児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

12歳に対する淫行が青少年条例違反となるか、強制わいせつ罪・強姦罪となるか

 12歳だと、青少年条例は適用範囲外で、強制わいせつ罪・強姦罪のみが適用されると考えています。そんなこと1審で主張したらダメですが。

http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/accident/news/20110318/477644
逮捕容疑は2009年11月14日、栃木市内のホテルで、県南在住の女子高生(15)=当時=が18歳未満と知りながら、みだらな行為をした疑い。同容疑者は別の少女(12)=当時=に対するいん行容疑で、今年2月に逮捕されていた。

 でないと、法律で親告罪とされているのを、条例でひっくり返すことになるからです。
 福岡高裁で指摘したことがありますが、福岡高裁H21.9.16は、年齢知情がないから強制わいせつ罪が成立しない場合には、青少年条例が適用されると判断しています。

福岡県青少年健全育成条例違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反等被告事件
福岡高裁H21.9.16
第1 事案の概要
1 1審判決が認定した罪となるべき事実の要旨は次のとおりであり,本件各公訴事実と同旨である。
被告人は,第1平成23年3月24日午ころ 福岡県a市内のホテルの客室において,当時12歳の女子児童(以下「被害児童」という)が18歳未満の者であることを知りながら,単に自己の性的欲望を満たす目的で,同女の乳房をもんだ上,ロ淫させるなどし,もって青少年に対し,わいせつな行為をした(以下「本件条例違反」ともいう),
第2
 3項製造罪
第3
 省略
第3 法令適用の誤りの主張について
1原判示第1についての法令適用の誤りの主張(控訴理由第1及び第6)について
(1)弁護人は,①13歳未満の者に対するわいせつな行為を刑法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽く処罰する本件条例違反の罪は,憲法94条,地方自治法14条1項に違反し無効である,②本件条例違反の罪は,刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であると解され,被告人の原判示第1の行為は同罪に当たるから,本件条例違反の罪を適用した1審判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあると主張する。
(2)まず,①の主張については,刑法176条後段の強制わいせつ罪は,13歳未満の者の性的自由を保護するとともに,性的な情操を保護することによって,青少年の健全育成を図る趣旨であると解され,青少年の健全な育成を目的とする本件条例違反の罪とその趣旨を共通にする面を有しているが,他方で,たとえ13歳未満の者に対してわいせつな行為に及んだ場合であっても,行為者において,相手の年齢を13歳以上18歳未満であると誤信していたときは,刑法176条後段の強制わいせつ罪の故意を欠くため同罪は成立せず,本件条例違反の罪のみが成立することになる。そして,このような場合について,13歳未満の者の保護を図っている刑法が,行為者を同法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽い法定刑を定めた本件条例違反の罪で処罰することを禁止しているとは解されないから,本件条例違反の罪が憲法94条,地方自治法14条1項に違反し無効であるはいえない。
(3)次に,②の主張については,本件条例違反の罪が刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であるとしても,刑事訴訟法が採用する当事者主義的訴訟構造下では,審判の対象である訴因をどのように構成するかは,検察官の合理的裁量に委ねられているから,検察官は,13歳未満の者に対するわいせつな行為をした行為者について,事案の内容や立証の難易,その他諸般の事情を考慮して,刑法176条後段の強制わいせつ罪ではなく,本件条例違反の罪として訴因を構成して起訴することは当然許されると解される(なお,本件条例違反の罪は,強制わいせつ罪と異なり,親告罪ではないが,13歳未満の者に対するわいせつな行為の事案において,被害者やその法定代理人である親権者等が,被害者の名誉等への配慮から事件が公になることを望まず,告訴しなかったり,あるいは告訴を取り下げた場合に,検察官が行為者を本件条例違反の罪で起訴することは現実的には想定しがたいから,13歳未満の者に対するわいせつな行為を本件条例違反の罪として起訴することを許容しても,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨が没却されるとはいえない)。
 これを本件について見ると,・・・検察官は,被害児童の年齢に関する被告人の認識の立証が必ずしも容易でないこと等を考慮し,刑法176条後段の強制わいせつ罪ではなく,本件条例違反の罪として訴因を構成し,被告人を起訴したと推察され,そのような検察官の公訴提起に関する裁量権の行使には合理性があったと認められる。・・・ことをも併せ考えると,原判決が,被告人に対して,検察官が起訴した本件条例違反の罪の成立を認めたことに,法令適用の誤りがあるとは到底いえない。
(4)以上のとおり,原判示第1について法令適用の誤りをいう弁護人の主張は理由がない。