「スカートとズボンが一体となった着衣」は「人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分」に該当しないから、撮影に成功しても性的姿態撮影罪にならないし、撮影に失敗しても性的姿態撮影未遂罪にもならない。
せいぜい迷惑条例の卑わい行為(撮影準備行為)だろう。
ズボンはいてる人は、外見上「人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分」が見えていないから、スカート部分内を撮影しても、性的姿態撮影罪(既遂)にはならない。カメラを向けたとしても性的姿態撮影罪(未遂)にはならない。不能犯で説明してもいい。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7730257bd1b1498207bd9e8894b12610537cd0f3?source=sns&dv=pc&mid=other&date=20240119&ctg=loc&bt=tw_up
警察によりますと、男は18日午後0時半ごろ、JR広島駅構内の上りエスカレーターで、専門学校生の女性(21)のスカート内にスマートフォンを差し入れ、下半身を動画で撮影しようとした疑いがもたれています。しかし女性は、スカートとズボンが一体となった着衣を履いていたため、未遂に終わったということです。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/police/kensu.html#:~:text=%E6%80%A7%E7%9A%84%E5%A7%BF%E6%85%8B%E7%AD%89%E6%92%AE%E5%BD%B1,%EF%BC%8856%EF%BC%89%E3%82%92%E7%8F%BE%E8%A1%8C%E7%8A%AF%E9%80%AE%E6%8D%95%E3%80%82
性的姿態等撮影未遂(広島南署)
1月18日、広島市南区松原町のJR広島駅構内で、被害者のスカート内に撮影機能付きスマートフォンを差し入れ、下半身を撮影しようとしたが、スカートとズボンが一体の着衣を履いていたため未遂に終わったとして男(56)を現行犯逮捕。
令和五年法律第六十七号
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
第二条
1次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
2 前項の罪の未遂は、罰する。
【逐条説明】性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案逐条説明
2 撮影対象
本条の罪の撮影対象については、撮影された場合に自己の性的な姿態を他の機
会に他人に見られるかどうかという意味での性的自由・性的自己決定権が侵害さ
れるものとして「性的姿態等、すなわち、、」
○人の性的な部位性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部臀部又は胸部や、人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
○わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
としている。
他方、性的姿態等のうち、撮影対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れる状況にあることを認識しながら自ら露出し又はとっているものについては、
○衣服を着けるなどしていれば見られないにもかかわらず、あえて自ら露出し又はとったものである以上、当該撮影対象者が、保護法益を放棄している場合があると考えられること
○性的姿態等が不特定又は多数の者の目に触れる状況であることを認識しながら自ら露出し又はとっている者が、撮影行為までも許容する意思なのか、その場で見られることだけしか許容しない意思なのかは、外形的・客観的に区別が困難であり、撮影対象者の内心で区別するほかないが、そのような内心のみで犯罪の成否が分かれることとすると、処罰の外延が不明確になると考えられること
から、一律に撮影対象から除外することとしている(注1 。
・・・
2項
本項は、結果として撮影に至らなかった行為の中には、例えば、撮影する目的で撮影機器をスカートの下に差し向けてシャッターを押したが、露光不足で撮影に失敗した場合など、法益侵害の危険性を創出するものも含まれ得ることから、性的姿態等撮影罪の未遂犯を処罰することとするものである。
浅沼雄介検事「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」〔警察学論集第77巻第1号〕
ア「性的姿態等」の定義における各文言の意義等
(ア)本項第1号から第3号までの「人」とは、犯人以外の者をいう。
(イ)本項第1号イの「性的な部位」は、衣服で覆われていないものを前提とする。
もっとも、着衣の上から撮影する行為であっても、例えば、透視機能のある撮影機器を用いて着衣を透過させて「性的な部位」を撮影した場合には、衣服で覆われていない「性的な部位」を撮影するものであるから、その態様・方法として、「ひそかに」撮影するなどといった本項各号所定の要件を満たすときは、処罰対象となり得る。
(ウ)本項第1号イの「下着」とは、いわゆるショーツ、トランクス、ブリーフ、ブラジャーなどを指す。
「下着」には、様々な形態のものがあり得るが、本条においては、撮影された場合に保護法益が侵害されるといえるものに限定する観点から、「通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるもの」で、「現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分」に限ることとされた。
なお、下着のうち性的な部位を「間接に覆っている」部分も「性的姿態等」に含めることとされたのは、例えば、冬期に重ね履きしている下着など、性的な部位を間接的に覆う下着も撮影行為の客体に含める趣旨である。
追記 2024年10月20日
性的姿態撮影罪は撮影行為のみを処罰するので、撮影に着手したら実行の着手で、撮影すれば既遂で、撮影に失敗すれば撮影罪未遂というのはわかるが、そもそも「撮影」概念が議論されてないような気がします
銀塩カメラの場合、フィルム感光段階で既遂になるのか、現像に失敗した場合は未遂なんだからフィルム段階なら未遂じゃないかとか。
スマホで撮影して内蔵記録装置に記録した時点で既遂になるとして、それをpcに移したり複製する行為は撮影罪にならない(不可罰的事後行為)のかとか。
法務省の逐条説明でもシャッターを押した時点で着手を認めているようです。差し向けた・差し入れた時点では未遂にならない。
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案【逐条説明】令和五年二月法務省
本項は、結果として撮影に至らなかった行為の中には、例えば、撮影する目的で撮影機器をスカートの下に差し向けてシャッターを押したが、露光不足で撮影に失敗した場合など、法益侵害の危険性を創出するものも含まれ得ることから、性的姿態等撮影罪の未遂犯を処罰することとするものである。
https://www.moj.go.jp/content/001374382.txt
法制審議会
刑事法(性犯罪関係)部会
第7回会議 議事録
木村委員
も、特に盗撮行為については、広く条例で規定が設けられていることを考えれば、都道府県の区別なく、法律で統一的に規制するという時期に来ているのではないかと思いますので、それは是非入れていただければと思います。 なお、お示しいただいた配布資料19の中の「撮影する行為」という文言について、きちんと理解できているかどうかよく分からないのですけれども、どこまで含まれるのかというのは、議論する余地があるのかなと思います。条例では、例えば、県によっては機器の設置まで含むというような規定もあるようです。特に赤外線カメラ等を準備して機器を設置すれば、十分当罰性はあると思いますので、未遂罪を作るかどうかという議論と関係しますけれども、未遂のような行為も処罰できるような対応は必要なのかなと思います。
○佐藤(拓)幹事 今の木村委員の発言と重なるところもあるかと思うのですけれども、私は、配布資料19の1枚目の検討課題の、先ほどの御発言で二つ目の丸以降のところでの御意見がありましたけれども、まず一つ目の丸のところに関係して発言させていただきたいと思います。 保護法益に関してですけれども、当部会の第5回会議で議論しましたように、撮影罪の保護法益については、自己の性的姿態を他の機会に他人に見られないという意味での性的自由・性的自己決定権とすることが考えられますところ、保護法益をこのように捉えることを前提に、撮影としてどのような行為を捕捉すべきかを確認しておきたいと思います。 性的な姿態の視覚的情報が記録・固定化されることによって、性的な姿態を他の機会に他人に見られる危険性が創出される一方で、性的な姿態を単に撮影機器のファインダーを通して見るだけの場合や、撮影する目的で撮影機器をスカートの下に差し入れるだけの場合、その視覚的情報は記録・固定化されませんので、先ほど述べたような意味での保護法益の侵害というものは、まだ発生していません。したがって、撮影とは保護法益の侵害が生じ得る映像の記録・固定化を伴う行為を意味し、記録・固定化を伴わない行為は撮影行為そのものには当たらないと考えるのが適当だと思われます。 もっとも、木村委員がおっしゃいましたように、結果としてこのような意味での撮影に至らない行為の中でも、例えば、撮影する目的で撮影機器をスカートの中に差し向けてシャッターを押したけれども、何らかの事情で撮影に失敗したと、記録としては残らなかったという場合などは、法益侵害が発生しなかったのは偶然にすぎず、当罰的であるように思われます。そこで、例えば、撮影罪の未遂罪ですとか、条例のように差し向けるとか機器の設置を独立の構成要件とするとか、そういったことも検討すべきではないかと考えます。
○井田部会長 保護法益について、性的自由・性的自己決定権と解すべきだとした上で、撮影というのは映像の記録・固定化という、正に保護法益の侵害が生じ得る、そういう行為を意味すると解すべきだという御意見でした。また、それとの関係で、もし未遂の可罰性を検討するのであれば、それは別途検討する必要があるということで、単にファインダーでのぞいてみるというだけでは、撮影には当たらないという御意見と理解しました。
慶應義塾大学教授佐藤 拓磨
有斐閣online
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
2023年刑事法改正の焦点(4)撮影の意義
前述の通り、本罪の処罰根拠は、性的な姿態の影像が記録・固定化されることによって他の機会に他人に見られる危険が生じることにある。そのため、①性的な姿態を単に撮影機器のファインダーを通して見るだけの行為や、②撮影する目的で撮影機器をスカートの下に差し入れるだけの行為は、視覚的情報の記録・固定化を伴わないため、本罪における「撮影する行為」には該当しないと解される27)。
①については、行為が行われた具体的状況によるが、迷惑防止条例上の窃視罪28)や軽犯罪法上の窃視罪で対応し、
②については、本罪の未遂により処罰すべきであろう。なお、影像記録の生成や記録媒体への保存を伴わず影像を送信する行為は、5条の影像送信に該当する。