児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

検察官「10年」、被害者参加人代理人「無期懲役」、弁護人「懲役3年執行猶予5年」という科刑意見で、懲役8年の判決(山形地裁H24.6.21)

 集団強姦致傷の弁護人だったときにその罪名の裁判例を全部集めましたが、H22当時で年十数件なので、量刑グラフは点をちりばめたような感じになって、折れ線グラフが書けませんでした。
 特別資料でも集団強姦致死傷のグラフは載っていません。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/80818005.pdf

 裁判員制度後、起訴件数が減りました。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/files/%E9%9B%86%E5%9B%A3%E5%BC%B7%E5%A7%A6%E3%81%A8%E8%87%B4%E5%82%B7%E7%BD%AA.bmp

 被害者参加人の求刑は、量刑相場もご存じないので、処断刑期の上限にしておけばいいと思います。強制わいせつ罪で死刑という意見も見たことがありますが、いつもそうだと、裁判所に説得力がないかも。強姦は未遂だし。致死の結果もないし。
 わいせつ略取と強姦罪とは牽連犯。

集団強姦致傷 懲役10年求刑 裁判員裁判県内初 被害者参加制度を適用=山形
2012.06.20 読売新聞
検察側は懲役10年を求刑。弁護側は懲役3年、執行猶予5年などを求め結審した。判決は21日。
 県内の裁判員裁判で初めて、被害者の心情を反映させる目的の被害者参加制度が適用された今回の裁判。論告求刑に先立ち、矢数裁判長は「娘の心は一生、元には戻らない。生涯社会に出さないようにしてほしい」などと、少女の母の意見書を読み上げた。検察側は論告で「成人向けビデオを見て女性に乱暴をしたいと思い、(動機は)安易で身勝手」と指摘し、「計画を成功させるためにカッターなどを準備しており、計画的で悪質な犯行」と断じた。
 続いて、被害者らから依頼を受けた遠藤涼一弁護士が意見陳述し、「被告は妻子がありながら、何のためらいもなく犯行を行っており、規範意識が欠如している」と指摘。「今回の事件は『魂の殺人』で、被害者の傷は一生癒えない」と強い口調で訴え、法律が許す最も重い刑罰を求めた。

 弁護側は「自らわいせつな行為はしておらず、犯行の計画や指示は共犯者が行っており、従属的な犯行だった」と従来の主張を繰り返した。遠藤弁護士は閉廷後、記者団の取材に「被害者の無念さが、裁判員らにも伝わったのではないか」などと話した。

山形・少女連れ去り:集団強姦致傷裁判員裁判 被害者代理人が被告追及 参加制度初適用 /山形
2012.06.20 毎日新聞
 山形市の路上で昨年6月に10代の少女に乱暴したなどとして、わいせつ略取と集団強姦(ごうかん)致傷などの罪に問われた被告の裁判員裁判が19日、山形地裁(矢数昌雄裁判長)で結審した。判決の言い渡しは21日。この日は被害者参加制度を利用して、被害者の代理人として遠藤凉一弁護士が検察側の席に座って証人尋問、被告人質問、意見陳述をした。県内の裁判員裁判で、被害者参加制度の適用は初めて。

 検察は「異常な性欲が動機で、極めて悪質」とし懲役10年を求刑。弁護側は「反省し、犯行では従属的な立場だった」として懲役3年執行猶予5年を求めた。

 遠藤弁護士による被告人質問では「受け売りのような言葉ばかり。本当に反省しているのか。どうやって償うつもりなのか」と、あいまいな答えを繰り返す被告に詰め寄る場面もあった。被告は終始うつむき、つぶやくように「分かりません。とにかく頭を下げるしかない」答えた。

 また、矢数裁判長が被害者の母親の心情を朗読。「男2人で10代の娘を襲うという全く卑劣な人間。絶対に許せない気持ちは娘も同じです。一生、事件前の心の状態には戻れません。被告人を生涯社会に出ないようにしてください」と述べた。遠藤弁護士は「被害は深刻。一生癒えることのない被害者の傷と同等の苦しみを与えるべきで、現行法で許容される最上限の刑(無期懲役)に処するべきだ」と意見陳述をした。

 起訴状などによると、昨年6月25日午後9時ごろ、清野浩二被告(31)=わいせつ略取と集団強姦致傷などの罪で起訴=と共謀し、山形市内の路上で、帰宅途中だった10代の少女を被告の車内に押し込み、脅すなどして乱暴しようとしたが失敗し、首に全治9日のけがをさせたなどとされる。

刑法
第225条(営利目的等略取及び誘拐)
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する
第181条(強制わいせつ等致死傷)
3 第百七十八条の二の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
第178条の2(集団強姦等)
二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。


追記

http://www.yamagata-np.jp/news/201206/21/kj_2012062101371.php
少女連れ去り事件、集団女性暴行致傷罪の被告に懲役8年 裁判員裁判判決
2012年06月21日 11:10
 山形市西部で昨年6月、わいせつ目的で少女を連れ去り、暴行したとして集団女性暴行致傷罪などに問われた被告の裁判員裁判判決公判が21日、山形地裁であり、矢数昌雄裁判長は懲役8年(求刑懲役10年)の実刑判決を言い渡した。県内では初めて被害者参加制度を適用した裁判員裁判で、被害者側の代理人となる被害者参加弁護士は量刑に関する意見陳述で「性犯罪は『魂の殺人』と言える」として、法定の最高刑が相当と述べていた。

http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20120621-970868.html
矢数昌雄裁判長は「女性の気持ちを省みない身勝手な動機は強く非難されるべきだ」と指摘。被告に小さな子どもが2人いることにも触れ、「家族を考え一日でも早く社会復帰をしてほしい」と述べた。

http://mainichi.jp/area/yamagata/news/20120622ddlk06040008000c2.html
山形・少女連れ去り:集団強姦致傷裁判員裁判 被告に懲役8年 「従属的とはいえない」−−地裁判決 /山形
2012.06.22 毎日新聞
 今回の裁判員裁判は県内で初めて被害者参加制度が適用された。被害者代理人として意見陳述などをした遠藤凉一弁護士は閉廷後、「判決理由で被害者の気持ちに触れてもらえた。どの程度、裁判官の心に響いていたのか、判決を読み込んで検討したい」と話した。
 閉廷後に裁判員の記者会見が開かれ、裁判員5人、補充裁判員1人が出席。被害者参加制度について、全員が「被害者の苦痛がよく伝わってきた」などと話した。
 一方で、裁判員を務めた山形市の男性会社員(54)は「検察側の立証だけでも、犯行の卑劣さ、被害者の心の傷の深さは十分に伝わってきた。被害者代理人を務めた遠藤弁護士の意見陳述などをあえて考慮に入れようと意識しなかった」とも話した。