児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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強盗罪や強姦罪など人身に対する重大な罪においては,併合罪として同時審判された場合であっても,それぞれの罪に対する量刑を単純に加算した量刑と,それほど違わない量刑をする傾向も強まっている(高松高裁H22.12.2)

 両事件を同じ高裁合議体に見てもらえるだけでも幸運です。

       強姦致傷被告事件
高松高等裁判所判決平成22年12月2日
LLI/DB 判例秘書登載
2 原判示第1の事件につき,刑の均衡を破っているとの所論について
  所論は,被告人は,原判示第1の事件後に,強盗致傷罪で懲役3年10月に処せられており,原判示第1の罪とこの罪とは併合罪の関係にあるから,両罪が同時に裁判を受けた場合と同じ結果となるようにしなければならないのに,原判決は,原判示第1の罪につき懲役4年に処しているから,強盗致傷罪と併せて懲役7年10月に処したことになり,強盗致傷罪と強姦致傷罪の法定刑の均衡を害しているのみならず,明らかに併合の利益を奪っている,という。
  ところで,いわゆる確定裁判がある場合の余罪の量刑については,刑法上は,51条により,執行段階での軽減が図られているのみであるが,その趣旨にかんがみ,同時審判された場合に予想される量刑をも念頭において量刑する運用が行われている。
  しかし,余罪の審判といっても,さまざまな場合があり,常に,余罪と確定裁判のあった罪とが同時に裁判を受けた場合と同じ結果になるようにしなければならないものではなく,また,実際にも困難である。ことに,本件においては,被告人は,上記強盗致傷罪の裁判の際,原判示第1の事件を隠して裁判を受けたから,両罪を併合して審理をすることは不可能であり,捜査機関や裁判所のみの都合により,両罪が併合されずに審理を受けた場合などに比べれば,併合の利益を保障しなければならない必要性は,それほど大きくない。
  また,原判示第1の強姦致傷罪は,原判決が説明しているように,重大悪質事案であり,確定裁判のあった強盗致傷罪も,通行中の19歳の女性から,金品を強取しようと企て,声を出したら殺すぞなどと脅迫し,両手首をつかんで路上に押し倒し,投げ飛ばすなどの暴行を加えて,現金約9800円等が入ったバッグを強取し,被害者に加療約1週間を要する頭部皮下血腫等の傷害を負わせたという重大悪質事案であり,被告人は,原判示第1の強姦致傷罪の約4か月後に,この強盗致傷罪を犯しているから,人身に対する重大悪質犯罪を繰り返す傾向があり,両罪が併合されて審理を受けた場合,原判示第1の罪の懲役4年と確定裁判のあった強盗致傷罪の懲役3年10月を合計した懲役7年10月に近い量刑がなされる可能性も少なくなかったと考えられる。
  さらに,近時は,本件のような強盗罪や強姦罪など人身に対する重大な罪においては,併合罪として同時審判された場合であっても,それぞれの罪に対する量刑を単純に加算した量刑と,それほど違わない量刑をする傾向も強まっている。
  原判決は,量刑の理由で,原判示第1の罪の量刑にあたって,確定裁判があることを考慮して量刑したとしており,その考慮の内容や程度は明らかにされていないが,上記のような事情を考慮し,大幅に刑を軽減すべきではないとしたものと解され,その判断が誤りとはいえない。
  次に,強姦致傷罪の法定刑が強盗致傷罪のそれより軽いからといって,強盗致傷罪の刑より,常に強姦致傷罪の刑を軽くしなければならないものでなく,その法定刑あるいは処断刑の範囲内で,犯情を考慮して量刑すべきものであることは当然のことであり,原判示第1の罪に対する懲役4年の量刑が,強盗致傷罪による確定裁判の量刑である懲役3年10月より重いからといって,何ら問題はない。
3 原判示第2の事件につき,刑の均衡を失しているとの所論について
  所論は,同種事案の量刑と比較して,原判示第2の罪の量刑は,刑の均衡を失している,という。
  しかし,原判決も指摘するように,平成16年に,性犯罪の法定刑を引き上げるなどの刑法の改正もあり,近時は,性犯罪一般の量刑はかなり重くなっているから,そのような近時の量刑傾向からすると,原判示第2の罪に対する懲役7年の量刑が,刑の均衡を失しているとはいえない。
4 原判示第1の事件の懲役刑と原判示第2の事件の懲役刑の合計が重すぎるとの所論について
  所論は,確定裁判があって,二つの主文を言い渡す場合であっても,両罪が併合罪である場合との均衡は考慮されなければならず,合計11年間の懲役刑は,これが併合罪として審判された場合の量刑と,明らかに刑の均衡を失している,という。
  しかし,刑法は,二つ以上の罪の間に,確定裁判がある場合には,併合罪としていないから,それぞれの罪について量刑するのは当然であり,これが併合罪とされる場合の量刑との均衡をいう所論は,併合罪に関する刑法の原則に反し,採用の余地はない。
  本件各犯行の結果,態様,動機の悪質性,重大悪質犯罪を繰り返し,規範意識に問題があることなどの事情を考慮して,被告人を,原判示第1の罪について懲役4年に,原判示第2の罪について懲役7年に処した原判決の量刑は,重すぎて不当であるとはいえない。論旨は理由がない。
  よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,刑法21条を適用して,当審における未決勾留日数中90日を原判決の原判示第2の罪の刑に算入し,当審における訴訟費用を被告人に負担させないことにつき,刑訴法181条1項ただし書を適用して,主文のとおり判決する。
    平成22年12月2日
      高松高等裁判所第1部
       裁判長裁判官  長谷川憲一
          裁判官  山本恵三
          裁判官  赤坂宏一