児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童を脅迫して裸の画像を撮影・送信させた行為を、強要+児童ポルノ製造罪の観念的競合とした事例(佐世保支部r6.2.21)

児童を脅迫して裸の画像を撮影・送信させた行為を、強要+児童ポルノ製造罪の観念的競合とした事例(佐世保支部r6.2.21)
 最近は、強制わいせつ罪・不同意わいせつ罪+製造罪の観念的競合で処理されています。
 「送信させ」をわいせつ行為とするのを躊躇して、強要罪で起訴されることがあるようです。
 強要罪と製造罪とは併合罪とするのが判例です。強制わいせつ罪とは観念的競合。「一個の行為とは、法的評価を離れ、構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で、行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価される場合をいう。(最大判昭49・5・29)」というものの、構成要件的観点が捨象されていません。
 

東京高裁平成28年2月19日
なお,原判決は,本件において,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとしたが,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるから,これらは併合罪の関係にあるというべきである。したがって,本件においては,3項製造罪につき懲役刑を選択し,強要罪と3項製造罪を刑法45条前段の併合罪として,同法47条本文,10条により犯情の重い強要罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきであったところ,原判決には上記のとおり法令の適用に誤りがある 平成28年2月19日
東京高等裁判所第5刑事部
裁判長裁判官 藤井敏明
裁判官 福士利博
裁判官 山田裕文

提供 TKC
【文献番号】 25598401
【文献種別】 判決/長崎地方裁判所佐世保支部(第一審)
【裁判年月日】 令和 6年 2月21日
【事件名】 長崎県少年保護育成条例違反、強要、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制性交等被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 柴田寿宏 大島泰史 新納亜美
第2(令和5年7月11日付け起訴状公訴事実第2、第3の分)
 被告人は、B(当時13歳)から入手した同人のわいせつな画像データ等を拡散する旨告げるなどして同人を脅迫し、同人のわいせつな動画データを送信させようと考え、令和4年11月19日午前10時42分頃から同日午前10時57分頃までの間、長崎県内又はその周辺において、被告人の携帯電話機のアプリケーションソフト「インスタグラム」のメッセージ機能を使用して、Bが使用する携帯電話機に、「許せないです」「頼んだ時に言ったように見せてくれるなら許します」「バラします」「じゃあ出す動画撮って」などと記載したメッセージを送信してBに閲読させ、同人の陰部等を撮影した動画データを送信するよう要求し、この要求に応じなければ、同人のわいせつな画像データ等を拡散して同人の名誉等に危害を加える旨告知して脅迫し、よって、同日午前10時48分頃から同日午前11時2分頃までの間、3回にわたり、同人に、その陰部を露出した姿態をとらせてこれを同人の携帯電話機で動画撮影させた上、その動画データ3点を前記インスタグラムのメッセージ機能を使用して被告人の携帯電話機に送信させ,もってBに義務のないことを行わせるとともに、Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記動画データ3点を、前記インスタグラムを運営する「c,Inc.」が管理する場所不詳に設置されたサーバコンピュータに記録・保存させ、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第3(令和5年7月11日付け起訴状公訴事実第4、第5の分)
 被告人は、第2と同様に考え、令和4年11月22日午後9時54分頃から同日午後10時23分頃までの間、佐賀県内又はその周辺において、被告人の携帯電話機の前記インスタグラムのメッセージ機能を使用して、Bが使用する携帯電話機に、「腰振る動画撮って」「布団に擦り付けてって言ってるじゃん」「遅い」などと記載したメッセージを送信してBに閲読させ、同人の陰部等を撮影した動画データを送信するよう要求し、この要求に応じなければ、同人のわいせつな画像データ等を拡散して同人の名誉等に危害を加える旨告知して脅迫し、よって、同日午後9時54分頃から同日午後10時28分頃までの間、5回にわたり、同人に、その陰部等を露出した姿態をとらせてこれを同人の携帯電話機で動画撮影させた上、その動画データ5点を前記インスタグラムのメッセージ機能を使用して被告人の携帯電話機に送信させ、もってBに義務のないことを行わせるとともに、Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記動画データ5点を、前記サーバコンピュータに記録・保存させ、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。 
(法令の適用)
罰条
判示第1の所為 長崎県少年保護育成条例22条1項1号、16条1項
判示第2、第3の各所為
いずれも強要の点は刑法223条1項、児童ポルノ製造の点は包括して児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号
判示第4、第6の各所為
いずれも令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法177条前段
判示第5、第7の各所為
いずれも包括して児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号
科刑上一罪の処理
判示第2、第3の各罪
いずれも1個の行為が2個の罪名に触れる場合である(被害者を脅迫して動画データを送信させ、サーバコンピュータに記録・保存させるという強要の行為がそのまま児童ポルノ製造罪の行為となっている。)から、刑法54条1項前段、10条により1罪として犯情の重い強要罪の刑で処断
刑種の選択 判示第1、第5及び第7の各罪についていずれも懲役刑を選択
併合罪の処理
刑法45条前段、47条本文、10条により刑及び犯情の最も重い判示第6の罪の刑に法定の加重
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書

令和6年2月21日
長崎地方裁判所佐世保支部
裁判長裁判官 柴田寿宏 裁判官 大島泰史 裁判官 新納亜美