児童ポルノ製造罪と前提となる行為の罪数(製造罪は性交の罪に吸収されるか?)

 手持ちの未公開判例を整理しました。
 未公開なのになんで持ってるのか? 全部、弁護人だったからですよ。

阪高裁 平成14年9月10日
②被告人は,被害児童の撮影を自己の性欲を満たすために行ったものであり,しかも,被害児童は6歳であるから,暴行脅迫がなくとも,これを裸にして撮影した被告人の行為は強制わいせつの実行行為にあたるところ,強制わいせつ罪は親告罪であり,公訴を提起するには,被害児重ないしその保護者の告訴が必要であるが,本件においては被害児童の保護者は犯人を告訴しない旨供述しているのであるから,強制わいせつ罪より法定刑の軽い児童ポルノ製造罪で起訴して処罰することは,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨に反し許されないのに,被害児童の保護者の告訴のないまま起訴した点において(控訴理由第7),・・・原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,というものである。しかしながら,・・・②についは,児童ポルノ製造罪の保護法益は上記第1記載のとおりであり, この処罰の目的は,個人の性的自由を保護法益とする強制わいせつ罪のそれとは異なることは明らかであり,児童ポルノ製造罪が強制わいせつ罪の構成要件の一部とはいえず,また,児童ポルノ製造罪が親告罪とされなかったのは,親告罪とすると,加害者やその背後の組織からの報復を恐れて告訴できなかったり,あるいは保護者に対する金銭的な示談で告訴を取り下げさせたりすることが通常の性犯罪以上に予想され,所期の目的が達成ができないためであり,従って,本件において,被害児童の保護者に被告人を告訴する意思がないのに本件公訴を提起したことは,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨を潜脱することにはならない。

名古屋高等裁判所金沢支部
平成14年3月28日宣告
第2 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の論旨(控訴理由第4及び第23)について
1 所論は,原判示第2ないし第4の各行為は,被害者らの真摯な承諾なく抗拒不能の状態でされたもので,強姦,準強姦,強制わいせつ,準強制わいせつ罪に当たるとし,いずれについても被害者らの告訴はなく,親告罪たる強姦罪等の一部起訴は許されないから,本件起訴は違法であって訴訟手続の法令違反があるという(控訴理由第23)。
 しかしながら,児童買春罪や児童買春処罰法7条2項の児童ポルノ製造罪(以下,単に「児童ポルノ製造罪」という。)は親告罪ではなく,しかも強姦罪等とは構成要件を異にしていて,児童買春罪等が強姦罪等と不可分の一体をなすとはいえず,原判示第2ないし第4が強姦罪等の一部起訴であるとはいえないから,告訴欠如の如何を論ずるまでもなく(最高裁昭和28年12月16日大法廷判決・刑集7巻12号2550貢参照),所論は失当である。

名古屋高等裁判所金沢支部平成14年3月28日宣告
2 児童買春罪,児童ポルノ製造罪と児童に淫行をさせる罪との関係等について(控訴理由第1ないし第6,第16,第18及び第21)
(1)所論は,児童買春罪と児童に淫行をさせる罪とは,行為態様で区別され,後者が成立しない場合に前者が成立するという補充関係にあるとし,本件犯行のように多額の代償を約束して同意を得て性交ないし性交類似行為をするのは児童の純然たる自由意思によるものではなく,児童に淫行をさせる罪に当たり児童買春罪は成立せず,本件各犯行に同罪を適用したことには法令の適用の誤りがあるなどという(控訴理由第1)。
 しかしながら,児童買春罪は,児童買春が児童の権利を侵害し,その心身に有害な影響を与えるとともに,児童を性欲の対象としてとらえる社会風潮を助長することになるため,これを処罰するものであるのに対し,児童に淫行をさせる罪は,国内における心身の未熟な児童の育成の観点から,児童に反倫理的な性行為をさせることがその健全な発育を著しく阻害するためこれを処罰するもので,その処罰根拠を異にし,しかも両罪の規制態様にも差異があることからすると,被告人自身が淫行の相手方になったと認められる場合にあって,その際通常伴われる程度の働きかけを超えて未成熟な児童に淫行を容易にさせ,あるいは助長,促進するといった事実上の影響力を与え淫行をさせる行為をしたと認められるようなときには,両罪に該当することもあり得ると解される。したがって,児童買春罪は常に児童に淫行をさせる罪を補充する関係にあるとする所論は前提において失当である。加えて,多額の対償の供与の約束をして性行為に同意させることが直ちに児童の自由意思を失わせるものとはいい難く,関係証拠によれば,先に述べたとおり(前記第2の1),本件各児童買春行為は対償の供与の約束により児童がその意思によって応じたものと認められるから,法令の適用に誤りはなく(もとより本件事案が訴追裁量を逸脱した起訴であるとは認められない。),所論を採用することはできない。
(2)また,所論は,児童ポルノ製造罪についても,同様に,児童に淫行をさせる罪と補充関係にあって,原判示第3の2の行為は同罪に該当するとし(控訴理由第3),さらにこれを前提として原判示第3の1の児童買春罪と同第3の2の児童ポルノ製造舞とをいずれも児童に淫行させる罪1罪と評価すべき旨主張する(控訴理由第6)。
 しかしながら,児童ポルノ製造罪と児童に淫行をさせる罪とではその構成要件が明らかに異なり,補充関係にあるなどとは到底いえないから(児童買春罪と児童に淫行をさせる罪との関係については(1)で述べたとおりである。),所論は前提を誤っていて失当である(なお,以上に述べたところからすれば,児童買春罪,児童ポルノ製造罪が成立するときには常に児童に淫行をさせる罪が成立するとし,児童買春罪,児童ポルノ製造罪を独立の罰則として制定する必要は全くないなどとする主張(控訴理由第16)も理由がないことは明らかである。)。そして,関係証拠によれば,原判示第2ないし第4の各行為については,児童買春ないし児童ポルノ製造罪が成立すると認められるから,上記各行為につき,証拠上児童に淫行をさせる罪が成立することは明らかであるとし,裁判所には検察官に対し訴因変更を命じ又はこれを促すべき義務があるのにこれをしなかったことに訴訟手続の法令違反(審理不尽)があるなどとの主張(控訴理由第18)も失当であって採用できない。