住居侵入を起訴しなければ、処断刑期の上限は15年ですが、住居侵入を起訴すると処断刑期の上限が10年になります。かすがい(鎹)現象といいます。最初の被害者が抵抗すると次の犯行ができないので、強制わいせつ罪・強姦罪だと難しいのですが、準強制わいせつ罪・準強姦罪ではありうるということです。
公判で検察官が秘匿決定がある被害者の氏名を読み上げてしまったらしいですが、刑事確定訴訟記録法で閲覧したときも、求めていないのに、被害者の氏名が開示されていました。検察官・弁護人・裁判官の氏名は非開示。
睡眠薬暴行 懲役13年判決 裁判員裁判 供述変遷「信用できぬ」=山梨 読売新聞
富士河口湖町や鳴沢村の民宿で、女性客に睡眠薬を飲ませてわいせつ行為をしたとして、準強制わいせつや強盗傷害などの罪に問われた被告の裁判員裁判の判決が29日、甲府地裁であった。深沢茂之裁判長は「被害者の人格を無視した卑劣な犯行」として懲役13年(求刑・懲役15年)を言い渡した。
判決によると、被告は2006年12月、北杜市の民家に侵入し、現金3万6174円を盗み、帰宅した当時13歳の女子中学生にスタンガンを押し当てて脅し軽傷を負わせた。また、08〜09年、富士河口湖町や鳴沢村の民宿に侵入し、12〜20歳の女性客6人に睡眠薬を飲ませ、わいせつ行為をするなどした。
弁護側は強盗傷害事件について「現金を盗んだ時に女子中学生にスタンガンを押し当てたわけではない」として、強盗傷害罪ではなく、窃盗と傷害、住居侵入罪にあたると主張したが、判決では被告の供述が変遷していることなどから「供述は信用できない」として退けた。
◆併合審理で裁判員「争点見失いそうに」
裁判員裁判の対象となるのは、法定刑が最高で死刑か無期懲役の罪に限られている。仮に被告が法定刑の最高が懲役10年の準強制わいせつ罪だけで起訴されていたら裁判員裁判とはならなかった。裁判員たちは今回の事件とどのように向き合ったのだろうか。
判決後、裁判員の男性2人が記者会見に応じた。20歳代の裁判員は、「感覚的には(併合して審理された)準強制わいせつ事件の方が重いと感じた」と話した。50歳代の裁判員も「記憶に残っているのはわいせつ事件のほう」とした上で、「今後、裁判員裁判の実例が積み重なっていけば、対象となる事件が変わることもありえるのではないか」と話した。
今回の裁判で争点となったのは、被告が起訴事実を否認した強盗傷害事件だった。しかし、検察側は、他県の準強制わいせつ事件の判決例を多数示すなど、立証時間の大半をわいせつ事件に割き、被告の悪質性を強調した。これについて20歳代の裁判員は、「争点がどこなのか見失いそうになることもあった」と語った。
元東京高検検事で山梨学院大法科大学院の大八木治夫教授は「被害者に未成年が多く、悪質性も高いわいせつ事件に対して検察側が立証に力を入れるのは理解できる。そもそも罪名だけで形式的に(裁判員裁判の)対象、非対象を分ける制度自体に無理があるのではないか」と話した。
[読売新聞社 2010年10月30日(土)]
http://www.47news.jp/CN/201010/CN2010102101000922.html
検事、匿名決定の被害者名読む 法廷でミス、甲府地裁
金を盗もうと民家に忍び込んで女性にけがを負わせたなどとして、強盗致傷などの罪に問われている被告人の甲府地裁の裁判員裁判で21日、地裁が匿名にすると決定した被害者の女性の氏名を甲府地検の検事が誤って法廷で読み上げた。
検事はいったん氏名を読んだ後、自分で間違いに気付き、匿名に言い直した。深沢茂之裁判長は傍聴人にプライバシーに配慮してほしいと話し、検事は法廷で頭を下げた。
女性は事件発生当時、未成年だった。甲府地裁は初公判の前に地検から申し立てを受け、氏名など被害者が特定される事項を非公開とする決定をしていた。
甲府地検の矢野元博次席検事は「当然注意しなければいけないところでミスをした。申し訳なく思う」と話した