「幼い容姿の男子児童が性器等を露わにしたり、第三者から性器を触られる、 あるいは、口淫といった性交類似行為をされるなどという内容の児童ポルノ」 の所持につき、「自己の性的好奇心を満たす目的」を否認した事案(神戸地裁 R6.6.6)

「幼い容姿の男子児童が性器等を露わにしたり、第三者から性器を触られる、
あるいは、口淫といった性交類似行為をされるなどという内容の児童ポルノ
の所持につき、「自己の性的好奇心を満たす目的」を否認した事案(神戸地裁
R6.6.6)

「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に
基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認め
られる者に限る。)」という構成要件なんですが、画像自体が児童ポルノ(1
号2号)だと、他に正当な理由が無い限り、「自己の性的好奇心を満たす目
的」は認定されてしまいます。

裁判年月日  令和 6年 6月 6日  裁判所名  神戸地裁  裁判区分  判決
事件番号  令6(わ)111号・令6(わ)133号
事件名  児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保
護等に関する法律(以下「児童ポルノ処罰法」という。)違反、公衆に著しく
迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年兵庫県条例第
66号。以下「兵庫県迷惑防止条例」という。)違反被告事件、児童ポルノ
罰法違反被告事件
文献番号  2024WLJPCA06066004
出典
Westlaw Japan
理由
 【罪となるべき事実】
 被告人は、
第1  正当な理由がないのに、別表記載のとおり、令和5年3月22日及び
同月24日、別紙記載1の施設(以下「本件施設」という。)の男女共用トイ
レ(以下「本件トイレ」という。)において、同トイレを主に利用する者が1
8歳に満たない者であることを知りながら、同トイレ内の配管と壁面の隙間に
ネットワークカメラを設置した上、被告人が使用するスマートフォンで同カメ
ラを操作するなどして動画撮影状態とし、ひそかに、同トイレを利用した児童
4名(別表中、番号1上段の者を「A」、番号1下段の者を「B」、番号2上
段の者を「C」、番号2下段の者を「D」と呼称する。)が用便のために着衣
を脱いで陰部等を露出した姿態を撮影し、その動画データ3点を同スマートフ
ォンに記録させて保存し、もって人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態
でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影するとともに、ひそかに衣
服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が
露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激する
ものを認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した
児童ポルノを製造した、
第2  自己の性的好奇心を満たす目的で、令和5年11月15日、別紙記載
2の被告人方において、児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、
他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は
刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に
児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興
奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描出し
児童ポルノである動画データ3点を記録したスマートフォン1台を所持し
た、
 ものである。
 【証拠の標目】
 【事実認定の補足説明】
 弁護人は、判示第1の事実につき、正当な理由がなかったことについては
争わないとしつつ、カメラを設置する必要があった旨を主張し、被告人も、カ
メラ設置の目的が性的なものではなく、トイレが汚れるという問題を早期に解
決することにあったなどと同旨の供述をしている。また、弁護人は、判示第2
の事実につき、被告人が性的好奇心を満たす目的ではなかった旨主張し、被告
人も同旨の供述をしている。そこで、判示第1及び第2の各事実の認定につい
て補足して説明する。
第1  判示第1の事実(正当な理由がない)について
 1  事実
  (1) 本件施設は、もっぱら18歳未満の者が利用する施設である。
  (2) 本件施設内には2か所の個室トイレが隣接して設置されており、い
ずれも扉によって共用スペースから仕切られている。本件トイレは2か所の個
室トイレのうち北側に設置されているものである。
  (3) 本件トイレの天井付近には排水パイプが壁に沿うように設置されて
おり、パイプと壁の間にわずかな空間がある。
  (4) 被告人は、判示第1の日に、その所有する小型カメラを上記の空間
に設置し、本件トイレを利用する者が同カメラの存在を容易に認識することが
できない状態にした。
 そのうえで、被告人は、自らのスマートフォンを同カメラと無線接続した
うえで、同カメラを動画撮影状態にし、本件トイレの天井方向から床方向に向
けて、本件トイレ内のほぼ全体の様子を撮影し続ける状態とした。
 その結果、本件トイレを利用した18歳未満の者らが用便のために着衣を
脱ぎ、陰部を露わにしている様子が動画撮影され、そのデータが上記スマート
フォンに保存された。
  (5) 令和4年12月頃開催された本件施設の職員会議において、本件ト
イレの汚れが話題となったことがあり、その際には、トイレをきれいに使用す
るよう利用者に注意喚起をするなどとされて、しばらく様子を見ることとなっ
た。
  (6) 判示第1の行為の前後を通じて、被告人は、本件トイレにカメラを
設置して動画を撮影することにつき、本件施設の職員に知らせたり、許可を得
るなどしていない。
 2  判断
 被告人は本件トイレの利用者が着衣を脱ぎ、陰部を露わにしている様子を
盗撮したものである。トイレでは、その利用者が着衣によって覆われている性
的な部位を露わにして用便することが通常であることのほか、判示第1の被害
者がいずれも18歳未満の者であることからすれば、被告人は18歳未満の者
の性的な部位等に対する好奇心から判示第1の行為を行ったものと認められ
る。
 この点、被告人は、トイレが汚れるという問題を解決するために判示第1
の行為に及んだ、性的な目的はなかったなどと供述するが、トイレの汚れとい
う問題を解決することと、トイレ内の盗撮行為とは直ちに結びつくようなもの
ではなく、被告人の上記供述内容は飛躍しておりにわかに信用できないという
ほかない。被告人は、本件施設の問題を解決するために他の職員の許可を得る
などせずに行動したことがあり、同様に、問題を解決するために他の職員の許
可を得るなどせずに判示第1の行為を行ったなどとも供述するが、トイレ内の
盗撮が許されないことを認識することが困難なことであるとは考えられず、そ
のような許されない行為を他の職員に知らせることなく密かに行ったこと自体
から被告人が本件施設の問題を解決するために判示第1の行為に及んだもので
はないことが推認されるのであって、やはり被告人の上記供述は信用すること
ができないし、上記認定に合理的な疑いをさしはさむべき事情があるとも言え
ない。
 以上のとおり、被告人は上記好奇心から判示第1の行為に及んだものであ
り、正当な理由がなかったことが認められる。
第2  判示第2の事実(自己の性的好奇心を満たす目的)について
 1  事実
  (1) 判示第2の動画データ3点(以下「本件データ」という。)は、被
告人が使用していたスマートフォン内に保存されていたものである。
 本件データは、再生時間約2分ないし約8分の動画であり、幼い容姿の男
子児童が性器等を露わにしたり、第三者から性器を触られる、あるいは、口淫
といった性交類似行為をされるなどという内容の児童ポルノである。
  (2) 本件データは、いずれも被告人のスマートフォン内の「○○」とい
う名称のフォルダに保存されている。同フォルダ内には、本件データのほかに
多数の性的画像が保存されている。
  (3) 被告人のスマートフォンには「○○」という名称のアプリケーショ
ン(以下「本件アプリ」という。)が保存されている。本件アプリは、同アプ
リを利用している不特定の匿名の者との間で写真や動画を共有するために、共
有したい写真や動画のデータをサーバーにアップロードしたりダウンロードし
たりする、ダウンロードに必要なキーワードをSNSで通知する、画像を掲載
・閲覧したユーザー同士のチャットといった機能を備えている。
  (4) 被告人は、令和5年2月頃から同年11月頃までの間に本件アプリ
を通じて、200個を超えるフォルダを受信しており、それらのフォルダには
三者の性器等が撮影された動画や写真のファイルが多数保存されている。
  (5) 被告人のスマートフォン内には本件アプリを通じて行ったチャット
の送受信履歴が保存されており、これによれば、被告人は本件アプリの別のユ
ーザーに対して「最後のヤバイ 続きが気になります」「見たことないものば
かり最高です」「…赤い服の子の動画ってあります。くわえたりするのがある
はずなのですが」などとチャットを送信している。
 なお、この点につき、被告人は、同人が利用していたアカウント名が一般
的な名称であり、同一アカウント名を利用する第三者のチャットである可能性
があるなどとも述べる。しかしながら、上記履歴は被告人のスマートフォン
に保存されていたユーザー同士のチャットの履歴であり、その履歴中に被告人
のアカウント名と同じアカウント名の者によるチャットの発信が記録されてい
たことのほか、そのチャットの件数が8件にとどまっており、被告人以外の者
が被告人と同じアカウント名を用いてしたチャットの履歴が保存されていると
疑うべき事情があるとは認められないことからすれば、上記チャットはいずれ
も被告人自身が送信したものと認められる。
 2  判断
 本件データの内容は上記のとおりであり、その内容に照らして人の性的好
奇心を刺激するものであると認められる。また、本件データは本件アプリを利
用する匿名の第三者がアップロードしたものであり、被告人は、本件アプリを
利用して同データを自らのスマートフォンにダウンロードして所持するに至っ
たことが認められる。そして、本件データの内容、匿名の第三者がアップロー
ドした性的好奇心を刺激するデータを自らのスマートフォンに保存するという
所持の経緯に加えて、被告人が本件アプリを通じて多数の性的画像や動画をダ
ウンロードし、これらとともに本件データを保存していたといった所持の態様
も考慮すれば、被告人は、自らの性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持
していたものと認められる。
 この点、被告人は、自己の性的好奇心を満たす目的ではなく、児童ポルノ
を投稿する者を何とかしたいなどと考えて本件データを所持するに至ったなど
と述べるが、被告人が、令和5年2月頃から同年11月頃までの間の相応の期
間にわたり、多数の性的画像等をダウンロードするとともに、「続きが気にな
ります」といった投稿を促すようなチャットを送信するにとどまり、投稿をや
めるよう働きかけるような内容のチャットを送信するなどしていないことに照
らせば、被告人が児童ポルノの投稿をやめさせる目的を有していたとは考えら
れず、被告人の上記供述は信用できないものというほかない。
 以上のとおり、被告人は自己の性的好奇心を満たす目的で判示第2の行為
に及んだことが認められる。
 【法令の適用】
 ○罰条
 ・判示第1の所為のうち児童ポルノ製造の点(被害者A、B、C(包括)
及びDごとに) いずれも児童ポルノ処罰法7条5項、2項、2条3項3号
 ・判示第1の所為のうち盗撮の点 包括して兵庫県迷惑防止条例15条1
項、3条の2第3項
 ・判示第2の所為 児童ポルノ処罰法7条1項前段、2条3項1号、2
号、3号
 ○科刑上一罪(判示第1の各罪) 刑法54条1項前段、10条(刑及び
犯情の最も重いCに対する児童ポルノ製造の罪の刑)
 ○刑種の選択(判示各罪) いずれも懲役刑
 ○併合罪の加重 刑法45条前段、47条本文、10条、47条ただし書
(刑の重い判示第1の罪の刑に制限内で加重)
 ○刑の執行猶予 刑法25条1項
 【量刑の理由】
 本件は、被告人が、正当な理由なく本件トイレに小型カメラを設置して児
童4名の用便の際の様子を盗撮して児童ポルノを製造したほか、児童ポルノ
記録されたスマートフォン1台を所持したという事案である。
 (裁判官 酒井英臣)