児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

前最高裁判所調査官村田一広「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの) 2条3項にいう「児童ポルノ」の意義 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの) 7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否」ジュリスト1563号

最高裁判所調査官村田一広「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの) 2条3項にいう「児童ポルノ」の意義 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの) 7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否」ジュリスト1563号

 併合罪の主張をして軽くなった。
 主文で「無罪」というのを欲しかった。

被告人は控訴し, 法令適用の誤り,事実誤認,量刑不当を主張したところ, 原判決(東京高判平成29.1.24判時2363号110頁)は,本件18点の提供罪と本件16点の提供罪とは併合罪の関係に立つとみるべきであり,第1審判決の罪数に関する判断には法令適用の誤りがあるとして, 第1審判決を破棄し,被告人を罰金30万円(労役場留置1日換算5000円)に処した上,本件18点に係る児童ポルノの提供について無罪を言い渡した

 実務的には被害者不詳の場合、タナー2度くらいまでしか立件できなくなりました。

Ⅳ、本決定について
1 本決定は,児童ポルノ法2条3項にいう「児童ポルノ」の意義について, 判旨Iのとおり,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって, 同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まない旨を判示した。
本件の事案は,被告人が本件各写真を素材として画像編集ソフトを使用して本件各CGを作成するなどした点に特徴があるところ,最高裁第一小法廷は,本件事案及び上告趣意に鑑みて, 児童ポルノの意義を確認した上で,本件各CGが児童の姿態を描写したものであるとの原審の認定判断を是認したものと解される。
2本決定は, 判旨Ⅱのとおり, 児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪が成立するためには, 同条4項に掲げる行為の目的で, 同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り, 当該物に描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることを要しない旨を判示した。
本決定は,児童ポルノ製造罪における保護法益について明示的に説示してはいないが,児童ポルノに描写されている人物が児童ポルノの製造時点で18歳以上になったからといって,児童ポルノ製造罪における保護法益の侵害が否定されるわけではないとの理解を前提としていることは明らかである。
児童ポルノは実在する被写体児童の性的姿態を記録化したものであり,児童の性的姿態を記録化すること自体が性的搾取として,その個人的法益を侵害するものであるところ,児童ポルノを複製・加工したり,第三者に提供したりする行為は, そのような性的姿態の記録を更に拡散する行為であって, その個人的法益を侵害することに変わりはないものと考えられる。
児童は,時間の経過にかかわらず, 自己の性的姿態(児童ポルノ) を拡散されることのない法的利益を有しており, そのような法的利益は, 当該児童が18歳以上となったことによって消滅する性質のものではないものと考えられる。
山口厚裁判官の補足意見は, このような観点から法廷意見を補足して説明したものと解される。
被告人の上告趣旨は,児童ポルノ製造罪の保護法益につき,個人的法益(被写体児童)説を前提として,本件各CGに描写された「児童」が本件行為の時点で成人したならば「児童の権利」の侵害はない旨をいうものであるが,仮に個人的法益(被写体児童)説を前提としても,本件行為は本件各CGに描写された人物の個人的権利を侵害するものであったと解される。
ただし,本決定は,児童ポルノ製造罪の保護法益について,最高裁としての見解を明確にしたわけでないことには留意する必要がある(なお,山口裁判官の補足意見によれば,社会的法益説を前提としていないことは明らかであるように思われる)。
3本件は, CGを作成するなどした行為が児童ポルノ製造罪に当たるか否かが問題となった初めての事案であり,本決定は,児童ポルノ製造罪に関する法令解釈を示したものとして実務上重要な意義を有するものと解される