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【文献番号】25620280熊本地方裁判所令和5年(わ)第602号
令和6年5月16日刑事部判決主 文
被告人を懲役3年と処する。
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
理 由(犯罪事実)
被告人は、被害者(当時14歳。氏名は別紙のとおり。)が16歳未満の者であり、かつ、自らが被害者の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、令和5年7月30日午後2時10分頃から同日午後4時34分頃までの間に、熊本県人吉市α××××番地×所在のホテルB×××号室において、被害者に対し、現金5万円の対償を供与して、同人と性交し、もって児童買春をするとともに、16未満の者に対し、性交等をした。
(法令の適用)
罰条 不同意性交等の点 刑法177条3項、同条1項、令和5年法律第66号附則3条
児童買春の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条、2条2項1号
科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段、10条(1罪として重い不同意性交等罪の刑で処断)
酌量減軽 刑法66条、71条、68条3号
未決勾留日数の算入 刑法21条
刑の執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
被告人は、SNSを用い、「パパ活」と称して、対価を得て性交に応じることを含め、その相手を募集していた被害者に接触し、本件犯行に及んだ。被告人は、SNS上の記載や被害者とのやり取りを経て被害者が中学3年生であると認識したのに、性交が自己に及ぼす影響を理解し、これに対処する能力が未だ十分に備わっているとはいい難い被害者の未熟さに乗じ、対償を供与してまで性交に及んだのであって、その責任は重く、実刑を選択することも考えられる。
しかしながら、本件は、上記のとおり、被害者からの働き掛けに被告人が応じたという側面があり、刑の執行を猶予することが許されないとまではいい難い。そして、被告人には前科前歴が見当たらないこと,被告人は公判廷において罪を認めて反省の弁を述べ、被害者側から受入れられていないながらも被害弁償の意向を示しており、そのための十分な資力があることなど、被告人のために酌むべき事情も認められる。
そこで、被告人に対しては、酌量減軽をし、主文のとおりの刑を科して刑事責任の重さを明らかにした上で刑の執行を猶予することとした。
よって、主文のとおり判決する。
(求刑:懲役5年6月)
令和6年5月22日
熊本地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 中田幹人 裁判官 賀嶋敦 裁判官 新田紗紀