児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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[追う]「裁判員制、性犯罪除外を」 被害者ら情報流出を懸念

 裁判員対象となったのは、積極的理由はなく、性犯罪の被害者の視点を理解する人が参加してなかったからなんですね。
 実際の事件では、被害者のプライバシー保護として、検察官請求証拠から被害者の住所・本籍地が消えたり、被害者特定事項が公判で消されたりしているのを知らない人が決めたようです。

[追う]「裁判員制、性犯罪除外を」 被害者ら情報流出を懸念
2009.07.05 読売新聞社
 性犯罪は、なぜ裁判員制度の対象になったのか。
 対象事件の範囲を含めた制度設計は2002〜04年、政府の裁判員制度・刑事検討会で行われた。会合は32回開かれたが、検討会メンバーだった弁護士の四宮啓・国学院法科大学院教授は「検討会で、性犯罪を対象にすべきかどうかの議論はなかった」と振り返る。
 対象に決まったのは〈1〉刑の上限が死刑または無期懲役の事件〈2〉傷害致死などの故意で人を死なせた事件。「重大犯罪は国民の関心が高く、社会的影響も大きい」との観点からだった。
 「被害者への配慮が必要な事件は、性犯罪に限らない。線引きは難しい」と四宮教授。「司法への国民参加と被害者保護は別の問題で、両立するはず。現行法の中で工夫すべき」と提言する。
 しかし、最高裁が提示した情報流出防止の対策案も、実際に行われるかどうかの保証はない。インターネット上で万が一情報が漏れた場合、完全に消し去ることは事実上不可能だ。
 常磐大国際被害者学研究所准教授の守屋典子弁護士は「裁判員法の改正で、性犯罪を対象から外すしか根本的な解決策はない。このままでは被害者の告訴が減って加害者を処罰できず、社会的な不利益につながる」と指摘した。

 日本の刑法の法定刑は下限と上限が幅広いので、こういう罪名での対象事件の決め方では、強姦を100件やって併合罪加重で懲役30年になっても対象事件にならず、加療2日間程度で執行猶予になるような強制わいせつ致傷が対象事件になるわけですよ。

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
第2条(対象事件及び合議体の構成)
地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二 裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

第3条(対象事件からの除外)
地方裁判所は、前条第一項各号に掲げる事件について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。

刑法第14条(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)
死刑又は無期の懲役若しくは禁錮減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。
2 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。

第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
第177条(強姦)
暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
第178条(準強制わいせつ及び準強姦)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。
第178条の2(集団強姦等)
二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。
第181条(強制わいせつ等致死傷)
第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 第百七十七条若しくは第百七十八条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は五年以上の懲役に処する。
3 第百七十八条の二の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。

罪名で指定しているので、こんなのも裁判員対象になっています。

強制わいせつ致傷罪の執行猶予事案
仙台 地裁 懲役3年 執行猶予5年 保護観察
長崎 地裁 懲役3年 執行猶予4年
長崎 地裁 懲役3年 執行猶予4年
奈良 地裁 懲役3年 執行猶予4年
広島 地裁 懲役3年 執行猶予4年 保護観察
東京 地裁 懲役3年 執行猶予5年
福島 地裁 懲役3年 執行猶予4年
山口 地裁 懲役3年 執行猶予4年
広島 地裁 懲役3年 執行猶予5年 保護観察
奈良 地裁 懲役3年 執行猶予5年 保護観察