児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

林美月子「最新判例批評([2012] 4)1.児童ポルノを、不特定又は多数の者に販売して提供するとともに、不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した場合の罪数 2.児童ポルノであり、かつ、刑法一七五条のわいせつ物である物を、不特定又は多数の者に販売して提供するとともに、不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した行為が、全体として一罪とされた事例[最高裁平成21.7.7決定] 判例時報.2130

 警察実務には即浸透しましたが、学者の評釈は今頃でます。
 数回の4項提供罪(不特定多数)の罪数処理については、答えが出ていないようです。

提供する目的で所持するのであるから、態様の相違も同一の法益侵害に向けられた時間的・段階的なものに過ぎないといえる。行使目的の偽造通貨所持と行使罪も法益侵害の態様が異なり、併合罪となるのであろうか。また、最高裁は、法益侵害の態様が異なっても、法益が同一である場合は、混合的包括一罪を認めているのである。最高裁併合罪とする理由を、児童の権利を擁護しようとする児童ポルノ法の立法趣旨に照らしとするだけであるが、もう少し説明が必要であったように思われる。


なお、本決定は複数の提供行為や提供目的所持行為が行われた場合の罪数については直接には判示していないい。児童の権利擁護からすると併合罪とすることも考えられるが、「不特定若しくは多数の者」の構成要件は複数の行為を予定していると言え、一罪とすることもなお可能であろう。調査官解説では、この点については今後の判断に委ねられているとされる。

 数回の販売を併合罪にした判例としては大阪高裁平成14年9月12日がありますが、公刊されていません。