高額の対価を示して裸画像を撮影送信させた場合、不同意わいせつ(2項)にならない理由

高額の対価を示して裸画像を撮影送信させた場合、不同意わいせつ(2項)にならない理由
 欺されたのか、大金に目がくらんだのかはわかりませんが、時々こういう事案はあって、警察に「欺された」と被害届がでることがあるようですが、警察検察は、不同意わいせつ罪(176条)には消極的です。

第一七六条(不同意わいせつ)
 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

 法務省の説明によれば、17歳が対価の約束をしている場合だと、裸を撮影送信するという行為の意味は理解していたと思われ、対価をもらえるという誤信があるとしても、「行為がわいせつなものではないとの誤信」がないので、不同意わいせつ罪(176条2項)は成立しないとされています。

法務省逐条説明
3 各条の第2項
性的行為が行われるに当たって、その相手方に何らかの錯誤が生じている類型については、同意の前提となる事実の認識を欠くものの、当該行為を行うこと自体について外形的には同意が存在するという特殊性があり、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態」にあったかどうかで犯罪の成否を区別することとした場合には、犯罪の成否をめぐる評価・判断のばらつきを生じさせることとなりかねないことから、第1項に含めるのではなく、別途規定することとするものである。
その上で、相手方に錯誤が生じている類型の中には、その錯誤があることによっておよそ自由意思決定が妨げられる性質のものと、そうでないものが混在するため、それらを区別せずに包括的な形で規定した場合には、強制わいせつ罪・強制性交等罪として処罰すべきとはいえないものが処罰対象に含まれることとなり、相当でない。
そこで、強制わいせつ罪及び強制性交等罪の保護法益である性的自由・性的自己決定権が侵害されたといえる場合、すなわち、自由意思決定が妨げられたと一般に評価できる錯誤のみが処罰対象となることを明確にする観点から、第2項においては、
○その誤信があれば、自由意思決定が妨げられたといえる類型、すなわち、
・行為がわいせつなものではないとの誤信がある場合(注6)
・行為をする者について人違いがある場合(注7)
を限定的に列挙し、
○「その他これらに類する行為により同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ」又は「その他これらに類する事由によりその状態にあることに乗じて」との包括的要件を設けない
こととしている。
なお第176条第2項及び第177条第2項の行為はいずれも行為者が行い又は行おうとしているわいせつな行為又は性交等、すなわち、実行行為を指すものである。
(注6)行為がわいせつなものでないとの誤信があった場合には、被害者は「行為」には、同意しているものの、それが「性的」なものであるとすれば、そのような「性的行為」には同意していないのであるから、その意味で「性的行為をするかどうか」についての自由意思決定があったとはいえず、その誤信を利用して性的行為を行った場合、一般に性的自由・性的自己決定権の侵害が存するといえる。
(注7)行為をする者について人違いがある場合には、被害者は、その相手方との性的行為には同意していないのであるから、その意味で「誰と性的行為をするか」についての自由意思決定があったとはいえず、その誤信を利用して性的行為を行った場合、一般に性的自由・性的自己決定権の侵害が存するといえる。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025060200884&g=soc
女子高生に「200万円払う」 裸の写真送らせた疑い、男再逮捕―警視庁
時事通信 社会部2025年06月03日07時34分配信
 SNSで知り合った女子高校生(17)に「写真、動画送れば200万円」と伝え、裸の画像などを送らせたとして、警視庁世田谷署は2日までに、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で、容疑者を再逮捕した。「好みの女性の裸を見たかった」と容疑を認めている。
 再逮捕容疑は昨年10月5~8日、女子高生の下半身などを写した画像21枚と動画4本を送信させ、保存した疑い。
 同署によると、容疑者は昨年9月にインスタグラムで女子高生と知り合い、「写真50枚、動画35本の1セットで200万円以上払う」とメッセージを送信。画像などを送らせたが、現金は支払わなかった。
 女子高生から相談を受けた世田谷署が5月に容疑者宅を捜索。同容疑者が当時、部屋にいた別の女子高生とわいせつな行為をしたと認めたことなどから、同法違反容疑で逮捕した。
 押収したスマートフォンの解析で、再逮捕容疑の画像などが見つかった。