警察実務には即浸透しましたが、学者の評釈は今頃でます。
数回の4項提供罪(不特定多数)の罪数処理については、答えが出ていないようです。
提供する目的で所持するのであるから、態様の相違も同一の法益侵害に向けられた時間的・段階的なものに過ぎないといえる。行使目的の偽造通貨所持と行使罪も法益侵害の態様が異なり、併合罪となるのであろうか。また、最高裁は、法益侵害の態様が異なっても、法益が同一である場合は、混合的包括一罪を認めているのである。最高裁は併合罪とする理由を、児童の権利を擁護しようとする児童ポルノ法の立法趣旨に照らしとするだけであるが、もう少し説明が必要であったように思われる。
なお、本決定は複数の提供行為や提供目的所持行為が行われた場合の罪数については直接には判示していないい。児童の権利擁護からすると併合罪とすることも考えられるが、「不特定若しくは多数の者」の構成要件は複数の行為を予定していると言え、一罪とすることもなお可能であろう。調査官解説では、この点については今後の判断に委ねられているとされる。