対象罪名に児童ポルノ製造だけいれて、児童淫行罪とか青少年条例違反は入れないようです。sextingの強要罪も入りません。ポリシーがよくわかりません。
http://www.pref.osaka.jp/chiantaisaku/seihanzaitaisaku/index.html
http://www.pref.osaka.jp/attach/15107/00000000/231214syukou.doc子どもを守る』性犯罪対策について
(報告書)
平成23年12月16日
大阪府青少年健全育成審議会
4? 刑期終了者に対する対応
(1)現状
現在、国における刑期終了者に対する取組みは、更生保護施設(民間施設)における取組みや次の取組みなどが一部認められる程度である。
平成21年度から、厚生労働省と法務省との連携により、「地域生活定着支援事業」が創設され、高齢又は、障害を有する福祉的な支援を必要とする矯正施設退所者については、退所後直ちに福祉サービス等につなげるための準備を保護観察所と協働して進める「地域生活定着支援センター」を各都道府県に整備し社会復帰の支援を推進することとしており、大阪府においても
7月1日からセンター事業がスタートしている。
また、平成22年12月の犯罪対策閣僚会議において、内閣官房副長官を議長とした再犯防止対策ワーキングチームが設置され、刑務所出所者等の社会復帰支援を始めとした再犯防止に向けた取り組みの検討が始まったところである。(2)検討の方向
(社会復帰支援)
再犯防止対策ワーキングチームの資料にも、相談先が見つからないまま再犯に至っている者が多く支援が必要とされている。例えば窃盗受刑者の
29%が「事件を起こす前に誰かに相談したかったが誰に相談したらいいか分からなかった」と回答しているとのことである。また、法務省の矯正施設における性犯罪受刑者に対するアンケート結果(平成17年)においても、13歳未満に対する強制わいせつ・同致死傷の罪名の受刑者の48%が「再犯について何らかの不安を感じている」と回答し、再犯防止の方法としては、53%の者が「誰か、周りに支えてくれる人がいれば良い」と回答している。
さらには、3−(3)の警察官の対応(見守り活動)の成果にもあるように、相談などの取組みが、出所者の自己抑制につながるとの意見がある。
このことから、性犯罪刑期終了者に対する対応としては、何らかの相談の仕組みが必要であり、大阪府として刑期終了者をサポートする仕組みを構築するべきと考える。相談の仕組みとしては、保護観察所等の関係機関と十分協議し、例えば、臨床心理士、医師、民間の保護司、警察官等からなる「社会復帰支援員(仮称)」が対象者と面談し、社会復帰への相談に応じる等の取組みが考えられる。
なお、この仕組みづくりについては、条例の重要な位置を占めるものであることから、関係機関と十分連携をとりながら実効性のあるものにするとともに、条例の施行までには相談方法などを確立し、研修についても終了するなど、円滑な運営ができるよう準備しておく必要があると考える。(届出制度)
社会復帰支援の取組みを導入するためには、対象者と連絡をとることのできる環境を整える必要があり、居住地等を届けてもらう必要がある(届出義務化の制度創設)。
ただし、届出制度については、届出者を限定し、また、届出期間や届出情報を限定することにより、対象者に過度な負担を負わせることのないよう配慮する必要がある。さらには、対象者のプライバシーへの十分な配慮が重要であるとともに、届出情報の厳格な管理が求められる。届出者の限定ということでは、まず、対象性犯罪の範囲については、警察庁の通達を参考に、
・強制わいせつ、同未遂及び同致死傷、強姦、同未遂及び同致死傷
集団強姦、同未遂及び同致死傷、強盗強姦、同致死及び同未遂並びに常習強盗強姦、営利目的等略取及び誘拐のうちわいせつ目的のもの及び同未遂・加えて、児童ポルノの製造(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)
とすべき。また、対象性犯罪の対象年齢については、子どもを守るという視点から、児童福祉法、大阪府青少年健全育成条例等を参考に18歳未満とすべきと考える。
対象者の負担を軽減する観点から、届出期間を限定する必要がある。海外では、数十年間や無期限等であるが、その期間は5年間程度に限定することが適当と考える。また、届出情報についても、居住地等、届出制度の運用に必要不可欠な情報に限定すべきと考える。
また、届出制度の目的は、出所者の社会復帰支援が目的であることから、届出義務の実効性を担保する手法として罰則を設ける場合であっても、行政罰の秩序罰(行政処分)とすべきである。
届出情報については、大阪府を管理者とし、情報については、社会復帰支援活動に限定し、厳格に運用することが必要不可欠である。
なお、刑期終了者への対応については、新たな社会復帰支援の取組みの効果を検証しつつ、大阪府の財政状況等も踏まえ、引き続き、検討する必要がある。
(国への要望)
現状でも記載したように、国における現在の取組みは、あくまで刑期中の者に対して実施されており、刑期終了者に対する取組みは、更生保護施設における取組みなどが一部認められる程度である。
また、第二回再犯防止対策ワーキングチームの刑務所出所者等の再犯防止に向けた当面の取組み(案)にも性犯罪者への指導の充実を掲げていることから、次の点について国に対し要望すべきと考える。
・刑期終了者に対する対応については、本来、国が法制度として確立し、実施すべきものであり、できる限り早期に対応すること。
・国が実施するまでの間、全国に先駆けて実施する大阪府の取組みを財政的な面も含め、支援すること。5 検討に際してのその他の意見
一定の方向性について、報告書の「4大阪府が今後対応すべき内容」に示しているが、検討にあたっては、様々な観点から多様な意見が出された。その主な意見を下記に記すこととする。
■現行法上、犯罪行為に至らない程度の行為への対応
○ これまでも、周りの大人が子どもに声を掛けて子どもを育ててきた。規制するのではなく、逆に声かけをしてもらった方がいいのではないか。規制は、地域コミュニティの衰退につながるのではないか。○ 正当な理由がなければ、子どもに声かけできないというのはおかしいのではないか。
■刑期終了者に対する対応について
○ 刑期終了者に対して具体的な支援・メリットを示すことなく、届出義務を課すことがいいのか。○ 届出義務の対象者は制度創設時から全てを対象とするのではなく、まずは、初犯のものは除き、再犯を犯した者に限定する方がよいのではないか。あるいは、届出制度については、任意にして、更生に前向きな者だけを対象としてはどうか。
○ 本来、この問題は、一地方で議論するのではなく、国レベルでの議論がふさわしいのではないか。
■性犯罪者の特徴
○ 児童虐待に関する諸外国の研究結果などを見ると、性的虐待を含む児童虐待の加害者は、幼少期に虐待を受けている率が高く、被害者が加害者になるという悪循環が見られる。性犯罪者に対しての研究結果は見当たらないが、性犯罪者も同様の可能性が高いと感じられる。■医学の関与の必要性
○ 認知行動療法は効果があると言われているが、本当の意味で社会復帰に導くには、精神科医をはじめとする医師の関与が必要不可欠であると考える。
また、国レベルの話ではあるが、社会復帰後の支援を図るためには、性に関する異常な行動が病気として認められ、保険制度の範疇として治療を受けられる体制が構築されなければならないと考える。○ 特に、薬物療法については、性犯罪対策が充実している諸外国では、法が整備され自らの欲求を制御できない者に対しては、化学的去勢としての薬物療法が行われており、患者の状況、効果と副作用を検討し、レベルに合わせて治療されている。
薬物療法に使われる薬剤は、日本においては抗うつ薬として使われることがあるが、性的欲求を抑制する目的で処方することはできない。6 おわりに
社会一般的な感覚として、性に関する問題は、他の犯罪に比べて、被害者、その家族、職場、友人関係、地域社会に与える影響に配慮しなければならない点が多く、これまで公に議論がなされる機会は少なかったと思う。
この報告書をベースとした条例案を議会に提案され、「子どもを守る」性犯罪対策をすすめられるにあたって2点要望しておきたい。
1点目は、社会全体で子どもを守るという機運の醸成と発信である。
条例制定に際してその周知の際には、条例内容の広報だけでなく、子どもへの教育、保護者や地域の子どもの安全見まもり活動団体への啓発、さらには、被害に遭った時の対応など、府民への周知をトータルで実施すること。そして、大阪府として、子どもが被害に遭わない、性犯罪者を作らない社会の実現をめざすことの発信である。2点目は、部会において様々な意見が出されたことを踏まえ、条例施行後の例えば1年後など、一定期間後に、条例に基づく対策の評価を行い、必要に応じて新たな対策の構築や修正を加えるなど見直しを図ること。
さいごに、このテーマを検討するにあたり、報告書では性犯罪の加害者に対する支援方策を記載しているが、これは、円滑な社会復帰を願ったものである。
また、何の落ち度もなく、犯罪の被害に遭われた被害者の存在を置き去りにしているものではなく、さらには、刑期を終え、社会に復帰を果たした全ての人が、新たな犯罪を犯すとの前提で検討は加えていない。
あくまでも、一人でも多くの子どもが性犯罪の被害に遭わないようにする、一人でも多くの者が性犯罪者にならないようにするという観点から、国の動向を待つのではなく、広域自治体レベルで何ができるかという想いでとりまとめたものである。
当然ながら、究極の目的は、府内に住む全ての子ども、ひいては、府民が安心して暮らせ、安全であることを実感しながら生活を営めることであり、この議論がその一助になることを願っている。
7 青少年健全育成審議会第4部会委員名簿
岸本 由起子 弁護士
野口 克海 大阪教育大学監事
福井 裕輝 国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所司法精神医学研究部室長
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