児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の判断方法(大阪高裁H24.7.12)

 男湯のおっさんたちの裸で、児童の裸が希釈されるという主張でした。
 従来の見解は
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20100601#1275298404
でした。
「他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする 3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での 3号ポルノの製造も処罰しなければ, 2項製造罪の規定の意味がそのような 3号ポルノの範囲では没却されるものである。したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がし、れば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。」なんて言い出したら、日本に数人しか居ない趣味であっても、一般的と言えることになります。

阪高裁H24.7.12
2 控訴趣意中,その余の法令適用の誤りの主張について
論旨は, (1)本件各画像は,児童の裸が撮影されているが,一般人を基準とすると「性欲を興奮させ又は刺激するもの」ではないから,児童ポルノ法 7条 2項の製造罪(以下 12項製造罪」という。)は成立しないのに,原判決は原判示罪となるべき事実に同法 7条 2項, 1項, 2条 3項 3号を適用しており,・・・,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
そこで検討するに, (1)の点は,本件各画像が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるかどうかについては一般人を基準として判断すべきものであることはそのとおりである。しかし,その判断の基準とすべき「一般人」という概念は幅が広いものと考えられる。すなわち, 「一般人」の中には,本件のような児童の画像で性的興奮や刺激を感じる人もいれば感じない人もいるものと考えられる。本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。そのことからすると一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像、では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。
しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興室や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。
そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであってこれらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要があると思われる。他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする 3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での 3号ポルノの製造も処罰しなければ, 2項製造罪の規定の意味がそのような 3号ポルノの範囲では没却されるものである。したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がし、れば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。
したがって,原判決が原判示各事実に児童ポルノ法 7条 2項, 1項, 2条 3項 3号を適用したのは正当である。