2011.10.07 : 平成23年9月定例会(第7号) 本文
32 : ◯山内佳子君
◯山内佳子君 日本共産党の山内佳子です。ただいま議題となっております議案17件について、第2号議案京都府児童ポルノの規制等に関する条例案、第3号議案京都府府税条例等一部改正の件、第8号議案鳥取豊岡宮津自動車道野田川大宮道路建設工事委託契約締結の件の3件に反対し、他の議案に賛成の立場で討論します。最後に、第2号議案京都府児童ポルノの規制等に関する条例案についてです。
子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもに対する最悪の虐待行為であり、その非人間的な行為を絶対に容認することはできません。1人の被害者も出さない社会をつくり出すことこそ、大人社会の重大な責任です。
現在、児童ポルノそのものの作成・流通・販売と提供を目的とした所持については法律により禁止されており、法を厳格に運用するならば、ネット上に流れているほぼすべての児童ポルノを一掃することができます。我が党議員団は、法を厳格に運用して児童ポルノをなくしていくことは必要と考えますが、以下の理由で条例案には反対です。
第1に、児童ポルノの定義があいまいであることです。条例案第2条には児童ポルノの定義が規定されていますが、そこには「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」という法律で使用されているあいまいな定義が含まれています。児童ポルノを禁止・規制することによって守られるべきものは被写体となる児童の人権であり、一般的な写真や芸術作品など、見る側の主観によって禁止や規制対象となることがあってはなりません。
また、廃棄命令や刑事罰を伴う児童ポルノの定義については、全裸などとしていますが、全裸の幼児期の成長の記録などについては対象とならない保証はありません。
京都弁護士会の本条例案に対する意見書にも、「罰則を伴う規制法規については、罪刑法定主義の観点から規制対象が明確に定められる必要がある」と指摘されています。
第2に、単純所持を規制することによる人権侵害の危険や冤罪の可能性についてです。立入調査については委員会質疑で、「警察からの情報提供を得て所持が確実な人を対象として調査をする」という答弁がありました。また、立入調査を拒否しても罰則がないということも示されました。しかし、拒否できることをどのように伝えるのかについては一切答弁をされませんでした。これでは、任意の立入調査だとしながら「所持が確実だ」と最初から疑ってかかり、実質的な捜索が行われる危険性があります。
また、立入調査の際に、その他関係者にも質問させ、必要な資料の提出を求めさせることができることになっていますが、審議の中で、その他関係者とは、立入調査に必要な場合、職場の上司や雇用主、家主や家族、またそれ以外の関係者も含み、だれにでも質問したり資料の提出を求めることができること、さらに立ち入る場所については本人の部屋だけではなく家族の部屋や職場、本人以外が所有するパソコンなども調査の対象になることが明らかになりました。児童ポルノを所持している疑いを持たれていることが、家族や職場の同僚や上司に、さらには調査に必要ならばだれにでも知られてしまいます。
調査権や捜査権の濫用のおそれという点でも、また個人情報保護の点からも大いに問題ですし、大変な人権侵害を引き起こすおそれがあります。
同時に、存在の証明は比較的容易にできますが、不存在の証明、ないことの証明は非常に困難で、どこまで徹底的に調査をするのか、その歯どめもありません。
また、廃棄命令についても、送りつけられたメールに添付されていた児童ポルノ画像や荷物の中に忍び込まされていた写真などを知らない間に所持していた場合、知らないということの根拠を求められても証明は困難であり、誤った廃棄命令を受けてしまう可能性があります。そうした場合、それだけで、いわれのない社会的制裁を受ける可能性があります。
第3に、恣意的な運用がなされる危険があることです。条例案では、児童ポルノを所持・保管していると認められる者に対しては立入調査を行うとしています。しかし、インターネットなどによる児童ポルノの流出は、画像を所持した人物を特定することは大変困難です。京都弁護士会の意見書では、「立入調査に名をかりて恣意的に事実上の捜索が行われる危険性すらあり、いたずらに市民生活の平穏を乱すおそれがある」と警鐘を鳴らしています。
また、手続的に見ても条例案の骨子がホームページに掲載されたのが7月で、条例案そのものが示されたのが9月の本会議開会の直前です。まだまだ府民的な議論も不十分です。
本府がやるべきことは、児童ポルノによる被害児童を1人もつくらないために、情報リテラシー教育や性教育、府民への広報啓発などに努力すること、さらに被害児童の支援体制を強化し、人的体制も強化することです。
以上の理由で、第2号議案について反対です。34 : ◯奥田敏晴君
児童ポルノの規制等に関する条例であります。現在、いわゆる児童ポルノ法により、児童ポルノの提供、提供を目的とする製造・所持等の行為が禁止されているものの、依然として多くの児童ポルノが流通しております。
こうした事態にかんがみ、知事は昨年9月に条例検討会議を設置され、検討を重ねてこられました。今回の条例は、いわゆる単純所持の禁止や廃棄命令による規制、有償取得への罰則など、可能な限り厳しい内容となっているものと考えます。共産党は本条例に対し、児童ポルノの定義があいまいであるとか、人権侵害が発生するおそれがあるなどとして反対をしておられます。それでは児童の人権は一体どうなるのでしょうか。本条例は、児童ポルノから子どもたちを守ろうとの知事の強い決意を示したものであり、高く評価するものであります。
さて、この9月議会を閉じますと、京都府においてもいよいよ来年度当初予算に向けた編成作業が始まるかと思います。京都府財政を取り巻く環境は、円高が進行する中、府税収入の見通しに明るさが見えないことや、経済対策で設けられた基金の多くが今年度で期限を迎えることなど、大変厳しいことと存じます。しかしながら、「明日の京都」の実現に向けた課題は山積しております。この際、時代のニーズに合わない施策は廃止・縮小し、災害等の安心・安全や経済対策などに思い切って財源を重点配分いただくなど、大胆な予算編成をお願いしておきたいと思います。
最後に、我が自由民主党議員団は京都府議会第一党として、府民の皆様の安心・安全、「明日の京都」の実現に向け全力を挙げることをお誓い申し上げ、私の賛成討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)36 : ◯田中健志君
さらに、児童ポルノの規制等に関する条例については、18歳未満の児童ポルノの所持禁止や廃棄命令、有償取得等の罰則つき規制を定める日本で初めての条例であり、児童ポルノによる児童の権利侵害を決して許さない、児童ポルノによる被害を根絶するという強い決意があらわれており、これを高く評価するものでございます。
一方で、府民からは、不当に人権を侵害されるのではないか等の懸念の声も寄せられているところであり、当然ながら、人権に十分配慮した適切な条例の執行、府民への丁寧な説明などを通じ、誤解を生じさせないよう条例の趣旨・内容について理解をいただく取り組みを進めるとともに、啓発活動や被害者のケアについても引き続きの御尽力が必要であることを申し添えておきたいと思います。
また、それら以外に提出された議案についても、府政推進のため、それぞれに必要不可欠なものであり、今回提案されたすべての議案に賛意を表する次第でございます。38 : ◯林正樹君
次に、議案のうち、京都府児童ポルノの規制等に関する条例案についてであります。
児童ポルノ規制法では、児童ポルノの製造・販売は禁じているものの、所持を規制する法改正が進んでいない現状にあります。国の法整備を待たず、京都府が本条例を通じて児童ポルノの所持に係る規制を定めて取り組みを強化することは、我が会派もこれまで求めてきたことであり、これを評価いたします。
児童ポルノ規制についてはさまざまな観点からの議論はありますが、最も優先されるべきは子どもの人権を擁護する観点であります。その上で、府民の正当な権利を侵害することのないよう、条例の運用においては第6条「適用上の注意」を十分に踏まえて進められますよう強く求めます。
そうした立場から条例に基づく規制を行うとともに、被害児童とその保護者に対する支援体制を強化し、児童ポルノ撲滅に向けた意識啓発にさらに取り組まれますよう強く求めます。京都府警におきましても、本条例の運用において京都府との連携を密にしていただくとともに、児童ポルノ規制法を積極的に適用した取り締まりをさらに強化していただくよう要望します。インターネットの普及やIT技術の発展などによって、児童ポルノは、府県はもとより国を越えてグローバルに拡散しております。京都府単独の取り組みでは限界もあることから、法整備が早急になされるよう国への働きかけも求めるものです。
その他の議案につきましても、いずれも賛成するものであります。
最後に、公明党議員団は、数多くの困難な課題に直面する京都府政において、府民の安心・安全を確かなものとし、生活を守るため、現場の声、地域の実情に根差した政策を提言し、その実現に全力を尽くすことをお約束申し上げ、私の討論とさせていただきます。
御清聴まことにありがとうございました。(拍手)