児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ公然陳列罪が来たら、包括一罪を主張する。

植村判決に遠慮してるけど高裁レベルでは併合罪になりつつあるかな。
 

(2)高裁判例
①東京高裁h16.6.23*1植村判決(一審 横浜地裁h15.12.15*2)
 数名の児童の姿態であって、数回の陳列行為がある事件である。1審は、児童ごとに1罪とした。

横浜地裁h15.12.15
(法令の適用)
1 罰条  被害者ごと(画像が複数ある被害者については,その複数は包括して)に,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条1項
2 科刑上一罪の処理  刑法54条1項前段,10条(一罪として,犯情の最も重い別紙一覧表番号1の被害者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反罪の刑で処断)

 控訴審(植村立郎裁判長)は、犯意も行為も複数あるにもかかわらず、被害児童1名1罪とした原判決を修正して、「被告人は,22画像分の児童ポルノを記憶・蔵置させた本件ディスクアレイ1つを陳列しているから,全体として本罪1罪が成立するにすぎない」と明確に判示している。

東京高裁h16.6.23
2所論は,要するに,原判決は,被害児童ごとに法7条1項に違反する罪(児童ポルノ公然陳列罪)が成立し,結局これらは観念的競合の関係にあるとして,その罪数処理を行っているが,本罪については,被害児童の数にかかわらず一つの罪が成立するというのが従来の判例であるから,原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第16)。
 そこで,本件に即して検討すると,法7条1項は,児童ポルノを公然と陳列することを犯罪としているから,同罪の罪数も,陳列行為の数によって決せられるものと解するのが相当である。確かに,所論もいうように,児童個人の保護を図ることも法の立法趣旨に含まれているが,そうであるからといって,本罪が,児童個人に着目し,児童ごとに限定した形で児童ポルノの公然陳列行為を規制しているものと解すべき根拠は見当たらず,被害児童の数によって,犯罪の個数が異なってくると解するのは相当でない。
 そして,本件では,被告人は,22画像分の児童ポルノを記憶・蔵置させた本件ディスクアレイ1つを陳列しているから,全体として本罪1罪が成立するにすぎないものと解される。したがって,この点に関する所論は正当であって,被害児童ごとに本罪が成立するとした原判決の法令解釈は誤りである。

犯意が異なろうが、被害者が異なろうが、サーバーが一個であれば、一罪だというのが従前の高裁判例である。

②大阪高裁h15.9.18*3 (一審 奈良地裁h14.11.26*4)
 3回のダウンロード販売を「販売罪」とした原判決を破棄して「公然陳列罪」にした際、包括一罪とした。

阪高裁h15.9.18
(法令の適用)
第1の所為 児童買春児童ポルノ禁止法4条
第2の所為 包括して同法7条1項
児童買春児童ポルノ禁止法2条3項の各号に重複して該当する画像データがあることは所論指摘のとおりであるものの,検察官においてそれらの重複するものについてはより法益侵害の程度の強い先順位の号数に該当する児童ポルノとして公訴事実に掲げていることは明らかであって,包括一罪とされる本件において,それぞれの画像データが上記各号の児童ポルノのいずれに該当するかを個々的に特定する必要もない

名古屋高裁h23.8.3*5(一審 津地裁h23.3.23*6)
 被害者数名の場合でも、包括一罪と判示されている。

名古屋高裁h23.8.3
4 控訴理由④について
 論旨は,本件各画像の被写体となっている児童は3名であるから,本件は児童ポルノ公然陳列罪3罪の併合罪とされるべきであるにもかかわらず,これらを混然と1罪とした本件起訴状は訴因の特定を欠くものであって,この不備を補正させることなく,また公訴を棄却せずに実体判決をした原審の訴訟手続には法令違反があり,さらに,本件を1罪とした原判決には法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,本件犯行は,児童3名が1名ずつ撮影された本件各画像(4点の画像のうち2点は同一の児童が撮影されたものと認められる。)のデータを,約5分間の間に,インターネットのサーバコンピュータに記憶,蔵置させた上,本件各画像の所在を特定する識別番号(URL)をインターネットの掲示板内に掲示して児童ポルノを公然と陳列したというものであり,本件各画像が上記掲示板内の「・ロリ画像①」と題する同一カテゴリ内に掲示されているなど,各陳列行為の間に密接な関係が認められることからすれば,各児童に係る児童ポルノ公然陳列罪の包括一罪であると解するのが相当である。
したがって,本件起訴状は訴因の特定を欠くものではないから,原審の訴訟手続の法令違反をいう論旨は理由がない。なお,原判決は本件を単純―罪と判断したものと解されるが,処断刑期の範囲が包括一罪と同一であるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはないというべきである。

上告理由第2 法令違反・判例違反~公然陳列罪の罪数 5
1審判決 5
原判決 5
2 提供罪においては児童ポルノ罪の保護法益や行為の反復性から包括一罪となる。 7
鳥取地裁H13.8.28*3(販売罪) 7
大阪地裁H13.2.21*4(販売罪) 7
福岡高裁那覇支部h17.3.1*5(提供罪) 8
阪高裁R2.10.27*7(提供罪) 8
3 わいせつ・児童ポルノ公然陳列罪の高裁判例・裁判例(包括一罪) 9
(1)最高裁H13.7.16(わいせつ) 9
(2)高裁判例 11
①東京高裁h16.6.23*8(一審 横浜地裁h15.12.15*9) 11
②大阪高裁h15.9.18*10 (一審 奈良地裁h14.11.26*11) 13
名古屋高裁h23.8.3*12(一審 津地裁h23.3.23*13) 13
(3)地裁裁判例 14
東京地裁h151023*14 14
⑤大阪地裁h210116*15 14
奈良地裁葛城支部h261112*16 14
横浜地裁h290516*17 14
⑧立川支部H280315*18 14
4 併合罪説 15
5 法令違反 18
6 包括一罪の判例違反 19
東京高裁h16.6.23(一審 横浜地裁h15.12.15) 20
阪高裁h15.9.18 21
名古屋高裁h23.8.3 21