正当な施術と誤信して抗拒不能になっているから準強制わいせつ罪。
錦織聖「被害者を欺罔し錯誤に陥れて姦淫する行為と準強姦罪」研修632号
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101203-00000088-jij-soci
容疑者は3月、同院で20代女性の施術中に、服の上から下半身を触った疑いが持たれている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101203-00000119-mai-soci
逮捕容疑は3月、経営する接骨院で、20代女性を施術中に服の上から下半身を触ったとしている。女性から被害届を受けた千葉西署が、11月26日に逮捕した。容疑を認めているという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101204-00000035-sph-soci
開業した「接骨院」は、1時間待ちは当たり前で、行列ができるほど込み合うことも。「神の手」「ゴッドハンド」と称される容疑者に施術してもらおうと、飛行機を使い泊まりがけで通院する患者もおり、1か月先まで予約がいっぱいの状態だったという。
五輪出場経験のあるマラソン選手は、容疑者の逮捕にショックを隠しきれない様子。「施術がうまいと有名なトレーナーでした。話しやすく、親切な人でした。まさか、という思いです」と言葉少なに話した。
件数にもよるんですが、こんな量刑です。「陰部のツボ」だとか言って、わいせつの意図が争われたりします。
「施術」による準強制わいせつの裁判例
神戸地裁懲役1年06月執行猶予3年
岡山地裁懲役3年実刑
広島高裁懲役3年実刑
仙台地裁懲役1年実刑
京都地裁懲役2年執行猶予4年
福岡地裁懲役2年執行猶予3年
福岡地裁懲役3年執行猶予5年
横浜地裁懲役1年06月執行猶予3年
神戸地裁懲役1年06月執行猶予3年
広島地裁懲役2年執行猶予5年
東京地裁懲役5年実刑
宮崎地裁懲役2年執行猶予3年
大阪地裁懲役1年06月執行猶予4年
盛岡地裁懲役2年執行猶予4年
高松地裁懲役1年06月執行猶予3年
高松地裁懲役3年執行猶予5年
盛岡地裁懲役3年執行猶予5年保護観察
旭川地裁懲役1年04月実刑
札幌地裁懲役1年06月実刑
仙台地裁懲役6年実刑
横浜地裁懲役2年実刑
広島地裁懲役1年06月執行猶予4年保護観察
行為否認の例。
水戸地方裁判所平成21年10月6日
被告人を懲役1年4月に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
訴訟費用は被告人の負担とする。(罪となるべき事実)
被告人は,茨城県高萩市(以下略)所在の△△ビル1階において,「B施術院」の名称で施術院を営んでいた整体師であるが,Aが勤務会社の広告チラシ張り替え業務のため同院を訪れた際,同女に整体施術を受けるよう誘い,平成20年11月7日午後0時ころから同日午後2時ころまでの間,同所において,同女が整体施術を受けられるものと誤信して抗拒不能の状態にあるのに乗じ,整体施術を装ってわいせつな行為をしようと企て,同女に対し,その乳房や陰部付近をなでるなどした上,仰向けに寝た同女に上から覆い被さり,着衣越しに自己の陰部を同女の陰部にこすりつけるなどし,もって同女の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。
(証拠の標目)
(事実認定の補足説明)
(量刑の理由)
本件は,整体師である被告人が,自らの営む施術院において,整体の施術であると誤信させて女性にわいせつ行為を行った準強制わいせつの事案である。
被告人は,一人で施術院にいる際に若い女性が来院したことを奇貨として劣情を催し,性的欲求を満たすため,被害者が明確に拒絶,抵抗をしないことに乗じて犯行に及んだものと認められ,犯行に至る経緯やその低劣な犯行動機に酌量の余地は全くない。
犯行態様は,整体の施術を装いながら,卑わいな言動を織り交ぜて,着衣越しに被害者の乳房や陰部周辺をなで回し,被害者が整体施術か否か半信半疑の状態で明確に拒絶,抵抗しないことに乗じて犯行をエスカレートさせ,性交類似の動作をして自らの陰部を着衣越しに被害者の陰部にこすりつけたり,直接被害者の胸を触ったりし,さらに,いったん帰ろうとした被害者を呼び止め,胸や下腹部を触るなどしたもので,自らの職業を悪用し,約1時間半もの間断続的に行われた,巧妙,卑劣かつ執拗な犯行で悪質である。
被害者の精神的打撃は大きく,犯行後眠れなくなって精神科に通うことを余儀なくされ,また,被告人に似た人を避けたり,密室に一人でいるのが怖くなるなどの影響も出ており,本件犯行の結果は重い。慰謝の措置は全くとられていない。被害者の処罰感情が厳しいのも当然である。
被告人は,不合理な弁解に終始し,反省の態度は全く窺えない。
以上によれば,被告人の刑事責任は到底軽いものではない。
他方,わいせつ行為の多くが着衣の上からのものであるなどその程度が強烈なものとまではいい難いこと,被告人にはこれまで前科がないことなど,被告人のために斟酌すべき事情もある。
そこで,諸般の事情を考慮し,主文の刑を量定した。
よって,主文のとおり判決する。
(検察官衣笠利彦,私選弁護人安江祐(主任),同谷萩陽一,同長瀬佑志各出席)
(求刑 懲役2年)
平成21年10月6日