大阪高裁r3.7.14(高等裁判所刑事裁判速報集(令3)号403頁)は送信させ保存した行為をわいせつ行為とするものではない

阪高裁r3.7.14(高等裁判所刑事裁判速報集(令3)号403頁)は送信させ保存した行為をわいせつ行為とするものではない
 最近この大阪高裁判決を引用して、「送信させ・保存し」も猥褻行為だという検察官がいるんですが、間違っていますよ。
 大阪高裁事件の、強制わいせつ罪(176条後段)の訴因は「陰部、乳房等を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させ、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし」ということで、起訴されたのは撮影行為までです。高裁判決でも送信・保存まではわいせつ行為とされてないという判断になっています。

判例ID】 28302776
【裁判年月日等】 令和3年7月14日/大阪高等裁判所/第6刑事部/判決/令和3年(う)287号
【事件名】 強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【裁判結果】 控訴棄却
【参照法令】 刑法 176条
【出典】 高等裁判所刑事裁判速報集(令3)号403頁
【重要度】 1
28302776
大阪高等裁判所
令和3年(う)第287号
令和03年07月14日
控訴申立人 被告人

判決要旨
第1 事案の概要
 1 罪となるべき事実(要旨)
  被告人は、被害者が13歳未満であることを知りながら、〈1〉遠隔地にいた同人に対し、ダイレクトメッセージ機能を使用して、その陰部、乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し、その頃、被害者にそのような姿態をとらせていわゆる自撮りをさせた上、〈2〉その画像データをダイレクトメッセージ機能を使用して被告人のスマートフォンに送信させて、アプリケーションソフト運営法人が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させた。
 2 訴訟経過
  検察官は、〈1〉行為(本件行為)を強制わいせつ罪、〈1〉及び〈2〉行為を児童ポルノ製造罪として、別個の訴因で(併合罪として)起訴した。
  弁護人は、本件行為につき、被害者に裸体を自撮りさせただけでは、遠隔地にいる被告人が見ることはできず、性的侵襲は弱いので、「わいせつな行為」に該当しないか、該当するとしても強制わいせつ未遂罪が成立するにとどまる旨主張したが、原判決は、本件行為につき強制わいせつ罪の成立を認め、罪数につき、児童ポルノ製造罪と観念的競合の関係にあると判断した。
  これに対し、被告人が控訴し、原審同様強制わいせつ罪の成立を争ったが、控訴審判決はこれを排斥し、控訴を棄却した。
第2 控訴審判示
 1 刑法176条の「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うためには、行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、当該行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを具体的事実関係に基づいて判断するのが相当である(最大判平29・11・29・刑集71巻9号467ページ参照。)。
 2 これを踏まえて検討すると、本件行為は、当時9歳の女子児童である被害者に対してその陰部、乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し、被害者にそのような姿態をとらせてそれを撮影させたというものであり、撮影させた部位のうち、陰部(性器自体は写っていないものの、その周辺部である。)は性的要素が強く、乳房も性を象徴する典型的な部位である。また、衣服を脱がせる行為(又は衣服を着けない姿態をとらせる行為)は、裸になることを受忍させてその身体を性的な対象として行為者の利用できる状態に置くものであって、単独でも「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものであるし、続いてそうした衣服を着けない姿態を撮影する行為も、自ら性的な対象として利用できる状態に置かせた裸体を、さらに記録化することによってまさに性的な対象として利用するものであり、それによって性的侵害性が強まるといえるから、「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものといえる。
  本件では、被告人は遠隔地から被害者に指示しているから、直接被害者の姿態を目にしていないという点で、面前で行う場合と比べて被害者の性的自由を侵害する程度が小さいとはいえるものの、被害者に陰部等を露出した姿態をとらせ、これを撮影させた行為は、被害者に一定の性的行為を行わせ、かつ、その内容を第三者が知り得る状態に置く行為であり、被害者の身体を性的に利用する行為といえる。本件は、行為そのものから直ちに「わいせつな行為」とまで評価できないものの、一定の性的性質を備えていて、「わいせつな行為」に当たり得るものというべきである。なお、本件行為には被害者に撮影させた画像データを被告人に送信させたことや被告人が受信した画像データを閲覧したことは含まれていないが、被害者に陰部等を露出させた姿態をとらせてそれを撮影させたことによって、被告人を含む他人がその画像を見ることがあり得る状態に置かれており、性的侵害性は大きいといえるし、被告人は被害者に対して撮影した画像データを被告人に送信することも要求して撮影させており、被害者がこの要求に従って画像データを送信して被告人がこれを見ることになる具体的な危険性も認められるから、撮影させた画像データを被告人に送信させたこと等が含まれていないことが、「わいせつな行為」該当性を否定する事情とはならない。
 3 さらに、本件の具体的状況等についてみると、被告人は当時53歳の中年男性、被害者は当時9歳(小学3年生)であり、動画配信アプリケーションを通じて知り合い、ダイレクトメッセージ機能を使用してやり取りをしていた関係にすぎず、直接の面識はなく、本件行為は、被告人と被害者が性行為をしているかのようなメッセージのやり取りをしている状況においてなされたものである(例えば、被告人は、被害者に対し、陰部等を露出した姿態の画像データを送信させた直後に、「マンジル、白いの出てくるからね」「おちんちんを、なめてごらん」「ぬれたおちんちんをまんこにこするね」というメッセージを、乳房等を露出した姿態の画像データを送信させた直後に「もみながらなめるね」「おちんちんもこすってるぞ」といったメッセージを送信している。)。また、被告人にはかねてから年少の女児を対象とする性的嗜好があった。このような本件行為が行われた際の具体的状況等をも考慮すると、本件行為は性的な意味合いが相当強いものといえるから、「わいせつな行為」に当たるといえる。
 4 原判決は、被害者への身体的接触がなく、被告人が撮影時に被害者にとらせた姿態を見ていないという本件行為の特徴を指摘して本件行為そのものが持つ性的性質は不明確であるともいえるとした上で、撮影の対象となった部位が性を象徴する典型的な部位等であること、被告人と被害者の関係性や各属性、本件に至る経緯や本件の前後に被告人が送信したメッセージの内容、被告人が自己の性欲を満たす目的を有していたことなどを考慮すると、撮影時に被告人が被害者の姿態を見ていなかったことを踏まえても、本件行為の性的な意味合いの程度は相当に強いといえるから、「わいせつな行為」に当たると判断した。原判決は、身体的接触がなく、被害者の姿態を直接見ていない本件行為に「わいせつな行為」該当性を認め得るほど強い性的意味合いがあることについて、本件行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度それ自体を判定し、それに着目した説明が十分なされているか疑問があるが、おおむね前述したところと同趣旨の判断をしているものと解され、その結論に誤りはない。
第6刑事部
参考事項
1 前記最高裁判決で示された判断基準を、本件のような非接触型・非対面型わいせつ事案に当てはめて強制わいせつ罪の成立を認めた高裁判決はまれであり、その詳細な理由付けを含め、先例としての価値は大きい。
2 前記最高裁判決が「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分踏まえる」としたことの趣旨につき、同判例解説(214ページ)では、次のような判断の順序を示したものと説明されている。すなわち、
 (1) 行為そのものに、性的性質が有り、かつ、その性的性質の程度が強いために、直ちに「わいせつな行為」に該当すると判断できる行為か
 (2) 行為そのものに備わる性的性質が無いか、あっても極めて希薄であるために、およそ刑法176条による非難に値する程度に達しえないものとして、直ちに「わいせつな行為」に該当しないと判断できる行為か
 をまず判断し、次に、
 (3) 行為そのものが持つ性的性質が不明確であるために、行為の外形だけでは「わいせつな行為」該当性の判断がつかない類型においては、行為そのものが持つ性的性質の程度を踏まえた上で、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮する
というものである。
  また、前記最高裁判決のいう「当該行為が行われた際の具体的状況等」として考慮すべき判断要素として、前記判例解説(218ページ以下)では、以下の事情が挙げられている。
 (1) 行為者と被害者の関係性
 (2) 行為者及び被害者の各属性等(それぞれの性別・年齢・性的指向・文化的背景〔コミュニケーション手段に関する習慣等〕・宗教的背景等)
 (3) 行為に及ぶまでの経緯、行為者及び被害者の各言動、行為が行われた時間、場所、周囲の状況等
 (4) 行為に及んだ目的を含む行為者の主観的事情(外部的徴表として現れているもの)
  本控訴審判決は、同判例解説と同様の視点で当てはめがなされている。
3 訴因には「わいせつな行為」の概略しか記載しないが、行為の行われた具体的状況等をも加味して「わいせつな行為」該当性を評価すべき事案においては、「わいせつな行為」であることを基礎づける具体的事実を冒頭陳述で指摘する必要があるとともに、論告で、その具体的事実の評価について丁寧に論じる必要がある(前記判例解説226ページ参照)。
4 非接触型のわいせつ行為(例えば、脅迫により畏怖した被害者に自慰行為をさせて自撮りさせ、その画像を遠隔地にいる被告人に送信させる事案)を強要罪で起訴する例が見られることについて、(被告人に画像を送信しなくても)強制わいせつ罪が成立するのではないかとの指摘がなされていた(橋爪隆「非接触型のわいせつ行為について」研修860号)が、本件はこれを肯定した高裁判決として参考になる。

 起訴状をみると、強制わいせつ罪(176条後段)の訴因は「陰部、乳房等を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させ、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし」ということで、起訴されたのは撮影行為までです。

起 訴 状
令和2年8月27日
公 訴 事 実
 被告人は、甲(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら
第1 同人にわいせつな行為をしようと考え、令和2年3月5日午前9時54分頃から同日午前10時14分頃までの間、被告人方において、前記甲に対し、被告人が使用するスマートフォンから前記甲が使用するタブレット端末に、アプリケーションソフト「」にダイレクトメッセージ機能を使用して、陰部、乳房等を露出した姿態をとって撮影し、被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し、その頃、2回にわたり、内の前記甲方において、同人に、陰部、乳房等を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させ、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし
第2 前記日時頃、前記甲方において、前記第1記載のとおり同人に陰部、乳房等を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させた上、同画像データ2点を、前記「」のダイレクトメッセージ機能を使用して、同タブレット端末から被告人が使用する前記スマートフォンに送信させ、その頃、同画像データ2点を、場所不詳に設置された「」社が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させ、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
たものである。
罪 名 及 び 罰 条
第1 強制わいせつ 刑法176条後段
第2 児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反       同法7条4項、2条3項3号

 訴因変更があったが、製造罪についてのみ。

訴因変更請求書r3.1.18
被告人に対する強制わいせつ,児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件につき,令和2年8月27日付け起訴状記載の公訴事実第2の訴因を下記のとおり変更したく請求する。

同日付け起訴状記載の公訴事実第2のうち, 1行目から10行目を次のとおり変更する。
「前記日時頃,前記被告人方において,前記 に被告人が使用するスマートフォンから前記甲が使用するタブレット端末に,アプリケーションソフト「」のダイレクトメッセージ機能を使用して,陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影し,被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,その頃,前記甲方において,前記第1記載のとおり, 同人に陰部,乳房等を露出した姿態をとらせ, これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させた上,同画像データ2点を,前記「」のダイレクトメッセージ機能を使用して,同タブレット端末から被告人が使用する前記スマートフォンに送信させ,その頃, 同画像データ2点を,場所不詳に設置された「」社が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させ, もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し」
以 上

それら(公訴事実第2と第3)を、1審判決判示第3で観念的競合としていますが、わいせつ行為の範囲は変わっていません。

京都地裁令和3年2月3日
令和2年(わ)第810号,第873号 強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
理    由
(罪となるべき事実)
第3 被告人は,■■■■■(当時9歳,以下「A」ともいう。)が13歳未満であることを知りながら,Aにわいせつな行為をしようと考え,令和2年3月5日午前9時54分頃から同日午前10時14分頃までの間,愛媛県今治市波方町養老甲836番地1所在の被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォンからAが使用するタブレット端末に,アプリケーションソフト「Twitter」のダイレクトメッセージ機能を使用して,陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影し,被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,その頃,2回にわたり,京都府内のA方において,Aに,陰部,乳房等を露出した姿態をとらせ,これをAが使用する前記タブレット端末で撮影させた上,同画像データ2点を,前記「Twitter」のダイレクトメッセージ機能を使用して,同タブレット端末から被告人が使用する前記スマートフォンに送信させ,その頃,同画像データ2点を,場所不詳に設置された「Twitter,Inc.」社が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させ,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をするとともに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。(訴因変更後の令和2年8月27日付け起訴状記載の公訴事実)
(法令の適用)
1 罰  条
 判示第3の行為のうち
  強制わいせつの点  刑法176条後段
  児童ポルノ製造の点 包括して児童ポルノ法7条4項,2項,2条3項3号
2 科刑上一罪の処理
 判示第3について 刑法54条1項前段,10条(1罪として重い強制わいせつ罪の刑で処断)

3 刑種の選択
 判示第2別表2番号1,同番号2,同番号3ないし6,同番号7,同番号8ないし10,同番号11ないし14並びに同番号15及び16の各罪
   いずれも懲役刑
4 併合罪加重      刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1別表1番号6の罪の刑に加重)
5 未決勾留日数の算入  刑法21条
6 没収
 主文記載のスマートフォン本体1台(黒色手帳型カバー付)について
   刑法19条1項2号,2項本文(判示第1別表1番号6の犯行の用に供した物で被告人以外の者に属しない)
7 訴訟費用の不負担   刑事訴訟法181条1項ただし書
(判示第3の事実に関する争点に対する判断)
第1 強制わいせつ罪及び児童ポルノ製造罪の成否
 1 弁護人の主張等
 弁護人は,判示第3の事実について,事実関係は争わないが,①被告人の行為は,Aに要求して,他人が見ていない状況でA自身に陰部,乳房等を露出した姿態をとらせて撮影させたというものにすぎず,強制わいせつ罪の保護法益である性的自由の侵害の程度が極めて小さいといえるから,刑法176条後段の「わいせつな行為」に該当せず,強制わいせつ罪は成立しない,②判示の画像データ2点を判示のサーバコンピュータ内に記憶蔵置させたのはAであり,被告人の行為は介在していないから,児童ポルノ製造罪は成立しない旨主張するから,当裁判所が前記両罪がいずれも成立すると判断した理由を説明する。
 2 強制わいせつ罪の成否
 被告人は,判示第3のとおり,Aに要求し,2回にわたり,A方において,Aに,陰部,乳房等を露出した姿態をとらせ,これを撮影させているところ,被告人とAとの間には物理的(身体的)な接触がなく,しかも,被告人がその撮影時にAの前記姿態を見ていなかったことなどからすると,被告人の行為そのものが持つ性的性質は不明確であるともいえる。
 もっとも,本件において主な撮影対象となったのはAの露出した状態の陰部及び乳房という性器あるいは性を象徴する典型的な部位である上,その撮影にかかる判示の画像データ2点は被告人が使用するスマートフォンに送信されて判示のサーバコンピュータ内に記憶蔵置されているのであって,かかる事情は被告人の行為の性的意味合いをかなり大きく強めるものといえる。また,被告人は,動画配信アプリケーションを通じて年少の女児であるA(当時9歳)と知り合うと,自らを高校生と偽り,判示の「Twitter」のダイレクトメッセージ機能を使用するなどしてAとの間でやり取りをしていたにすぎず,Aとは直接の面識がなかったほか,かねてから年少の女児を対象とする性的傾向があったものであり,かかる被告人とAの関係性や各属性等も被告人の行為の性的意味合いをかなり強める事情といえる。そして,被告人は,前記ダイレクトメッセージ機能を使用して,Aに対し,頻繁に露骨な性的な内容を含むメッセージを送信して本件に及んでいるほか,本件前後にも露骨な性的な内容を含むメッセージを送信しており(例えば,Aに対し,陰部等の画像データを送信させた直後に「おちんちんを,なめてごらん」「ぬれたおちんちんをまんこにこするね」というメッセージを,乳房等の画像データを送信させた直後に「もみながらなめるね」「おちんちんもこすってるぞ」というメッセージをそれぞれ送信している。),かかる本件に至るまでの経緯や本件前後の被告人の言動等も被告人の行為の性的意味合いを相当に強める事情といえる。以上に加えて,被告人の行為は未成年者(とりわけ13歳未満の年少者)保護の見地からも当罰性が強いといえること,被告人が自己の性欲を満たす目的を有していたことなどにも照らすと,被告人が前記撮影時にAの前記姿態を見ていなかったことを踏まえても,被告人の行為は,性的な意味があり,その意味合いの程度は相当に強いといえるから,刑法176条後段の「わいせつな行為」に当たり,被告人については,強制わいせつ罪が成立するものと認められる(なお,前記の撮影行為自体はA自身が行っているものの,Aが当時9歳の年少者であったこと,被告人が,前記のとおり,Aに対して頻繁に露骨な性的な内容を含むメッセージを送信していたこと,前記の撮影行為が単純な内容動作であることなどに照らすと,Aは,前記の撮影行為の性的な意味を十分に理解していたとはいい難く,また,被告人の前記要求を拒否するのは難しかったといわざるを得ないから,被告人については,年少者であるAを利用して自己の犯罪行為を行ったものとして強制わいせつ罪の間接正犯が成立するものと認められる。)。
 これに対し,弁護人は,近時の裁判例では,被害者を脅迫して被害者自身に陰部等を露出した姿態をとらせて撮影等させた行為は強要罪として処断されるにとどまっており,判示第3について強制わいせつ罪が成立するとすることは,他の同種事案との均衡を著しく失し,憲法14条に抵触する旨主張する。しかしながら,弁護人が引用する裁判例(捜査報告書〔甲55〕の番号10ないし12)は,いずれも検察官が強要罪(同未遂罪)として公訴を提起したものであり,このような場合,公訴の提起を受けた裁判所は,訴因である強要罪(同未遂罪)の成否のみを審判の対象とすべきであり,それとは別に強制わいせつ罪(同未遂罪)の成否といった訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきものではないから,前記裁判例が,強制わいせつ罪(同未遂罪)の成否について立ち入ることなく,検察官が起訴状の罪名で特定した強要罪(同未遂罪)の成否についてのみ認定・判断したことは当然というべきである。弁護人の主張は採用できない。
 3 児童ポルノ製造罪の成否
 前記2と同様に,前記の撮影行為に加えて,判示の画像データ2点を判示のサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させる行為自体はA自身が行っているものの,Aは,これらの行為の性的な意味を十分に理解していたとはいい難<,また,被告人の前記要求を拒否するのは難しかったといわざるを得ないから,被告人については,少なくとも年少者であるAを利用して自己の犯罪行為を行ったものとして児童ポルノ製造罪の間接正犯が成立するものと認められる。
第2 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係
 検察官は,判示第3の強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係は併合罪である旨主張する。
 しかしながら,判示第3において,強制わいせつ罪の実行行為は,Aに要求し,2回にわたり,Aに,陰部,乳房等を露出した姿態をとらせて撮影させるというもの,児童ポルノ製造罪の実行行為は,Aに要求し,Aに前記姿態をとらせて撮影させた上,その画像データ2点を判示のサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させるというものであり,強制わいせつ罪の実行行為には児童ポルノ製造罪の実行行為ではない行為が含まれておらず,強制わいせつ罪の実行行為が児童ポルノ製造罪の実行行為の一部とほぼ完全に重なり合っているといえる。また,強制わいせつ罪の実行行為の本質的な部分は撮影行為,児童ポルノ製造罪の実行行為の本質的な部分は撮影(製造)行為であるといえ,前記両行為は,行為の性質が異質なものとまではいえず,単一の意思決定に基づくものともいい得る。この点,判示第3は,検察官が引用する最高裁平成21年10月21日第一小法廷決定(刑集63巻8号1070頁)(捜査報告書〔甲55〕の番号9)や弁護人が引用する東京高裁平成30年7月25日判決(報告書〔弁3〕の別紙2),あるいは東京高裁平成24年11月1日判決(高刑集65巻2号18頁)等とは事案の内容・性質を異にするといえる。
 そうすると,前記両行為は,自然的観察のもとで社会的見解上1個のものと評価できるから,前記両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるというべきである(なお,検察官が指摘する前記両罪の保護法益の相違については,前記両罪が包括一罪にならないことの根拠とはなり得るが,前記判断を左右するものではない。)。
(量刑の理由)
 令和3年2月3日
  京都地方裁判所第1刑事部
          裁判官 入子光臣

阪高裁令和3年7月4日宣告裁判所書記官
令和3年(う)第287号
判決
上記の者に対する強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)違反被告事件について,令和3年2月3日k地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官太田玲子出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中90日を原判決の刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹(主任)作成の控訴趣意書及び弁護人園田寿作成の控訴趣意書に記載のとおりであり,論旨は,不告不理の原則違反,理由不備・理由齪嬬,法令適用の誤り,量刑不当である。
そこで記録を調査し,当審での事実取調べの結果をも併せて検討する(なお,以下の説示では,基本的に原判決と同様の呼称,略称を用いる。)。
第1 原判決の認定事実
原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は,被告人が,
(1)当時10歳の女子児童Bが13歳未満であることを知りながら,平成30年5月12日頃から同年8月27日頃までの間,7回にわたり,甲市内に駐車中の自動車内において,Bに対し,その陰部及び乳首を指で触るなどした上,これをそれぞれ被告人が使用するスマートフォンで動画撮影し,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をし(原判示第1,強制わいせつ。以下「第1事実」という。),
(2)Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,同年5月12日頃から同年8月27日頃までの間,16回にわたり,前記(1)記載の場所において,Bに,被告人がBの陰部及び乳首を指で触るなどの姿態をとらせ,これをそれぞれ前記(1)記載のスマートフォンで動画撮影し(動画撮影行為は(1)と同一のものである。),その動画データ16点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童ポルノを製造し(原判示第2,児童ポルノ製造。以下「第2事実」という。),
(3)当時9歳の女子児童Aが13歳未満であることを知りながら,Aにわいせつな行為をしようと考え,令和2年3月5日,甲市所在の被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォンからAが使用するタブレット端末に,アプリケーションソフトのダイレクトメッセージ機能を使用して,陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影し,前記スマートフオンに送信するよう要求し,その頃,2回にわたり,k府内のA方において,Aに,陰部,乳房等を露出した姿態をとらせ,これを前記タブレット端末で撮影させた上,同画像データ2点を前記ダイレクトメッセージ機能を使用して同タブレット端末から前記スマートフォンに送信させてこれを前記アプリケーションソフトを運営・管理する法人が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させ,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をするとともに,児童ポルノを製造した(原判示第3強制わいせつ及び児童ポルノ製造。以下「第3事実」という。),というものである。
2なお,前記(3)は,Aに対し,前記ダイレクトメッセージ機能を使用して,その陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させたという強制わいせつの事実(令和2年8月27日付け起訴状記載の公訴事実第1)と,同要求をし,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させた上,その画像データ2点を被告人のスマートフォンに送信させて前記サーバコンピュータ内に記憶・蔵置させたとい星う児童ポルノ製造の事実(同公訴事実第2・原審第3回公判期日において令和3年1月18日付け訴因変更請求書のとおり訴因変更許可決定)として別個の訴因で起訴され,検察官は併合罪の関係にあると主張したが,原判決が観念的競合の関係にあると判断したものである。
第2 当裁判所の判断
1 第3事実の不告不理原則違反の論旨について
所論は,第3事実について,強制わいせつの訴因にはAが撮影した画像データを被告人のスマートフォンに送信し,同画像データがサーバコンヒ°ユータ内に記憶・蔵置された事実が含まれていないのに,原判決がこれらの事実を含めて強制わいせつと認定した点は,不告不理の原則違反(訴因逸脱認定)であると主張する。
しかし,原判決が前記画像データの送信,記憶・蔵置の事実をも刑法176条後段にいう「わいせつな行為」と評価されるべき行為に含めているとは認められない。
原判決の「罪となるべき事実」の記載は,観念的競合として1個の行為と評価されるAに対する強制わいせつとAに係る児童ポルノ製造の事実をまとめて記載したものと読むことは十分可能である。
そして,前記第1の2のとおり,原審は,別個の訴因として起訴された前記強制わいせつ及び児童ポルノ製造を観念的競合の関係にあると解したという経緯があり,また,原判決は,その(判示第3の事実に関する争点に対する判断)中の「第2強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係」(9頁)において,「強制わいせつ罪の実行行為は,Aに要求し,2回にわたり,Aに陰部,乳房等を露出した姿態をとらせて撮影させるというもの」と明示しており,訴因外の事実である前記画像データの送信,記憶・蔵置の事実をも「わいせつな行為」と評価されるべき行為に含めているとうかがわせる記載は見当たらない。
そうすると,原判決が,前記画像データの送信,記憶・蔵置の事実を「わいせつな行為」と評価されるべき行為に含めているとはいえず,訴因逸脱認定などということはできない。
2第1事実及び第3事実の理由不備・法令適用の誤りの論旨について
所論は,原判決は刑法176条にいう「わいせつな行為」について定義を示せていないから,理由不備があり,また,同条は罪刑法定主義に反していて文面上無効であるにもかかわらず,原判決は第1事実及び第3事実について同条を適用したのであるから,法令適用の誤りがあると主張する。
しかし,法規には通常ある程度の解釈の余地が含まれるものである。
そして,「わいせつな行為」という言葉は一般的な社会通念に照らせばある程度の具体的なイメージを持つことができ,また,あえて別の言葉で定義付けすること自体困難である上,定義付けしても,それで,いわゆる規範的要件である「わいせつな行為」への該当性判断が直ちに容易になるとも思われない。
「わいせつな行為」に該当するか否かを安定的に判断するには,後記3(1)のとおり,どのような考慮要素をどのような判断基準で判断していくべきなのかという判断の仕方こそが重要であるといえ,定義付けが必須とはいえない。
刑法176条の「わいせつな行為」について定義を示せていないから原判決には理由不備があるとか,同条は罪刑法定主義に反していて文面上無効であるなどというのは,独自の見解であって採用の限りではなく,第1事実及び第3事実について理由不備や法令適用の誤りがあるとはいえない。
3第3事実の法令適用の誤り(「わいせつな行為」該当性)の論旨について
(1)

所論は,被告人が,Aに対し,アプリケーションソフトのダイレクトメッセージ機能を使用して,その陰部及び乳房を露出した姿態をとって撮影してその画像データを被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,Aにそのような姿態をとらせて撮影させたという本件行為は,遠隔地にいるAに裸体を撮影させたにとどまり,性的侵襲は弱く,性的意味合いは皆無か,極めて薄いから,「わいせつな行為」に該当しない,本件行為(被告人がAから同画像を受信し,閲覧した事実は含まれない。)だけでは被告人は性的興奮を得ていないから,「わいせつな行為」に該当せず,該当するとしても,強制わいせつ未遂罪が成立するにとどまると主張する。
しかし,まず,刑法176条の「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,当該行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを具体的事実関係に基づいて判断するのが相当である(最高裁平成29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照。)。
これを踏まえて検討すると,本件行為は,当時9歳の女子児童であるAに対してその陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させたというものであり,撮影させた部位のうち,陰部(性器自体は写っていないものの,その周辺部である。)は性的要素が強く,乳房も性を象徴する典型的な部位である。
また,衣服を脱がせる行為(又は衣服を着けない姿態をとらせる行為)は,裸になることを受忍させてその身体を性的な対象として行為者の利用できる状態に置くものであって,単独でも「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものであるし,続いてそうした衣服を着けない姿態を撮影する行為も,自ら性的な対象として利用できる状態に置かせた裸体を,さらに記録化することによってまさに性的な対象として利用するものであり,それによって性的侵害性が強まるといえるから,「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものといえる。

本件では,被告人は遠隔地からAに指示しているから,直接Aの姿態を目にしていないという点で,面前で行う場合と比べてAの性的自由を侵害する程度が小さいとはいえるものの,Aに陰部等を露出した姿態をとらせ,これを撮影させた行為は,Aに一定の性的行為を行わせ,かつ,その内容を第三者が知り得る状態に置く行為であり,Aの身体を性的に利用する行為といえる。
本件は,行為そのものから直ちに「わいせつな行為」とまで評価できないものの,一定の性的性質を備えていて,「わいせつな行為」に当たり得るものというべきである。
なお,本件行為にはAに撮影させた画像データを被告人に送信させたことや被告人が受信した画像データを閲覧したことは含まれていないが,Aに陰部等を露出させた姿態をとらせてそれを撮影させたことによって,被告人を含む他人がその画像を見ることがあり得る状態に置かれており,性的侵害性は大きいといえるし,被告人はAに対して撮影した画像データを被告人に送信することも要求して撮影させており,Aがこの要求に従って画像データを送信して被告人がこれを見ることになる具体的な危険性も認められるから,撮影させた画像データを被告人に送信させたこと等が含まれていないことが,「わいせつな行為」該当性を否定する事情とはならない。
さらに,本件の具体的状況等についてみると,被告人は当時53歳の中年男性,Aは当時9歳(小学3年生)であり,‘動画配信アプリケーシヨンを通じて知り合い,ダイレクトメッセージ機能を使用してやり取りをしていた関係にすぎず,直接の面識はなく,本件行為は,被告人とAが性行為をしているかのようなメッセージのやり取りをしている状況においてなされたものである(例えば,被告人は,Aに対し,陰部等を露出した姿態の画像データを送信させた直後に,「マンジル,白いの出てくるからね」「おちんちんを,なめてごらん」「ぬれたおちんちんをまんこにこするね」というメッセージを,乳房等を露出した姿態の画像データを送信させた直後に「もみながらなめるね」「おちんちんもこすってるぞ」といったメッセージを送信している。)。
また,被告人にはかねてから年少の女児を対象とする性的嗜好があった。
このような本件行為が行われた際の具体的状況等をも考慮すると,本件行為は性的な意味合いが相当強いものといえるから,「わいせつな行為」に当たるといえる。

原判決は,Aへの身体的接触がなく,被告人が撮影時にAにとらせた姿態を見ていないという本件行為の特徴を指摘して本件行為そのものが持つ性的性質は不明確であるともいえるとした上で,撮影の対象となった部位が性を象徴する典型的な部位等であること,被告人とAの関係性や各属性,本件に至る経緯や本件の前後に被告人が送信したメッセージの内容,被告人が自己の性欲を満たす目的を有して』.いたことなどを考盧すると,撮影時に被告人がAの姿態を見ていなかったことを踏まえても,本件行為の性的な意味合いの程度は相当に強いといえるから,「わいせつな行為」に当たると判断した。
原判決は,身体的接触がなく,Aの姿態を直接見ていない本件行為に「わいせつな行為」該当性を認め得るほど強い性的意味合いがあることについて,本件行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度それ自体を判定し,それに着目した説明が十分なされているか疑問があるが,おおむね前述したところと同趣旨の判断をしているものと解され,その結論に誤りはない。
(2)
所論は,画像送信要求行為(必ずしも明らかでないが,年少者にその裸体等を撮影した上で送信するよう要求する行為を指すものと解する。)について,大阪府青少年健全育成条例が改定されて規制されるなど,独立の犯罪化の動きがあることは,画像送信要求行為を「わいせつな行為」と評価することが困難であるという現時点での社会的評価の表れであり,一つの立法事実であると考えられるなどとも主張する。
しかし,所論が指摘する大阪府青少年健全育成条例は,青少年に係る児童ポルノの提供を求めることを禁止し,その違反のうち,当該青少年に拒まれたにもかかわらず,提供を求めた場合と,威迫等の方法により提供を求めた場合に限って罰則(罰金)を設けたものであり(同条例42条の2,56条3号),例えば,青少年に現に自己の裸体等を撮影させることは要件とされていないし,より未熟な13歳未満の青少年との関係でも,当該青少年に拒まれたという事情や威迫等の方法により提供を求めたという事情がなければ処罰の対象とはならないのであり,スマートフォン等を使用して裸体等を撮影して送信するよう要求し(被害者が14歳以上の場合は暴行・脅迫を手段として),現に被害者に裸体等を撮影させる行為を強制わいせつ罪として罰することとは,刑罰の対象となる行為や目的,刑の重さの点で大きく異なる。
そうすると,青少年に自己に係る児童ポルノの提供を求める行為について条例で罰則を設ける動きがあることは,本件行為が「わいせつな行為」に当たるという解釈を妨げる事情とはいえない。
4 第1事実及び第2事実の法令適用の誤り(罪数),の論旨について
所論は,第1事実の各強制わいせつ罪及び第2事実の各児童ポルノ製造罪(児童ポルノ法7条4項のもの。以下同じ。)の関係について,同一機会の犯行に係る強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪は,重なり合うものであり,社会的見解上1個の行為と評価すべきであるから,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるのに,同法45条前段の併合罪の関係にあるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあると主張する。
しかし,本件のように児童の陰部等を触るなどのわいせつな行為をするとともに,その行為等を撮影して児童ポルノを製造した場合,わいせつな行為と児童ポルノを製造した行為とは,かなりの部分で重なり合っていることもあるが,通常伴う関係にあるとはいえない上,強制わいせつ罪では児童の陰部を触るなどのわいせつな行為を行ったという側面から犯罪とされているのに対し,児童ポルノ製造罪ではそのような児童の姿態を撮影して記録・保存する行為を行ったという側面から犯罪とされているのであって,それぞれの行為は社会的評価としても別個のものといえる。
原判決は,これと同様の理由で,第1事実の各強制わいせつ罪と,それと同一機会における第2事実の各児童ポルノ製造罪をいずれも併合罪の関係にあるとしたものと解され,原判決の法令適用に誤りはなく,論旨は理由がない。
5 理由齟齬の論旨について
所論は,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の関係について,原判決が,第1及び第2事実の両罪を併合罪の関係にあるとしながら,第3事実の両罪を観念的競合とした点に理由齟齬があると主張する。
しかし,原判決は,第1及び第2事実の両罪と,第3事実の両罪とでは,強制わいせつ行為の内容・性質が大きく異なることなどを理由に,両罪の関係について異なる判断をしたものと解されるから,理由に齪鋸があるとはいえない。
6量刑不当の論旨について
令和3年7月14日
大阪高等裁判所第6刑事部