強制わいせつ罪・不同意わいせつ罪と、児童ポルノ製造罪を観念的競合とするもの 

強制わいせつ罪・不同意わいせつ罪と、児童ポルノ製造罪を観念的競合とするもの 

仙台高裁 H21.3.3
仙台高裁 H22.3.4
高松高裁 H22.9.7
広島高裁 H23.5.26
広島高裁 H23.12.21
阪高裁 H25.6.21
東京高裁 H30.1.30
高松高裁 H30.6.7
送信型 大阪高裁 R3.7.14
送信型 大阪高裁 R4.1.20
送信型 札幌高裁 R5.1.19
送信型 高松高裁 R7.2.13
東京高裁 R7.6.18
送信型 東京高裁 R7.7.4


観念的競合説

保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因 わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件
東京高判平成30年1月30日高等裁判所刑事裁判速報集(平30)号80頁〔28260882〕
  (3) 原判決は、上記罪数判断の理由を明示していないものの、基本的には、被害児童に姿態をとらせてデジタルカメラ又はスマートフォン(付属のカメラを含む。)等で撮影した行為が強制わいせつ(致傷)罪に該当する場合に、撮影すると同時に又は撮影した頃に当該撮影機器内蔵の又は同機器に装着した電磁的記録媒体に保存した行為(この保存行為を「一次保存」という。)を児童ポルノ製造罪とする場合には、これらを観念的競合とし(原判示第7、第9から第11まで)、一次保存をした画像を更に電磁的記録媒体であるノートパソコンのハードディスク内に保存した行為(この保存行為を「二次保存」という。)を児童ポルノ製造罪とする場合には、併合罪としているものと解される(なお、原判決が併合罪としたもののうち、原判示第2の1、第5の3、5、第6の各強制わいせつ行為では、被害児童に対し緊縛する暴行を加えており、これらについては、このことも根拠として併合罪とし、観念的競合としたもののうち、原判示第7の強制わいせつ行為では、被害児童に対し暴行を加えているが、その暴行態様は、緊縛を含まず、おむつを引き下げて陰茎を露出させた上、その包皮をむくなどしたというものであって、姿態をとらせる行為と重なり合う程度が高いとみたとも考えられ、原判決は、罪数判断に当たり、強制わいせつの態様(暴行の有無、内容)をも併せ考慮していると考えられる。)。いずれにせよ、わいせつな姿態をとらせて撮影することによる強制わいせつ行為と当該撮影及びその画像データの撮影機器に内蔵又は付属された記録媒体への保存行為を内容とする児童ポルノ製造行為は、ほぼ同時に行われ、行為も重なり合うから、自然的観察の下で社会的見解上一個のものと評価し得るが、撮影画像データを撮影機器とは異なる記録媒体であるパソコンに複製して保存する二次保存が日時を異にして行われた場合には、両行為が同時に行われたとはいえず、重なり合わない部分も含まれること、そもそも強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは、前者が被害者の性的自由を害することを内容とするのに対し、後者が被害者のわいせつな姿態を記録することによりその心身の成長を害することを主たる内容とするものであって、基本的に併合罪の関係にあることに照らすと、画像の複製行為を含む児童ポルノ製造行為を強制わいせつとは別罪になるとすることは合理性を有する。原判決の罪数判断は、合理性のある基準を適用した一貫したものとみることができ、理由齟齬はなく、具体的な行為に応じて観念的競合又は併合罪とした判断自体も不合理なものとはいえない。
 所論はいずれも採用できず、論旨は理由がない。

東京高裁r7.6.18
(2) 判断:原判示第1及び第2の各事実において、性的な意味合いが強い行為は、Aに性的な関心を抱く被告人に提供するために、胸部及び陰部を露出したAの姿態を撮影し、記録・保存した行為である。実母であるBがAの衣服を脱がせた行為は、各わいせつな行為の一部をなすとはいえ、それ自体の性的な意味合いは強くなく、上記性的な意味合いが強い行為をなすための準備的な行為である。このような事案において、Bのした行為を社会的見解上一個のものと評価し、強制わいせつ罪と3項製造罪とがいわゆる観念的競合として科刑上一罪の関係にあるとした原判決の判断が誤っているとはいえない。
  また、原判示第3の事実は、児童の性器等に触るなどの身体にじかに接するわいせつな行為をするとともに、当該行為に係る児童の姿態を撮影して記録・保存するという態様ではなく、Aに胸部及び陰部を露出した姿態をとらせて、これを撮影して記録・保存したというものである。このような事案において、被告人のした行為を社会的見解上一個のものと評価し、不同意わいせつ罪と4項製造罪とがいわゆる観念的競合として科刑上一罪の関係にあるとした原判決の判断が誤っているとはいえない。
  よって、訴因の不特定をいう論旨は、いずれもその前提を欠いており、不法な公訴受理には当たらない。