児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

鹿児島県警察本部3階中会議室において,自己の性的好奇心を満たす目的で,児童ポルノである画像データ4点及び動画データ1点を記録したスマートフォン1台を所持した(鹿児島地裁r03.10.26)

 撮影した時とか、ダウンロードした時点であれば、自己の性的好奇心を満たす目的で所持していた時点はあったと思うんですが、警察本部に取調に呼ばれた時点では、自己の性的好奇心を満たす目的というのはあるのかなあと思うんですよ。

鹿児島地裁令和 3年10月26日
事件名 住居侵入,建造物侵入,児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

 
 上記被告人に対する住居侵入,建造物侵入,児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官福林千博及び私選弁護人穂村公亮(主任)各出席の上審理し,次のとおり判決する。 
理由
 【罪となるべき事実】
 被告人は,
 第1 正当な理由がないのに,令和元年6月9日午前1時5分頃,鹿児島県a警察署長Bが看守する鹿児島県奄美市〈以下省略〉同警察署3階女性用更衣室兼仮眠室に,不正に入手した合い鍵を使用して出入口ドアの施錠を解いて侵入した
 第2 正当な理由がないのに,同年9月2日午前0時53分頃,前記女性用更衣室兼仮眠室に,無施錠の出入口ドアから侵入した
 第3 被害者A(氏名は別紙記載のとおり)の私生活をのぞき見る目的で,令和2年2月5日午後10時44分頃,同市〈以下省略〉b職員宿舎502号の当時の同人方に,合い鍵を使用して玄関ドアの施錠を解いて侵入した
 第4 自己の性的好奇心を満たす目的で,令和3年4月3日,鹿児島市〈以下省略〉鹿児島県警察本部3階中会議室において,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ4点及び動画データ1点を記録したスマートフォン1台を所持した
 ものである。
 【証拠の標目】
 【法令の適用】
 被告人の判示第1ないし第3の各所為はいずれも刑法130条前段に,判示第4の所為は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段,2条3項3号にそれぞれ該当するところ,判示各罪についてそれぞれ懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,刑法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を主文掲記の懲役刑に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から主文掲記の期間その刑の執行を猶予することとする。
 【量刑の理由】
 本件は,現役の警察官であった被告人が,①当直勤務中,警察署内の女性用更衣室兼仮眠室に2回にわたって侵入し(判示第1及び第2。以下「建造物侵入事件」という。),②同じ職員宿舎の同僚宅に侵入し(判示第3。以下「住居侵入事件」という。),③児童ポルノである動画データ等を記録したスマートフォンを所持した(判示第4。以下「児童ポルノ所持事件」という。)という事案である。
 被告人は,①建造物侵入事件においては当直という立場を,②住居侵入事件については職員宿舎の管理人という立場を,それぞれ利用して各犯行に及んでいるほか,③児童ポルノ所持事件においても,当時,警察署内の証拠品保管庫に立ち入ることができる立場にあったことを利用し,証拠品であるCD-Rに記録されていた児童ポルノである動画データ等を私用スマートフォンに取り込んだ末に本件犯行に及んだものである。いずれの犯行も,自らの立場への信頼を裏切る卑劣なものであるし,とりわけ,児童ポルノ所持事件については,警察官としての立場を悪用したものであって,警察活動全体に対する住民の信頼をも裏切るものといわざるを得ない。各犯行の動機も,性的好奇心を満たすというものであり,酌むべき点はない。
 これらの犯情に照らすと,被告人の刑事責任を軽視することはできず,本件は懲役刑を選択すべき事案である。
 以上を前提に,①被告人が本件各犯行を認めた上で贖罪寄付をするなど,反省の態度を示していること,②被告人に前科前歴はないこと,③被告人の母親が,公判廷において,今後被告人を監督する旨述べていることなどの事情も踏まえ,被告人については,主文の刑に処した上,今回に限り,その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
 (求刑 懲役2年)
 鹿児島地方裁判所刑事部
 (裁判官 此上恭平)