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津地検・津地裁は訴因特定に甘い。
名古屋高裁は強制わいせつ罪と3項製造罪は観念的競合で一貫しているようですが、それ以外に広げないように必死です。
裁判年月日 平成23年 7月 5日 裁判所名 名古屋高裁 裁判区分 判決
事件番号 平23(う)70号
事件名 強姦、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律違反、三重県青少年健全育成条例違反被告控訴事件
理由
本件控訴の趣意は,弁護人加藤寛崇作成の控訴趣意書に,これに対する答弁は,検察官岡崎真尚作成の答弁書に,それぞれ記載のとおりであるから,これらを引用する。
控訴趣意の論旨は,理由不備,理由齟齬,訴訟手続の法令違反,事実誤認,法令適用の誤り及び量刑不当の各主張である。
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次に,(2)の点について検討すると,原判決は,犯罪事実第1の2,第2の2,第3の2につき,法令の適用の項において,いずれも児童ポルノ処罰法7条3項,1項,2条3項1号,3号に該当すると判示しているのであるから,各犯罪事実において,同法2条3項1号のみならず3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した旨の具体的事実をも摘示する必要があるというべきである。しかるに,原判決は,上記各犯罪事実において,各児童に「被告人と性交を行う姿態等」をとらせた上,これを写真撮影し,その静止画を記録媒体に記録させて描写し,もって「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態等」を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した旨を摘示するにとどまり,児童ポルノ処罰法2条3項3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した旨の具体的事実を摘示していないのであるから,原判決には,上記各事実に関し,罪となるべき事実の記載に理由の不備があるといわざるを得ない。
論旨はこの点において理由がある。そして,原判決は,原判示第1の2,第2の2,第3の2の各児童ポルノ製造罪とその余の各罪とが刑法45条前段の併合罪の関係にあるものとして1個の刑を科しているから,結局,その余の控訴趣意について判断するまでもなく,原判決は全部につき破棄を免れない。
2 破棄自判
よって,刑訴法397条1項,378条4号により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当裁判所において更に判決する。
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所論は,強姦罪(刑法177条後段)と児童ポルノ製造罪(同控訴理由15),いん行罪(本条例23条1項)と児童ポルノ製造罪(同控訴理由16)は,それぞれ併合罪ではなく包括一罪又は観念的競合の関係にある,という。
しかしながら,本件のように「13歳未満の女子」あるいは「青少年」と性交をしてその姿態等を撮影し児童ポルノを製造した場合において,「姦淫」(刑法177条後段)あるいは「いん行」(本条例23条1項)と児童ポルノ処罰法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,各両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,各両行為の性質等に鑑みると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,強姦罪(刑法177条後段)と児童ポルノ製造罪,いん行罪(本条例23条1項)と児童ポルノ製造罪は,それぞれ併合罪の関係にあるというべきである。所論は,について,写真撮影を内容とする児童ポルノ製造は「わいせつな行為」(刑法176条)にも該当し,児童ポルノ製造罪と強制わいせつ罪とは観念的競合の関係に立ち,強制わいせつに接着して強姦がされた場合,包括して1個の強姦と評価されることに照らせば,強姦と児童ポルノ製造は,包括一罪又は観念的競合の関係にある,について,写真撮影を内容とする児童ポルノの製造は「わいせつな行為」(本条例23条1項)にも該当し,児童ポルノ製造と「わいせつな行為」とは観念的競合の関係に立ち,「いん行」に接着して「わいせつな行為」がされた場合,包括して本条例23条1項違反の罪となることに照らせば,「いん行」と児童ポルノ製造は,包括一罪又は観念的競合の関係にある,などと主張するが,罪数関係については,起訴されている事実及び罪名を比較検討して判断すべきものであると解されるから,起訴されていない事実ないし罪名を媒介にして科刑上一罪の関係を導き出そうとする所論の主張は採用することができない。
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関連判例
平成19年 3月 8日 札幌高裁 判決 平18(う)339号 児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件平成17年12月26日 東京高裁 判決 平17(う)2131号 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件