児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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被害者を欺してテレビ会議ソフトを起動させて裸にさせた行為は準強制わいせつ罪(札幌高裁R06.3.5)

 送信させるはわいせつではないという東京高裁h28.2.19を超えました。

札幌高等裁判所令和6年3月5日
(2)当裁判所の判断
上の原判決の判断は、何ら不合理な点はなく、当裁判所も是認することができる。
これに対し、所論は、多岐にわ、たるが、結局、
①原判示第1における被告人の行為は、遠隔地から被害者に対し、その裸体を撮影させるものであるが、被害者に直接接触するものではなく、被告人が被害者と対面するものでもないから、性的侵襲性は低く、更に被害者をして自慰行為等をさせるなどしたものでもないから、「わいせつな行為」とはいえない、
②原判示第2における被告人の行為は、アプリケーションソフトのビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、Aに陰部及び乳房等を露出させる姿態をとらせたというものであるが、被告人が被害者と対面するものではないから、性的侵襲性は低く、更に被害者をして自慰行為等をさせたものでもないから、「わいせつな行為」とはいえないし、被告人の行為は原判決が第1の事実において「わいせつな行為」に当たらないとした画像の送信行為を含むものであるから、その意味でも「わいせつな行為」に当たらない、というものと解される。
①についてみると、原判示第1に係る被告人の行為は、わいせつの意図をもって、身分及び目的を偽り、電話を通じて指示し、被害者の陰部や乳房等という性器や性的意味合いを有する部位を、衣類を脱がせて露出させ、自慰行為ではないとしても、被害者に性器に指を挿入するよう求め、その姿態を撮影させたというものであり、そうした姿態を被害者以外の第三者に知り得る状態に置いたものと評価できるものであるから、被害者の身体を性的に利用する行為として「わいせつな行為」に該当するものというべきである。
また、被告人自身が被害者の身体に接触しておらず、撮影をその場で視認してもいないものの、被害者と固定電話をつないだまま、撮影後に送信された写真を見るなどしつつ、更に撮影する部位や姿態を繰り返し指示して撮影を行わせたともいうのであり、要求行為と撮影との間の時間差はわずかであるし、また、被告人は、被害者に撮影した写真データを送信することをも要求して撮影させており、その撮影させる行為自体に被害者がこの要求に従って写真を送信して被告人がこれを閲覧することになる具体的な危険性が認められることも踏まえると、所論指摘の事情は「わいせつな行為」であることを否定するようなものではないというべきである。
なお、所論は、本件のような撮影させる行為は、これまで強要罪として処罰されるのが通例であり、(準)強制わいせつ罪として処罰するのは不当であるともいうが、所論が引用する裁判例はいずれも起訴裁量を有する検察官が強要罪として起訴したものを有罪としたもので、(準)強制わいせつ罪の成否が判断の対象となっていたものではないから、準強制わいせつ罪として起訴された本件とは事案を異にし、所論の根拠として引用するのは適切とはいえず、所論は採用できない。
②についてみると、原判示第2に係る被告人の行為は、同様に、わいせつの意図をもって、身分及び目的を偽り、アプリケーションソフトのビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、被害者の陰部や乳房等という性器や性的意味合いを有する部位を、衣類を脱がせて露出させたものであり、被告人において、撮影の現場にいるのと同様に被害者の姿態を即時に認識することが可能であるから、原判示第1の行為よりも直接的に被害者の身体を性的に利用するものといえ、自慰行為等をさせていないとしても、「わいせつな行為」に該当することは明らかである。
なお、所論は、原判決が、撮影させる行為のみならず、原判示第1の事実では「わいせつな行為」に当たらないとした、撮影した動画を送信させる行為をも「わいせつな行為」とした点で不当であるという。
しかしながら、原判決が原判示第1の事実について判示したのは、撮影させる行為のみで「わいせつな行為」として十分であり、送信させる行為(画像共有アプリケーションソフトにアップロードさせる行為)は必ずしも必要不可欠ではないとしたものにすぎず、所論は原判決を正解しないものである。
実質的にみても、被告人は、ビデオ通話機能を通じ、被告人が視聴可能な状態で、被害者に陰部等を露出させる姿態をとらせたものであって、被害者にその姿態を撮影させる行為と送信させる行為とは社会的事実として不可分の1個の行為であるから、原判決が原判示第2で挙示する被告人の行為に送信行為としての側面があるからといって、全体として「わいせつな行為」該当性が否定される謂れはなく、所論は失当である。
その他所論がるる主張する点も含め、所論はいずれも採用できず、法令適用の誤りの論旨は理由がない。

強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】東京高等裁判所判決/平成27年(う)第1766号
【判決日付】平成28年2月19日
 すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。

 弁護人は,①被害者(女子児童)の裸の写真を撮る場合,わいせつな意図で行われるのが通常であるから,格別に性的意図が記されていなくても,その要件に欠けるところはない,②原判決は,量刑の理由の部分で性的意図を認定している,③被害者をして撮影させた乳房,性器等の画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させる行為もわいせつな行為に当たる,などと主張する。
 しかしながら,~~,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。