児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

その他の姿態(刑法182条3項)とは膣と肛門をなめ、又はをなめられる姿態を想定しています

その他の姿態(刑法182条3項)とは膣と肛門をなめ、又はをなめられる姿態を想定しています
 そう読むらしい

第百八十二条 
3 十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。

城祐一郎「性犯罪規定の大転換~令和5年における刑法および刑事訴訟法の改正の解説~(後)」捜査研究877
第3刑法182条3項について
この3項の規定は、「映像を送信すること」を「要求した者」を処罰するものであるが、当該映像は、「自己の身体について意図しない形で流通されることはないという自己決定の侵害ではないかと思います。自分自身の身体が物扱いされないという尊厳の問題ではないかと思います。」'略)と述べられており、このように個人の自己決定権や個人の尊厳を侵害するものであることから、それを要求する行為自体において可罰性を肯定したものである。
つまり、「性的な姿態の撮影行為やその画像等の提供行為は、性的な姿態が、単にその場で認識されることを超えて、その姿態をとった時以外の他の機会に他人に見られる危険を生じさせるものであり、しかも、特定かつ少数の者に見られるにとどまらず、不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じさせる危険を有すると考えられます。」そこで、「自己の性的な姿態を他の機会に他人に見られるかどうかという意味での被害者の性的自由・性的自己決定権を保護するため、これを侵害する行為を処罰することとし」(106)たものであると説明されている。

そして、被疑者の「要求行為の対象行為は、現在の実務において非対面.非接触型の強制わいせつ罪の成立が認められているわいせつな行為を参考にしているところ、遠隔型の性犯罪は、行為者が被害者と身体的に接触することなく、被害者自身の行為を利用してわいせつな行為を実現するものであって、被害者に一定の行為を行わせることにより、その身体を性的な対象として利用できる状態に置くことが必要であると考えられることから、行為者の要求行為に基づいて16歳未満の者が性的な姿態をとる行為は、それがわいせつな行為を構成するために不可欠な要素であると考えられるためであります」107)と説明されている。
そのため、本項各号では、「姿態をとって」と表現されており、これは16歳未満の者に対して、性的な姿態をとらせることを要件としていることを示しているのであり、したがって、16歳未満の者に性的な姿態をとらせることなく、当該16歳未満の者があらかじめ持っていた性的画像などを送信するように要求することは処罰の対象とはされていない。
また、本項2号の「その他の姿態」としては、「例えば、性的な部位をなめ、又は性的な部位をなめられる姿態を想定しています」108)と説明されている。ちなみに、ここでいう「性的な部位」は、膣と肛門を指している'(109)

第1 日 時 令和4年11月14日(月) 自 午前9時58分
至 午後1時19分
第2 場 所 法務省大会議室
第3 議 題 1 試案についての議論
2 その他
○浅沼幹事
御質問の二点目ですけれども、試案「第1-6」の「2」に関して、性的な姿態をとることが要件となっているかということですけれども、試案「第1-6」の「2」においては、その要求行為の対象行為につきまして、16歳未満の者に姿態をとらせることを要件としています。その理由を御説明します
と、試案「第1-6」の「2」の要求行為の対象行為は、現在の実務において非対面・非接触型の強制わいせつ罪の成立が認められているわいせつな行為を参考にしているところ、遠隔型の性犯罪は、行為者が被害者と身体的に接触することなく、被害者自身の行為を利用してわいせつな行為を実現するものであって、被害者に一定の行為を行わせることにより、その身体を性的な対象として利用できる状態に置くことが必要であると考えられることから、行為者の要求行為に基づいて16歳未満の者が性的な姿態をとる行為は、それがわいせつな行為を構成するために不可欠な要素であると考えられるためであります。
最後の三点目ですけれども、試案「第1-6」の「2」における「その他の姿態」としては、この「試案」の趣旨として御説明しますと、例えば、性的な部位をなめ、又は性的な部位をなめられる姿態を想定しています。
○中川委員 性的な部位というのは、具体的にはどのようなものを考えているのですか。
○吉田幹事 例えば、この試案「第1-6」の「2(2)」に書いてあるような、膣や肛門といったものが該当し得ると考えています。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案【逐条説明】令和五年二月法務省
の成立が認められると考えられる行為を要求行為の対象とする観点から、
〇性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信する行為
〇膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信する行為
の要求行為を処罰対象行為としている(注3)。
(注2)アプリケーションソフトのダイレクトメッセージ機能を使用して、遠隔地にいた被害者(当時9歳)に対し、陰部、乳房等を露出した姿態をとって撮影し被告人に送信するよう要求して、被害者に、その陰部及び乳房を露出した姿態をとらせて撮影させた行為の「わいせつな行為」該当性が争われた事案(大阪高判令和3年7月14日・公刊物未登載)において、大阪高裁は、「撮影させた部位のうち、陰部(性器自体は写っていないものの、その周辺部である。)は性的要素が強く、乳房も性を象徴する典型的な部位である。また、衣服を脱がせる行為(又は衣服を着けない姿態をとらせる行為)は、裸になることを受忍させてその身体を性的な対象として行為者の利用できる状態に置くものであって、単独でも「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものであるし、続いてそうした衣服を着けない姿態を撮影する行為も、自ら性的な対象として利用できる状態に置かせた裸体を、さらに記録化することによってまさに性的な対象として利用するものであり、それによって性的侵害性が強まるといえるから、「わいせつな行為」にあたり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものといえる。」としている。
このほか、強制わいせつ罪の成立が認められた事案として、例えば、
〇被害者(当時11歳)に対し、乳房や陰部を露出して自慰行為をする様子を動画で撮影して被告人が使用する携帯電話機に送信するように要求し、被害者に衣服を脱がせ乳房、陰部等を露出させ陰部に指を挿入した姿態等をとらせた事案(東京地判令和4年3月10日・公刊物未登載)がある。
(注3)遠隔型の処罰規定については、対面型の処罰規定とは異なり、加重処罰規定を設けることとしていないところ、これは、次の理由による。
すなわち、本条第3項の要求行為の対象は、前記4のとおり、現在の実務において強制わいせつ罪の成立を認めた裁判例を踏まえて規定しており、要求行為の対象となる行為が実現した場合には、強制わいせつ罪が成立すると考えられる。
その上で、要求行為からその対象となる行為が実現するまで、すなわち、強制わいせつ罪が成立するに至るまでの過程において、一般的・類型的に同罪に至る危険性が高まり、加重処罰の対象とするに足りる新たな当罰性を有する行為があり得るかについては、
〇行為者からの要求を直ちに承諾して、そのまま要求された行為に及ぶ場合も、相当程度あり得ることを踏まえると、要求行為後の行為について、加重処罰の対象とするに足りるものを明確に捕捉することは困難である
と考えられる。
そのため、遠隔型の処罰規定については、加重処罰規定を設けることとはしていない。

 いまのところ判例が強制わいせつ罪とするのは「撮影させ」までですよね。
 要求行為は強制わいせつ罪の実行行為となるから、要求だけで強制わいせつ罪未遂になる可能性があります。