims and their families (2007 law no. 95) (2)
請求記号 Z2-95
雑誌名 法曹時報.
出版者等 東京 : 法曹会.
巻号・年月日 60(10) 2008.10
巻号・年月日 60(10) 2008.10
ページ 3075〜3159
ISSN 0023-9453

平成19年平成20年の犯罪被害者等保護関連改正法及び改正規則の解説(最高裁判所事務総局刑事局監修・法曹会・平成21年4月)
P114
本項は,被害者参加入等による事実又は法律の適用についての意見の陳述の要件等について定めたものである。
(1) 本項の規定による陳述の対象となるのは, 「事実又は法律の適用について」の意見である。
「事実についての意見」とは,訴因として表示された公訴事実や情状等の量刑」の基礎となる事実がいかなる証拠によって認定されるかにつき,証拠能力及び証明力の観点から述べる意見をいう。
「法律の適用についての意見」とは,証拠によって認定されるべき事実に対する実体法及び訴訟法の具体的な解釈,適用に関する意見をいう。
被告人に科せられるべき具体的な刑罰の種類及び量に関する意見,すなわち量刑についての意見も法律の適用についての意見に含まれるものと解される(注5)

(注5) 被害者参加人等が法律の適用についての意見として量刑についての意見を述べる場合にも,検察官が求刑を行う場合と同様に,法律上被告人に科すことができない刑を求める意見を述べることは許されないと解される。
なお,同一の被告人に対する複数の被告事件が併合して審理されている場合であっても,参加の許可は被告事件単位でなされるものであるので,被害者参加入等に認められる訴訟活動は,参加の許可がなされた被告事件についてのものに限られる(第316条の33の解説の1(3) を参照。)から,複数の事件のうち特定の事件について参加を許されており,その他の事件には参加を許されていない被害者参加入は,自己が参加を許された事件のみを対象として相当と思料する具体的な刑期についての意見を述べることができ,参加を許されていない事件と併せて併合罪加重をした後の処断刑の範囲を前提とした具体的な刑期についての意見を述べることはできないものと考えられる。



P73
(3) 参加の対象となる被告事件の手続
被害者参加制度において参加の対象となるのは, 「被告事件の手続」であるところ, 「被告事件」とは,申出に係る個別の被告事件,すなわち,参加をしようとする者が被害者等又は当該被害者の法定代理人である被告事件をいい, 「被告事件の手続」とは,当該被告事件の審理又は裁判が行われる手続をいう。
同一の被告人に対する複数の被告事件が分離して審理されている場合,被害者等が参加することができるのは,自らが被害者等である被告事件の手続のみであり,分離して審理されている他の被告事件の手続に参加することはできない。

また,同ーの被告人に対する複数の被告事件が併合して審理されている場合であっても,参加の許可は被告事件単位でなされるものであるので,被害者参加人等に認められる訴訟活動は,参加の許可がなされた被告事件についてのものに限られると解される。したがって,例えば, Aを被害者とする傷害被告事件とBを被害者とする傷害被告事件(各事件を甲事件,乙事件とする。)が併合審理きれている場合において,甲事件の手続への参加を許可された被害者参加人Aは,乙事件のみに関係する事項について,証人を尋問したり,被告人に対して質問したり,事実又は法律の適用についての意見を陳述することはできないものと解される。また,この場合において,実質的に乙事件についての審理のみが行われる公判期日について
は, 「審理の状況」を考慮して(第316条の34第4項),被害者参加人Aの公判期日への出席が制限される場合があり得るものと解される。
さらに,併合されている複数の裁判員裁判対象事件について区分審理決定(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第71条)がなされた場合における区分事件の審理及び裁判は,当該区分事件に含まれない被告事件の被害者等にとっては,参加の対象となる手続には当たらない。したがって,例えば3件の裁判員裁判対象事件(各事件をA事件B事件,c事件とする。)について,区分審理決定がなされ, A事件, B事件, c事件の順に区分事件に係る審理を行う旨の決定(同法第73条)がなされた場合,例えば, A事件についての区分事件審判の公判期日は, A事件の被害者等にとっては参加の対象となる手続に当たる一方で, B事件又はC事件の被害者等にとっては,自らが被害者等である被告事件の審理又は裁判が行われる手続ではないため,参加の対象となる手続に当たらない。なお,すべての区分事件審判が終わった後の併合事件審判(同法第86条)は,各区分事件の審理や併合事件の全体についての裁判」等が行われるものであることから. A, B, Cいずれの事件の被害者等にとっても参加の対象となる手続に当たることとなる。