最近、石川県警は不同意わいせつ罪で逮捕するようだが、高検の見解としては強要罪のはずで、弁護人は主張して欲しいところだ。
不同意わいせつなど 容疑の高校生逮捕=石川 2025.02.01 読売新聞
発表によると、SNSで知り合った県内の10歳代の女性に「言うことを聞いていたら拡散しない」「写真とりあえず撮れ」などとメッセージを送って脅迫し、性的な姿態を撮影させ、送信させた疑い。調べに対し「女性を脅してわいせつな写真を送らせたことに間違いない」と容疑を認めているという。
福井地裁h27.1.8
強要,強要未遂,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
(犯罪事実)
第2 被告人は■■■■(当時歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,
1 同年月日午後時分ころから同月日午後時分ころまでの間,上記被告人方又はその周辺において,被告人使用の携帯電話機から,北海道内の同児童方又はその周辺にいた同児童に対し,上記「LINE」を使用し,同児童の使用する携帯電話機に,
裸画像を送らないと酷いことする旨
などの文言を送信し,これを同児童に関読させて,同児童をして,その裸体等を同児童使用のカメラ機能付き携帯電話機で撮影させ,それらの写真画像データを同携帯電話機から被告人使用の携帯電話機に上記「LINE」を使用して送信するよう要求し,もしそれらの要求に応じなければ同児童の名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない態度を示して脅迫して同児童をそのように怖がらせて,そのころ,同児童をして,その乳房や陰部等を露出した姿態をとらせ,それらを同児童使用のカメラ機能付き携帯電話機で撮影させるなどした上,同写真画像データ等25点を被告人使用の携帯電話機に上記「LINE」を使用して送信させて,同児童に義務のないことを行わせた。
2 上記1のとおり,同月午後時分ころから同月日午後時分ころまでの間,間児童に,その乳房や陰部等を露出した姿態をとらせ,それらを同児童使用の上記カメラ機能付き携帯電話機で撮影させるなどした上,それらの写真画像データ等10点を同携帯電話機から被告人使用の携帯電話機に上記「LINE」を使用して送信させ,そのころ,上記被告人方において,同写真画像データを被告人使用の携帯電話機で受信して,電磁的記録媒体である同携帯電話機本体の記録装置に記録して保存して,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した同児童に係る児童ポルノを製造した。
(争点に対する判断)
第1 検察官及び弁護人の各主張
判示第2の1の強要罪と判示第2の2の児童ポルノ製造罪の罪数関係について,検察官は併合罪と,弁護人は観念的競合とそれぞれ主張し,しているので,以下,検討する。
第2 当裁判所の判断
2 判示第2の1の強要罪と判示第2の2の児童ポルノ製造罪の罪数関係
刑法223条1項の強要罪に該当する行為と上記改正前の児童ポルノ法7条3項の児童ポルノ製造罪に該当する行為とは,一部重なる点があるものの,同製造罪において児童に同法2条3項3号に掲げる姿態をとらせる際,脅迫又は暴行によることは要件ではなく,また,それぞれ片方のみを犯すことが当然にできるのであって,上記両行為が通常伴う関係にあるとはいえない。
また,上記両行為の目的は前者が人に義務のないことを行わせること等,後者が児童ポルノの製造(なお,「姿態をとらせ」る行為は手段としての位置付けはできるものの,単なる製造行為と可罰的製造行為とを分ける要素であって,同製造罪の主要な部分とはいえない)という異なったものであり,両行為の性質にも相違があるといえる。
さらに,同製造罪については,複製行為も犯罪を構成し得ると解されるため,かかる場合には,強要罪に該当する行為と同製造罪に該当する行為の同時性が欠けることが甚だしいといえる。そうすると,同製造罪については,事案によっては相当広範囲にわたる行為に(包括)一罪性を認めざるを得ないことになると考えられるところ,これと強要罪との観念的競合の関係を肯定するとすれば,いわゆるかすがい作用により,科刑上一罪とされる範囲が不当に広がるおそれも否定できない。
以上によれば,上記両行為は,自然的観察のもとで社会的見解上別個のものと評価すべきであって,これを1個の行為とみることはできないから,上記両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,刑法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。
平成27年1月8日
福井地方裁判所刑事部
名古屋地裁金沢支部の検察官答弁書h27.7.23
被告人自らが撮影する場合と,被害者に撮影させる場合とでは,被害者にとってみれば,他人に自らの恥ずかしい姿態を撮影されることと,自らがそれと知りつつ撮影することの違いが生じているのであって,その性的差恥心の程度には格段の差があり,必然的に強制わいせつ罪の保護法益である「性的自由」の侵害の程度も両態様を比較すれば大きく異なる。
かかる差は強制わいせつ罪における「わいせつ行為」か否かの判断においては重要な要素を占めているものと思われるのであり,被害者の恥ずかしい姿態を被告人自ら撮影する行為がわいせつ行為であると認定されたとしても,被害者に恥ずかしい姿態を撮影させる行為をもって,直ちに強制わいせつ行為であると認定するには躊躇せざるを得ない。弁護人が縷々掲げる判例,裁判例が存在するにもかかわらず,これまで,本件のみならず,暴行脅迫により被害者自らに恥ずかしい姿態を「撮影させた」事案は多数件にわたり発生しているものと思われるところ,かかる事案を強制わいせつ罪として積極的に処断した事例はほとんどないものと思われるが,それはかかる理由によるものであろう。
名古屋高裁金沢支部h270723
第5控訴趣意中,法令適用の誤りの主張について
1原判示第1の1,2及び第2の1の各事実が強制わいせつ罪ないし同未遂罪を構成するとの主張-論旨は,要するに,原判示第1の1,2及び第2の1の各事実は,いずれも強制わいせつ罪ないし同未遂罪を構成し,強制わいせつ罪と法条競合の関係にある強要罪は成立しないのに,上記各事実につき強要罪ないし同未遂罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで検討するに,検察官は,広範な訴追裁量権を有しており,当該事案につき,立証の難易等を考慮して,強制わいせつ罪ではなく,強要罪として公訴を提起することが可能であり,このような場合,公訴の提起を受けた裁判所は,訴因である強要罪の成否のみを審判の対象とすべきであり,それにつき別途強制わいせつ罪が成立するかどうかといった,訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきものではなく,このことは親告罪である強制わいせつ罪につき被害者から告訴がない場合で、あっても異ならないというべきである。
そうすると,原判決が,本件につき,原判示第第1の1,2及び第2の1において被告人が各被害児童に行わせ,あるいは行わせようとした行為が強制わいせつ罪ないし同未遂罪が成立するか否かにつき立ち入ることなく,検察官が起訴状5の罪名で特定した強要罪ないし同未遂罪の成否についてのみ認定判断した上,それらに刑法223条1項ないし同法223条3項,1項を適用したことは正当であって,法令適用の誤りはない。
論旨は理由がない。
2原判示第2の1の強要罪と同第2の2の3項製造罪の罪数関係についての主張論旨は,要するに,原判示第2の1の強要罪に係る行為と同第2の2の3項製造罪に係る行為は,社会的見解上一個の行為であるから,両罪は観念的競合の関係にあり,あるいは,両罪は牽連犯の関係にあるとも考えられるから,科刑上一罪とすべきであるのに,両罪が併合罪の関係にあると判断した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで検討するに,両罪を構成する行為の重なり合いの程度についてみると,原判示第2の1の強要罪と原判示第2の2の3項製造罪においては,被害児童Bをして,その乳房や陰部等を露出した姿態をとらせ,それらを同児童に撮影させるなどした上,同写真画像データ等を被告人使用の携帯電話機に送信させたという点では,両罪の実行行為は重なっているものの,被害児童Bを脅迫した点は強要罪にのみ係る実行行為であり,被告人において写真画像データ等を受信して,電磁的記録媒体である携帯電話機本体の記録装置に記録して保存した点は,3項製造罪に係る実行行為で、あって,この点で,両罪の実行行為は重なり合って,いない部分がある。
とりわけ上記写真画像データ等の受信,保存行為は,被害児童Bに撮影させた画像を更に被告人が使用する携帯電話機本体の記録装置に保存して複製する行為であり,この複製行為により初めて児童ポルノである写真画像データが被告人により窓意的に社会に拡散される状況が生じるので、あって,上記受信,保存行為は,被害児童Bをしてその姿態を撮影,送信させる行為と並んで,3項製造罪にいう「製造」行為の中核的な部分を構成するというべきところ,この点については,強要罪の実行行為との間で重なり合いはない。
そうすると,原判示第2の1の強要罪と原判示第2の2の3項製造罪は,その各実行行為の主要部分6において重なり合っているといい難い。
また,強要罪は,当初の一時点の製造行為の際の強要行為につき成立するのが通常であるのに対し,3項製造罪では,複製行為も犯罪を構成し,当初の製造行為及びその後の継続的な各複製行為につき,時間的にも場所的にも相当広範囲にわたって包括ー罪として犯罪が成立する場合が予定されていることからすると,両罪は,行為の同時性が甚だしく欠けることになり,社会的に見て一体同質の行為であるとはいい難い。
さらに,強要罪と3項製造罪とは,それぞれ片方のみを犯すことが当然にできるのであり,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為は通常伴う関係にあるとはいえない。
以上からすれば,強要罪と3項製造罪の各行為における行為者の動態は,社会的見解上別個の行為と評価するのが相当であり,両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはないというべきである。
また,両罪は通常手段結果の関係に条前段の45あるともいえないから,同条項後段の牽連犯の関係にもなく,同法併合罪の関係にあるというべきである。
したがって,これと同旨の原判決の判断に法令適用の誤りはなく,論旨は理由がない。
東京高裁h27.12.22の検察官答弁書
しかも,原判示事実もそれと同旨の公訴事実も,被害者に撮影させた画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させて受信・記録した行為を含んでいるが,画像データを送信させた行為は,児童ポルノ3項製造罪の実行行為であり,強要罪の実行行為ではあるものの,強制わいせつ罪の構成要件に該当する事実ではない。また,送信させた画像データを受信・記録した行為は,児童ポルノ3項製造罪の実行行為ではあるものの,強制わいせつ罪の構成要件に該当する事実ではない。換言すれば,被害者に撮影させた画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させて受信・記録した行為は,児童ポルノ3項製造罪又は強要罪の構成要件には該当しても,強制わいせつ罪の構成要件には該当しない事実なのである。
更に,強要罪の訴因中に強制わいせつ罪の構成要件に該当し得る客観的事実が含まれている点についても,「人に義務のないことを行わせ」た行為は,強制わいせつ罪の構成要件には該当しない事実である画像データを送信させた行為(この行為は,児童ポルノ3項製造罪の構成要件には該当する事実である。)にも及んでいる。
このように,原判示事実(公訴事実も同旨)に含まれる行為は,強制わいせつ罪としては評価し尽くせない事実を含んでいる
強要罪と平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例(判タ1432号)
児童ポルノを製造する罪は,上記最高裁決定の事案である児童福祉法34条1項6号に触れる児童に淫行をさせる罪のほか,強姦罪,強制わいせつ罪,青少年保護育成条例にいう淫行をさせる罪などとともに犯されることも多いが,上述したとおり,「1個の行為」性が肯定できるか否かは事案ごとの判断となるため,上記最高裁決定後,こうした罪と児童ポルノを製造する罪との罪数について,いかなる判断がされるかについては,事例の集積が待たれるところである。
本判決は,強要罪と3項製造罪の関係についても,上記最高裁決定と同様の罪数判断をした高裁レベルの判決として一事例を加えるもので,参照価値があるものと思われる。
なお,本判決のほか,強要罪と3項製造罪の関係について,本判決同様,併合罪の関係にあるとの判断をした高裁判決として,広島高裁岡山支部平成22年l2月15日判決(高等裁判所刑事裁判速報集平成22年度l82頁)がある。東京高裁H28.2.19
判 決
上記の者に対する強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成27年8月25日新潟地方裁判所高田支部が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官阿賀学出席の上審理し,次のとおり判決する。
主 文
本件控訴を棄却する。
理 由
弁護人奥村徹の控訴趣意は,訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り及び量刑不当の主張であり,検察官の答弁は,控訴趣意にはいずれも理由がない,というものである。
1 法令適用の誤り及び訴訟手続の法令違反の主張について
論旨は,要するに,原判決が強要罪に該当するとして認定した事実は,それだけでも強制わいせつ罪を構成するから,強要罪が成立することはないにもかかわらず,これを強要罪であるとして刑法223条を適用して有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり,また,原判決が平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の罪(以下「3項製造罪」という。)に該当するとして認定した事実も,実質的には強制わいせつ罪に当たり,以上の実質的に強制わいせつ罪に該当する各事実について,告訴がないまま起訴することは,親告罪の趣旨を潜脱し,違法であるから,公訴棄却とすべきであるのに,実体判断を行った原審には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というものであると解される。
(1)強要罪が成立しないとの主張について
記録によれば,原判決は,公訴事実と同旨の事実を認定したが,その要旨は,被害者が18歳に満たない児童であることを知りながら,同女に対し,要求に応じなければその名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して,乳房,性器等を撮影してその画像データをインターネットアプリケーション「LINE」を使用して送信するよう要求し,畏怖した被害者にその撮影をさせた上,「LINE」を使用して画像データの送信をさせ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録し,もって被害者に義務のないことを行わせるとともに,児童ポルノを製造した,というものである。
すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。
弁護人は,①被害者(女子児童)の裸の写真を撮る場合,わいせつな意図で行われるのが通常であるから,格別に性的意図が記されていなくても,その要件に欠けるところはない,②原判決は,量刑の理由の部分で性的意図を認定している,③被害者をして撮影させた乳房,性器等の画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させる行為もわいせつな行為に当たる,などと主張する。
しかしながら,①については,本件起訴状に記載された罪名及び罰条の記載が強制わいせつ罪を示すものでないことに加え,公訴事実に性的意図を示す記載もないことからすれば,本件において,強制わいせつ罪に該当する事実が起訴されていないのは明らかであるところ,原審においても,その限りで事実を認定しているのであるから,その認定に係る事実は,性的意図を含むものとはいえない。
また,②については,量刑の理由は,犯罪事実の認定ではなく,弁護人の主張は失当である。
そして,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。
以上のとおり,原判決が認定した事実は,強制わいせつ罪の成立要件を欠くものである上,わいせつな行為に当たらず強要行為に該当するとみるほかない行為をも含む事実で構成されており,強制わいせつ罪に包摂されて別途強要罪が成立しないというような関係にはないから,法条競合により強要罪は成立しないとの弁護人の主張は失当である。
(2)公訴棄却にすべきとの主張について
以上のとおり,本件は,強要罪に該当するとみるほかない事実につき公訴提起され,そのとおり認定されたもので,強制わいせつ罪に包摂される事実が強要罪として公訴提起され,認定されたものではない。
また,原判決の認定に係る事実は,前記(1)のとおり,強制わいせつ罪の構成要件を充足しないものである上,被害者撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機で受信・記録するというわいせつな行為に当たらない行為を含んだものとして構成され,これにより3項製造罪の犯罪構成要件を充足しているもので,強制わいせつ罪に包摂されるとはいえないし,実質的に同罪に当たるともいえない。
以上のとおり,本件は,強要罪及び3項製造罪に該当し,親告罪たる強制わいせつ罪には形式的にも実質的にも該当しない事実が起訴され,起訴された事実と同旨の事実が認定されたものであるところ,このような事実の起訴,実体判断に当たって,告訴を必要とすべき理由はなく,本件につき,公訴棄却にすべきであるとの弁護人の主張は,理由がない。
(3)小括
以上の次第で,法令適用の誤り及び訴訟手続の法令違反をいう論旨には,理由がない。
2 法令適用の誤りの主張について
論旨は,原判決は,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとした上で,強要罪の犯情が重いとして同罪の刑で処断することとしたが,本件の脅迫は一時的で,害悪もすぐに止んでいるのに対し,3項製造罪は画像の流通の危険やそれに対する不安が長期に継続する悪質なもので,原判決の量刑理由でも,専ら児童ポルノ画像が重視されており,犯情は3項製造罪の方が重いから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある, というのである。
しかしながら,本件の強要罪に係る脅迫行為の執拗性やその手口の卑劣性などを考慮すれば,3項製造罪に比して強要罪の犯情が重いとした原審の判断に誤りはない。
法令適用の誤りをいう論旨は,理由がない。
なお,原判決は,本件において,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとしたが,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるから,これらは併合罪の関係にあるというべきである。したがって,本件においては,3項製造罪につき懲役刑を選択し,強要罪と3項製造罪を刑法45条前段の併合罪として,同法47条本文,10条により犯情の重い強要罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきであったところ,原判決には上記のとおり法令の適用に誤りがあるが,この誤りによる処断刑の相違の程度,原判決の量刑が懲役2年,執行猶予付きにとどまることを踏まえれば,上記誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。
3 量刑不当の主張について
4 結論
よって,刑訴法396条により,主文のとおり判決する。
平成28年2月19日
東京高等裁判所第5刑事部
裁判長裁判官 藤井敏明
裁判官 福士利博
裁判官 山田裕文