児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

性的影像記録保管罪の法定刑は意外と軽い

 手元に所持してるのも「保管」に入るということだろうなあ。混乱するな。
因みに刑法175条2項は、電磁的記録は「保管」、有体物は「所持」、児童ポルノ法では、手元に置くのが「所持」、オンラインストレージに置くのが「保管」

不特定又は多数の者に提供する目的であっても、性的影像記録保管罪は、性的影像記録の提供や公然陳列の前段階の行為を処罰対象とするものであり、それらの行為と比較すると法益侵害の程度が小さいと考えられることから、その法定刑は、特定かつ少数の者に対する性的影像記録提供罪よりやや低いものとして、「2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金」としている。とされています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c08046d378fe6847fc9ac3eede63113793d1022e
警察によりますと、容疑者は今年2月、動画を提供する目的で金沢市内の民家で女性のスカート内を盗撮する動画を自身のサーバーに保管した疑いがもたれています。
 3月に盗撮しようとした疑いで検挙された別の男が、以前検挙された際に警察から消去するよう指示されていた動画を保管していたことから、詳しく事情を聞いたところ、「ある人物から返してもらった」と供述。動画ファイルのやり取りの記録などをたどったところ、容疑者が浮上したということです。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
(性的影像記録提供等)
第三条 性的影像記録(前条第一項各号に掲げる行為若しくは第六条第一項の行為により生成された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録又は当該記録の全部若しくは一部(対象性的姿態等(前条第一項第四号に掲げる行為により生成された電磁的記録その他の記録又は第五条第一項第四号に掲げる行為により同項第一号に規定する影像送信をされた影像を記録する行為により生成された電磁的記録その他の記録にあっては、性的姿態等)の影像が記録された部分に限る。)を複写したものをいう。以下同じ。)を提供した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
2 性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(性的影像記録保管)
第四条 前条の行為をする目的で、性的影像記録を保管した者は、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金に処する。

............................

法務省逐条説明
○ 第3条(性的影像記録提供等)
【説明】
1 趣旨
本条第1項は、性的影像記録を提供する行為がなされた場合には、それが特定かつ少数の者に対するものであっても、新たに、その提供先において、性的な姿態が他の機会に他人に見られる危険を生じさせ、ひいては、不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じさせる危険があることから、性的影像記録を提供する行為(撮影行為等により生じた性的影像記録を取得した者による二次提供行為を含む。)を処罰するものである。
また、本条第2項は、
○ 不特定又は多数の者に対して性的影像記録を提供する行為がなされれば、不特定又は多数の者において性的影像記録を事実上利用し得ることとなり、性的な姿態が不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じさせる危険を現実化させるという点で、法益侵害の程度が大きいこと
○ 性的影像記録を公然と陳列する行為についても、それがなされれば、性的影像記録を不特定又は多数の者において認識し得ることとなり、不特定又は多数の者に対する提供行為と同様、法益侵害の程度が大きいことから、いずれも重い法定刑による処罰の対象とするものである。
2 法定刑
(1) 特定かつ少数の者に対する性的影像記録提供罪(第1項)
特定かつ少数の者に対する性的影像記録提供罪の法定刑については、
○ 特定かつ少数の者に対する性的的影像記録の提供行為は、性的な姿態が他の機会に他人に見られる危険を生じさせ、ひいては、不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じさせる危険を有するが、後者の危険はいまだ現実化しておらず、前者の危険にとどまることから、法益侵害の程度は、性的姿態等撮影罪と同等のものと考えられること
○ 児童買春等処罰法の児童ポルノを特定かつ少数の者に提供する罪(第7条第2項)の法定刑(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)とのバランス
を踏まえ、性的姿態等撮影罪と同じものとしている。
(2) 不特定又は多数の者に対する性的影像記録提供罪、性的影像記録公然陳列罪
(第2項)
不特定又は多数の者に対する性的影像記録提供罪及び性的映像記録公然陳列
罪の法定刑については、
○ 性的な姿態が不特定又は多数の者に見られるという重大な事態が生じる危険を現実化させるという点で、法益侵害の程度が大きく、その当罰性の程度は、性的姿態等撮影罪よりも高いと考えられること
○ 児童買春等処罰法の児童ポルノを不特定又は多数の者に提供し、又は公然と陳列する罪(第7条第6項)とのバランス
を踏まえ、「5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科」としている。
また、本項の罪については、犯罪類型として、経済的利益の獲得が目的であることも少なくないと思われ、これらの犯罪が経済的に見合わないものであることを感銘させるためには、拘禁刑を科す場合においても、罰金刑を併せて科すことを可能としておくことが相当であると考えられることから、罰金の任意的併科を可能とすることとしている。

○ 第4条(性的影像記録保管)
【説明】
1 趣旨
本条は、提供又は公然陳列の目的で性的影像記録を保管する行為は、将来的に提供又は公然陳列を行う意図の下に、性的影像記録を保管するものであり、保護法益を侵害することから、これを処罰するものである。
2 法定刑
性的影像記録保管罪は、性的影像記録の提供や公然陳列の前段階の行為を処罰対象とするものであり、それらの行為と比較すると法益侵害の程度が小さいと考えられることから、その法定刑は、特定かつ少数の者に対する性的影像記録提供罪よりやや低いものとして、「2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金」としている。