児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害者にとってはわいせつの被害であっても、犯人にわいせつな意図がなければ、強制わいせつ罪は成立しない。

 強制わいせつ罪は傾向犯だからです。最判S45.1.29とか広島高裁岡山支部H22.12.15とか。被害者からすれば同じ被害なんですが。

http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/20120218000219
強要などの疑いで男子中学生2人逮捕/高松北署
2012/02/18 11:50
 高松北署は17日、強要と児童買春・ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)の疑いで、香川県高松市内の中学2年の男子生徒2人=いずれも14歳=を逮捕した。2人の逮捕容疑は共謀し、1月15日午後6時ごろ、同市内の公園で同級生の男子生徒2人=いずれも14歳=に服を脱ぐよう強要した上、携帯電話のカメラで裸を撮影した疑い。

 学説は性的傾向不要説で、「最近は必要説の判決を見かけない(判例も不要説だ)」と書いてある基本書もありますが、奥村はH22に必要性の判決を受けました。

最判S45.1.29
しかし、職権により調査するに、刑法一七六条前段のいわゆる強制わいせつ罪が成立するためには、その行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要し、婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であつても、これが専らその婦女に報復し、または、これを侮辱し、虐待する目的に出たときは、強要罪その他の罪を構成するのは格別、強制わいせつの罪は成立しないものというべきである。

広島高裁岡山支部H22.12.15
 ところで,原判示第3の事実は,被告人が,当時16歳の被害者Aを脅迫し,同人に乳房及び陰部を露出した姿態等をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影させたなどの,強制わいせつ罪に該当し得る客観的事実を包含しているが,強制わいせつ罪の成立には犯人が性的意図を有していることが必要であるところ,原判示第3の事実に,被告人が上記性的意図を有している事実が明示されてはいない。
 また,原判示第3の事実にかかる起訴状には,原判示第3の事実と同旨の公訴事実が記載され,その罰条として,3項製造罪のほか,「強要 刑法223条」と記載されているのみであるから,検察官において,上記性的意図を有していることも含めて訴因を設定する意思があったとは認められず,原判決が,被告人が上記性的意図を有していることも含めた訴因であることを前提に原判示第3の事実を認定したとも認められない。なお,所論は,原判決が上記性的意図を認定している旨も指摘するが,原判決は,(量刑の理由)欄において被告人に性的欲望を満たすためという動機があった旨説示しているにすぎず,(罪となるべき事実)として性的意図の存在を認定したものではないから,原判決の上記説示が上記結論を左右するものではない。